住宅の下にレールを敷いてそのまま移動…記録的大雨で地すべり発生の秋田市山手台で「曳家」作業始まる
去年7月の記録的な大雨で、秋田市山手台では、のり面の一部に地すべりが発生し、いまも危険性の高い住宅があります。
大雨から11か月。
秋田市は今月から、住宅をほぼ元の形のまま安全な場所へと移動する作業を始めました。
一般住宅のほか、歴史的に価値のある建物の移動でも行われる「曳家」と呼ばれる作業です。
高台に住宅が並ぶ、秋田市南部の山手台地区。
去年の大雨で、のり面の一部で地すべりが起きました。
のり面に近い一部の住宅にも被害が及び、秋田市は、安全を確保するため、「曳家」と呼ばれる作業を行うことを決めました。
市内の建設会社が作業を担います。
記者
「家をどういった形で持っていく工事?」
大石建設 石田儒旦さん
「いや、そのまんま。ほんとにそのまま。どうしても風除室なんかは1回取り外してまた組み直すこともありますけど、ほとんど全部そのまま持って行きます」
住宅をほぼ元の形のまま動かすのが、曳家です。
これまで多くの曳家作業を手がけてきた、岐阜県大垣市の会社「太豊工業」が公開している映像では、住宅を地面から切り離し、レールの上を移動させている様子が分かります。
一般住宅だけでなく、歴史的に価値のある建物で取り入れるケースも多い作業です。
メリットの1つは、コスト削減が見込めることです。
記者
「曳き家工事ってどういった役割の工事なんですか?」
石田さん
「こうした場合、建物を壊して作り直したら大変なお金がかかりますよね。引っ張るとすると、新築の半分以下の費用でできますから、やっぱり違いますよ。新築するよりは、安くできる」
去年10月時点で565世帯、1571人が暮らす、山手台地区。
曳家を行うのは、その北東部、地すべりが確認されたのり面沿いに並ぶ5棟の住宅です。
のり面と反対側にあり、現在は空き地になっている秋田市の土地に、5棟の住宅を移動させる計画です。
今後、秋田市は、土地の所有権も交換することにしています。
1軒目の曳家作業は、今週から本格的に始まりました。
地面と切り離した住宅の下にレールを敷いて、慎重に、移動させていきます。
約30センチ動かすためにかける時間は、1時間。
レールの下の部分にあたる映像を見ると、数ミリずつではあるものの、少しずつ、少しずつ住宅が動いていく様子が見て取れます。
作業を担う会社によりますと、住宅1棟を予定した場所に移動させるためには、40日から50日ほどかかります。
危険性が特に高いと市が判断した住宅から作業が始まっていて、現時点では、今年の年末までに5棟の曳家を終わらせる計画です。