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全国に広がる「部活動改革」、自治体と指導者の“コミュニケーション”が成功の鍵!? 部活動の「地域移行」で、教諭たちの負担軽減を目指す

2024年10月10日 13:00
全国に広がる「部活動改革」、自治体と指導者の“コミュニケーション”が成功の鍵!? 部活動の「地域移行」で、教諭たちの負担軽減を目指す

教諭の負担軽減を目指し、地域への移行が求められている“部活動”。子どもたちの経験を広げる場を維持するべく、全国の自治体ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。その“答えのひとつ”にたどり着いた自治体を取材しました。

“地域移行”で目指す、働き方改革

名古屋市南区にある『名古屋市立明豊中学校』。体育館では、生徒たちが生き生きと部活動に取り組んでいます。スポーツに親しんだり、興味を深める機会にもなっている部活動。実は今、この“部活動”に変化が訪れています。

それは、昨年度から段階的に始まった「部活動の地域移行」。国の方針は、学校教員が指導する形から、地域で指導するクラブなどへと移行しようというものです。部活動の変化に生徒たちからは、「休日練習が減るって(聞いた)」「部活の回数が減るのが不安かな。バスケを続けてきたから急になくなっちゃうのは悲しい」など不安の声も。

部活動の地域移行の背景にある、大きな理由は“教員の負担の大きさ”。中京テレビ「キャッチ!」は、同校で女子バスケットボール部顧問を務める、小木英梨奈教諭の1日に密着しました。

午後3時、授業終了。放課後、息をつく暇もなく、掃除の見守りと生徒の送り出しへ向かいます。午後3時30分、部活を交代で見ながら、担当する生徒会にも顔を出す小木教諭。午後5時30分に部活動が終了し、やっと落ち着いたと思いきや、今度は約1時間の職員会議に参加。自分の業務に取り組む頃には、すでに時計は午後7時前を指していました。

「(これから)合唱コンクールの台本と来週の授業の準備。出欠の確認、子どもが書いてきたもののチェックとか…」と、残りの業務について話してくれた小木教諭。忙しいのは、平日だけではありません。部活動の予定表を見ると、土曜日にも“練習”の文字が。

小木教諭曰く、「(土曜は)8時から11時で、練習試合の時はそれより長い」という部活動。その結果、残業だけではなく、家に仕事を持ち帰ることもよくあるといいます。

「(子どもたちが)学びやすいようになったらいいなっていう思いを込めて」と、仕事への思いを語る小木教諭。この日、学校を出たのは午後9時を回ってからでした。

保護者から苦情「指導者が遅刻をする」

生徒たちの部活動への熱意に応えたいのはやまやま。一方で、人手がまわらないのも事実です。こうした状況を受け、名古屋市では、今月から土日の部活動を減らすことを決定。同時に、地域クラブの試験的な運用を始めました。

市の取り組みを歓迎している小木教諭。しかし、一方で心配も“心配”も抱えてました。それは、「トラブル起きたときに、どういう対応になるのかわからない」ということ。

実は同じ名古屋市で、部活動改革が進んでいる小学校では、トラブルが相次いで発生。「指導者が遅刻をする」、「指導が出来ず部活動が成り立たない」など、名古屋市役所には保護者から、指導を委託された業者についての苦情が4か月で約150件寄せられていました。

指導を委託された業者は、「人材の確保や育成が難しかった」と市に説明。中学校における部活動の地域移行について、名古屋市教育委員会は「中学校は人数も多いため、より慎重に進める」と述べています。

成功の秘訣は指導者の“指導者”!?

部活動の地域移行を、成功させている自治体もありました。土曜日、愛知県東浦町の『東浦中学校』で、バスケットボールをする子どもたち。指導していたのは、教員ではなく“外部”の指導者。地域で約30年も指導してきたベテランの指導者です。

去年9月、東浦町では土日の部活動廃止と同時に、“地域クラブ”を発足。町内すべての学校から、誰でも参加できるようにしました。同町によると、発足から1年間、トラブルはないといいます。

その理由は、もう1人の“指導者”の存在。「(地域クラブは)教育委員会が運営団体になっています。日々できる限り現場に顔を出して、指導者の皆さんとコミュニケーションをとることを大切にしています」と話すのは、東浦町教育委員会の永井亮太さん。

東浦町では、民間を挟まず、東浦町教育委員会が指導者を選定し、指示を行っていました。指導者には、マニュアルを配布しルールを徹底。現場にはできるだけ、東浦町教育委員会が立ち会います。

「今日、(気温が)28℃だから、氷あるので使ってもらえたら」と、指導者に氷を渡す永井さん。続けて、「体調不良者が出ちゃうといけないから」と伝えます。

地域クラブは子どもたちからも大好評。「部活よりレベルが高いから、ためになる」、「友達とかいろんな人とできて面白いです」、「違う中学校の子とかも来てくれるので、強い相手と戦えます」など、活動内容に満足する声が寄せられました。

しかし今後、地域クラブを平日にも広げる場合は、懸念もあるといいます。「指導者の報酬とか、物品の費用とか。いかにして資金を捻出していくかが課題に感じてます」と明かす永井さん。少しずつ変わっていく“部活動”。それぞれの自治体が今、試行錯誤しています。

約25%の自治体が地域移行を実施

全国の中学校で進められている「部活動の地域移行」。しかしスポーツ庁によると、昨年度時点で部活動の地域移行が“実施済み”となってる自治体は全体の約25%。全国の“4分の1”の自治体しか、進んでいないのが現状です。

土曜・日曜に行われていた部活動の大会や練習試合は、どのように対応されているのでしょうか。土日における部活動の地域移行が完了した東浦町の中学校では、大会には慣習上、“部活動”として参加することから、大会には従来通り、部活動顧問の教諭が参加しているといいます。

各自治体で進む、部活動の地域移行。子どもたちの“熱中する”という機会を奪わないことを大切にした上で、地域の特性に合わせた対策が必要です。

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