未来のアイデア続々!3Dプリンターで未来をつくる企業が生徒に授業
体育館の壁に続々と貼られていたのは、生徒たちの“未来のアイデア”。様々な企業で働く人が教壇にたつ、将来に向けた新たな取り組みを取材しました。
企業で働く人が生徒たちに授業
名古屋市にある名古屋市立明豊中学校。体育館の壁には、たくさんの付箋が貼られています。付箋には、「3Dプリンターで公園の遊具をつくる」、「ドローンで新しい星を見つける」など、様々な“未来のアイデア”が書かれていました。この付箋は、すべて中学1年生が書いたもの。名古屋市で始まった、新しい授業の中で生まれたものなのです。
3週間前、名古屋市立明豊中学校の体育館を訪れると、館内を飛び回っていたのはドローン。操縦しているのは、生徒たちです。
一方、教室では、パソコンの前で悪戦苦闘する生徒たちの姿が。こちらでは、3Dプリンターを使った授業が行われていました。「コツを説明しておくと、こういう風に何かをはやすときは、必ず印をつけてから伸ばす!」など、教壇に立つ女性が生徒たちに作業のコツを説明していました。
コツを説明しているのは先生ではなく、実際に企業で働く人々。実はこの授業、「キャリアタイム」という取り組みの一環。生徒一人一人が用意された仕事から好きなものを選んで、1学期ごとにその仕事について学ぶ制度なのです。
今年度から名古屋市内の学校でスタートしたこの取り組み。"本物"の企業で働く大人から継続的に学ぶことで、その職業だけでなく、“将来の働く姿”をイメージしてもらうことが目的です。
生徒たちが企業で働く人から授業を受けられる機会について、名古屋市教育委員会の中村浩二さんは、「『本物』のヒト・モノ・コトに触れることによって、自分の好きなこと、得意なことに気付いて、自分らしい生き方を実現する力を伸ばしていくということは、とても大事なこと」と話します。
3Dプリンターで作った作品が生徒たちの手に。作品を受け取った生徒たちからは、「自分がつくったものだと思うと、達成感とうれしさがこみ上げてくる。10点中だと6点」、「みんな上手くてみんないい!」などさまざまな声があがりました。
アイデア次第でどんな仕事もできる時代
その後、体育館では、生徒たちによる“アイデア出し”を実施。それぞれが学んだ技術を持ち寄り、どんな仕事につながるかアイデアを出し合います。「3Dプリンターで食べ物をつくったら、おしゃれなものができる。バラの形みたいな食べ物とか」、「(3Dプリンターで)杖、伸びたりするやつ。とりあえずおれのおばあちゃんに」など多彩なアイデアが書かれた付箋が、壁を埋め尽くしていきます。
身近なものから夢のあるものまで、アイデアを書いていく生徒たち。先生からは、「私の頃は普通に雇われて働くしか考えていなかったんですけど、アイデア次第でどんな仕事もできるんだなと思いました」と生徒たちの未来に期待を膨らませる声も。
「キャリアタイム」を通して、"本物"の仕事を体験した生徒たち。授業後、生徒たちからは、「将来の夢は決まっていないんですけど、こういう道もありかなと思いました」、「将来、こういうのをもっと有名にして、役立てたいと思いました。IT企業とかやりたいですね」など、自身の将来に思いを馳せる声があがっていました。
先生や生徒たちからも好評価を集める取り組みですが、その一方で課題も。現在、名古屋市内で「キャリアタイム」を試験実施している学校は全6校。本取り組みには200社の企業が協力を名乗り出ており、現在、企業数は十分に足りている状態です。しかし、2学期からは小中高など名古屋市立の全校、389校が実施可能に。そのため、企業数が変わらない場合、企業の数が足りない状況となってしまうのです。
キャリア教育に詳しい、『筑波大学』の京免徹雄准教授は、「協力したい企業は多いが、“なにをすればいいか”わからないのが現状」と現状を分析。「教育機関側から、“こんな事がしたいです!”、“こんな事教えてほしいです”という積極的に発信が大事」と話しました。