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【特集】2025年度から開校 愛知県の公立中高一貫校

2025年1月3日 8:00
【特集】2025年度から開校 愛知県の公立中高一貫校

■愛知県内初!公立中高一貫校の開校

塾の教室に集まり勉強に励む小学生たち。2025年4月、愛知県初の公立中高一貫校が4校開校します。子どもたちは合格を目指しクリスマスや年末年始を返上して猛勉強中です。

中高一貫校は大人気で、中でも明和高校はなんと倍率17倍に上ります。各学校の特色や試験の傾向について取材しました。

■県立高校の募集人数が集まらない危機:なぜ今、“公立の中高一貫校”?

背景は、県立高校の募集人数に対して欠員が目立つようになったことにあります。

昔から県立高校人気が高かった愛知県。しかし、自分のペースで学べる広域通信制や私立での学びの幅の広がりなど、選択肢が広がったことなどにより、思うように生徒が集まらなくなったといいます。

2016年にはたった286人だった県立高校の欠員が、5、6年で10倍近くに増えてしまいました。そこで危機感を持った愛知県教育委員会は、県立高校の魅力づくりの手段として、中高一貫校の開校に乗り出したのです。

■各校の特色:愛知県のテーマは「チェンジ・メーカー」

開校するのは、明和高校付属中、半田高校付属中、刈谷高校付属中、津島高校付属中の4校。80人ずつ募集しています(明和高校付属中音楽コースは20人)。

各学校とも、「自ら課題を立て、情報を整理・分析し、自分の考えを表現する」、「探究学習」を重視する併設型中高一貫校として開校します。テーマとしては「チェンジ・メーカー」を育成することを掲げています。

県によると、「チェンジ・メーカー」とは、様々な人々と協働しながら、答えのない社会的な課題に対して、失敗を恐れずにチャレンジし、創造的に解決できる人のことです。授業を通して、「社会に変化を起こす人材」を育成していくといいます。

愛知県教育委員会 中高一貫教育室 小野智之 室長補佐:
「具体的には、すでに、県立高校の授業に組み込まれている、「総合的な学習時間」に力を入れます。週2時間程度で行い、生徒が自分で課題を設定して発表するような形です。興味のあるテーマに取り組むことを重視します」

例えば明和高校では、1年生では博物館・科学館などの課外活動などを通して、さまざまな分野に触れ、興味を広げます。2年生からはゼミを設け、歴史や宇宙など生徒が興味のある分野のゼミに入り、自分で調べて発表するカリキュラムとなります。

愛知県教育委員会 中高一貫教育室 小野智之 室長補佐:
「大学受験をねらいとした先取学習は基本的に行いません。先生がすべて設定して、一斉に授業を受け、期末のための対策をする授業ばかりではなく、興味のあることに主体的に取り組んでもらいたいと思います」

また、今回開校する4校では、週の授業時間が増えます。授業時間の標準は週29時間ですが、1~2時間授業を増やして、そういった探究学習に充てられます。生徒が自分で調べて、話し合いながら学びを深める、探究学習の時間を十分にとるためだといいます。

受験生に話を聞いたところ、中高一貫校の「探究学習」に魅力を感じ受験を決めたという児童も多くいました。

受験する児童:「地震に興味がある。高校受験をせずに、6年間研究したいです」「探究活動に熱心に指導があるのがいい。エネルギーや環境問題について学びたい」

それぞれの学校でどんなことを学ぶことができるのか、各校の教育方針の特色を取材しました。

■各校の特色

【明和高校】
ゼミや課外活動などを設定し、「リベラルアーツ」を軸とする教育を重視。都市に起因する現象や課題などをテーマに、大学、企業、行政と連携して科学技術リーダーを育成する方針です。音楽科を設置。

【半田高校】
「課題研究」の授業を軸に高い専門性と多角的な視点を持った人材を育成し、起業家精神育成や海外進出促進などを目指しています。そのため定期テストは実施せず、生徒が主体的に探究していくことを重視。先生が期限などを設定したり、詰め込み・一夜漬けだけで勉強することがないよう、レポート・プレゼンテーションなどで都度評価を行います。

【刈谷高校】
課題解決的な学習過程を重視した探究学習を重視。世界を視野に入れて活躍できる人材の育成を目指しています。文系・理系に加えて、「探究系」を設置。自分の選んだテーマについて、6年かけて、とことん探究できるというコースです。

【津島高校】
国際バカロレアの導入を目指しています。多様な文化を理解し尊重する精神、世界や地域社会の発展に貢献する探究心や学力を育てる方針です。入学後、全員が国際バカロレアのプログラムを学習。津島高校では国際交流活動などに取り組む国際理解コースを普通科に設置していて、来年度からは国際探究科になり、高校ではその中で最大25人が国際バカロレアのカリキュラムを学びます。

■倍率約17倍:公立中高一貫校の入試傾向・対策

初の試みとなった中高一貫校は、大人気。明和高校は倍率約17倍、刈谷高校は倍率約10倍の高倍率となったので、合格には対策が必要になってきます。

入試は、適性検査(筆記)と面接の2段階で行われます。県教育委員会によると、適性検査は小学校で学習する範囲内から出題。探究学習を重視しているため、その資質の判断として、小学校で学んだことの応用などを問い、学んだことをベースに考える力を見ているといいます。

また、面接は賞などで判断するのではなく、小学校の時の探究学習を聞いて、思考力、判断力、粘り強く取り組む力、いろんな人の意見を聞きながら自分の意見を聞く協調性を見ていくということです。

必要なサポートは私立高校の対策とは異なります。公立の中高一貫校は県内初で過去のデータがなく、倍率もかなり高いため、塾に入るなどの対策が必要になってくると考える受験生も多くいました。

受験する児童:「家では塾の復習をしています。特に不安なのは面接です」
明和高校を受験する児童の親:「塾代出すため、お父さんは飲み会をちょっと我慢している…」

予備校の先生にも、対策について聞きました。

佐鳴予備校 中瀬将希先生:
「(明和高校は)17倍、初年度は高くなる、予想通りな部分もあります 。対策は他県の公立中高一貫校の入試を参考にしています。私立の中高一貫校は小学校の学習内容の幅を超えた知識も問われますが、公立の場合は、小学校で習った範囲で深く考える力が問われます」

愛知県の公立中高一貫導入は早い方ではなく、全国で42番目。入試対策には、他県の過去問を参考に勉強の計画を立てる塾や児童も多いといいます。面接の練習も塾で行う児童は多くいました。

面接対策にスマートフォン機能を活用する生徒も。

受験する児童:「ChatGPTに聞いています」「Siriに向けて話しかけて練習している」

■今後の動き:新たな開校は?

開校する2025年4月に向けて、校舎の建設が進んでいます。おおむね順調だといいますが、明和高校は仮設校舎でスタート。明和高校は中高一緒の校舎となり、今の校舎を壊して立てる必要があるためだといいます。また音楽コース向けには、音楽ホールを作り、2026年6月ごろをめどに完成予定。カリキュラムはすでに準備されています。

愛知県教育委員会 中高一貫教育室 小野智之 室長補佐:
「完璧にできているのではなく、生徒さんと一緒に細かなルールや雰囲気を一緒に作っていきましょう、ということになるかと思う。これから作っていくというところも楽しみなのかなと思う。津島高校は校歌も生徒と一緒に作ろうということになっています。 」

県教育委員会は、すでに開校している他県を視察して参考にしながら学校づくりをしているといいます。2026年度には、あらたに7校を計画中。

付属中として併設されるのは、豊田西高校、西尾高校、時習館高校、愛知総合工科高校、日進高校。衣台高校と美和高校の2校は、地元中学校と連携する形で開始されます。

現段階で、2027年度以降、新しく中高一貫校を作る計画はなく、開校した学校をしっかり作っていき、成果を検証するということです。

最終更新日:2025年1月3日 8:00
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