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特集【日本タンポポの里を目指して】 秋田県大仙市 今野孝一さんの挑戦

2024年4月25日 20:30
特集【日本タンポポの里を目指して】 秋田県大仙市 今野孝一さんの挑戦

サクラや菜の花など様々な花が綻ぶ季節を迎え、足元ではタンポポも多く目にするようになりました。

タンポポは道端にありふれた植物ですが、そのほとんどは外来種で、
日本古来の在来種・日本タンポポはどんどん数を減らしています。

そんな中、日本タンポポで街の活性化に挑戦する大仙市の男性がこの春、
初めて日本タンポポの畑を一般公開しました。

ABS news every.2024年4月24日放送

雄物川の中流に位置する自然豊かな大仙市協和峰吉川地区。
この春、「日本タンポポ」の畑が地域の人たちの目を楽しませています。

可憐に花開く、タンポポ。秋にかけて目にしますが、
この畑で咲くタンポポはこの時期にしか花を咲かせません。

今や街中ではほとんど見かけなくなった「日本タンポポ」です。

今野孝一さんはこれまで20年以上に渡り、
日本タンポポの栽培に取り組んできました。

3年前にも取材していました。

今野孝一さん(2021年5月)
「ここをグルーっと一周する計画を立ててまして、
 それをタンポポロードと。ばーっと周りにタンポポが咲いてるんですね 。」

タンポポの苦みを生かした食品や飲料の開発も進めた今野さん。
当時から日本タンポポで街を活性化したいと意気込んでいました。

今野孝一さん
「環境がよくないと日本たんぽぽは育たない。裏を返すと日本タンポポが咲いてるってことは、
 そこの土地の環境が非常によいことを示してくれる。日本の環境指標植物なんですね」

その土地の豊かさも表すという日本タンポポは、
いま外来種の繁殖力に押されその数を減らし続けています。

今野さんによると道端で多く目にしているのは海外から入ってきた外来種・西洋タンポポです。

今野孝一さん
「西洋のタンポポは完璧に真下に向かってだらっと下がってますので、
 これはもう誰が見てもわかる」

西洋タンポポは
・花びらの裏のがくが垂れ下がっていて
・受粉しなくても発芽し
・アスファルトの割れ目からでも育つ力強さがあるといいます。


一方の日本タンポポ。
秋田を含め東北に多いエゾタンポポは、
・がくが上向きにぴったり沿っていて・
個体を増やすには受粉が必須です。

しかも日本タンポポは「ある程度の本数がまとまって咲かないと数が増えない」といわれていて
西洋タンポポとは大きな違いがあります。

今野さんは峰吉川地区の自然の中で、少しずつ日本タンポポを増やしてきました。
5年前の2019年には10万本にまで増え地区を黄色に染めました。

今野孝一さん
「やれるなと思ったんです。発想はいいなと思ったんだけど、
 増やし方がわかんない。」

「芽が出た瞬間、いけるなと」

しかし、新型コロナウイルスが日本タンポポにも影を落としました。

地域の人たちが集まって作業することが難しくなると
畑は、瞬く間に西洋タンポポに乗っ取られたそうです。

今野さんは3年間1人で畑を守り続けました。

するとまた去年から手を差し伸べてくれる地域の人が、増え始めたと言います。

今野孝一さん
「助けてくれてる方たちも、それからタンポポの種を集めて届けてくれた方たちとかも、
 色んな方が関わってます」

この春、今野さんは初めて日本タンポポの畑を一般公開しました。

今野孝一さん
「これが観賞用のたんぽぽ畑になりますね。今年1年目なので、
 大小あってうまく咲きそろってくれなかったのが残念なんですけれども。」

「逆に言いますとですね、長期間観賞できると。」

「一歩一歩前進してきたなという感じはしますけれども、
 まあ一時コロナというので一時中断も止むなしということもあったんで。」

「いままたゼロからのスタートに近い状態でお話している感じですが、
 こうやって咲きそろってくれると、
 なんかこう日頃の苦労が報われるような感じではありますね」

西洋タンポポとの交雑種が花を咲かせてしまったりうまく育たなかったりと苦労が絶えません。

それでも可憐な花々が今野さんを勇気づけてくれます。

今野孝一さん
「いつも作業してるときはね、ほんとつらいですよ。」

「でも毎年そうなんですけどたんぽぽのこの黄色にはね、すごい魅力がありますよね。」

「なんかこうぶわっと咲いてくれると、この1年間の苦労が全部吹っ飛んでしまいます」

今野さんが手塩にかけた峰吉川地区の日本タンポポは
来週いっぱいが見頃です。

日本タンポポの里と呼ばれる日を目指してこれからも今野さんの挑戦は続きます。

取材ノート

「たんぽぽ博士」の異名を取る今野孝一さんとの出会いは、
コロナ禍真っ只中の2021年初夏でした。

「この辺りをぐるっと一周、日本タンポポでいっぱいにしたい」。

その思いは、タンポポの黄色がひとつも見当たらない、雑草が生い茂る畑の中で聞きました。

あれから3年。


今野さんの畑では、小さいながらも可憐に、黄色いタンポポが足元で咲き誇っていました。

とはいえ今野さんからは
「今年は1年目、西洋タンポポも混じっているし、まだまだ」と厳しい言葉も。

それでも、お話を聞いているうちに今野さんの口元は緩み始め、瞳には力強さが浮かびました。

「来年はぶわーっと一面に咲いた日本タンポポを見せたい。いや、絶対見せます」。


今年の不完全な畑を公開するのは、来年に向けた決意表明です。
今野さんの挑戦の春に立ち会うことができ、光栄でした。
来春、峰吉川を染める黄色一面の景色が見られますように。

関向良子

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