日本と海外の大学経営の仕組みが違う.....「次世代に教育資本を回すこと」に情熱を傾けるAlumnote代表が語る「大学の未来×お金」の話
「次世代の教育に資本を回す」ミッションをもとに大学や教育機関で自主的に財源を生む仕組みを提案する株式会社Alumnote代表取締役・中沢冬芽さん。“1分間で社会を知る動画”を掲げる「RICE MEDIA」のトムさんがその魅力に迫ります。
大学が自主的に資金を調達出来る環境を支援したい
大学には寄付などで支援してくれる可能性がある「潜在支援者が多くいる」と中沢さんは語ります。
中沢さん「(大学の資金調達の一つの手段としては)寄付収入が大きいです。しかし自分が出した寄付がどういう風に使われていて、どんなインパクトを創出したかというのが可視化されないとなかなか寄付する方も納得されないです」
寄付収入を募る1つの手段として、アルムノートではオンラインチャリティーイベント「Giving Campaign」を各大学と連携して企画、その規模は日本最大になるといいます。
中沢さん「2023年に第4回目を実施した時には1週間でおよそ15万人が参加するイベントになりました。ただ寄付を募るだけだと日本では拡散させていくのが難しいと感じていました。そのため、寄付だけではなく学生の活動を応援するという意思も、投票で反映できるようにしました。投票数に応じて、イベントの協賛企業から分配金を獲得できる仕組みを寄付とは別に用意したんです。
応援や寄付を集める過程では、まず学生の中で投票が行われていき、それが完全に行き渡ると、学生たちが主体的にOBやOGとのつながりを利用して、働きかけてくれることです。Giving Campaignというイベントを通じて、今まで大学側には見える化されていなかった潜在支援者とのつながりが整理されていったんです。
また、実際に寄付を集める主人公となる学生たちの目線に立って“どういう仕組みならやる気になれるか”ということをゲーミフィケーションをもとに考えました。例えば『あの団体には負けたくない』みたいなことがあると思います」
大学の部活動や研究室のような「大学関連団体」は個別に活動していて、分散しています。アルムノートでは、オンラインチャリティーイベントで新たにつながることができた「潜在支援者」を各大学が把握し、中長期的な関係を築くための支援も事業の1つとして展開しています。
大学の卒業生管理は紙で行われている団体も......本気で変えたいと思い生まれた“在校生や卒業生などの大学関係者の架け橋”がAlumnote
トムさん「Giving Campaignで先輩たちと出来たタッチポイントは、データベースとして蓄積されていくんですよね、その蓄積がAlumnoteのサービスと更につながったりもしますか?」
中沢さん「Giving Campaignで繋がった方々のデータはAlumnoteのシステムに入れることができ、そのデータを大学に渡すことができます。今まで把握されていなかった潜在支援者の方々は、多い大学だと1万人を超えるような場合もあります。私たちが考えているのは、毎年イベントを行っていくことで、このように数万人ぐらいの人とのつながりを毎年積み上げていくことができるような状態です。
またそういった方々に、年1回のタッチポイントではなく、メールなどいろんな連絡手段を通じてタッチポイントを作っていこうとしています。そのために、Alumnoteには、名簿管理以外にクレジットカードのメンバーサイトみたいなイメージで、いろいろな機能を用意しています。
例えば、卒業生とか大学生だけが入ることができる限定の掲示板みたいな機能があります。卒業生っていっても20代~80代までいるわけなので、幅広い年齢層の人が『年に1回は覗いてもいいな』と思えるような機能を作っています」
実はこういったサービスのアイデアもアメリカの大学の実例から来ていると、中沢さんは教えてくれます。
中沢さん「スタンフォード大学の事例だと、ゴルフ場が使えたりします。そういう利益や報酬みたいなものが、私たちが提供するサービスにも全部のっかっているから、ちょっとお金払ってもいいなって思ったりする世界まで持っていくことは目指している1つのコンセプトです」
大学や教育機関に着目した理由や、なぜ今大学にお金が必要なのかを中沢さんに聞いてみたところ、日本の教育・さらには日本が抱える問題が見えてきました。
中沢さん「(日本の大学は)財政が盤石ではないです。新しいお金の流れを作らないと、今提供されているような教育的サービスや、研究機関的サービスが提供できなくなっちゃうんじゃないかと考えています。
国公立大学の資金は大半の収入が国からの補助金から成り立っています。文科省が決めている全体の金額は年々減らされていて、少子高齢化などの問題の中で優先度が下がっている状況です。私立大学は18歳人口が減っている中で、さらに生き残りをかけた生存競争が始まっていき、少ないパイを取り合って今後どんどん収入が減っていくと私たちは予想しています。
一方、アメリカのハーバード大学など有名な大学では、寄付が4桁億円くらい集まっているような大学が複数あります。さらにその寄付金を基金として利用する、エンダウメントと呼ばれる投資会社のような仕組みがあります。
1つの大学で兆単位のお金を運用して、数百億円を運用益だけで獲得しているため、資金は右肩上がりの状態です。日本の大学と比べると雲泥の差があり、お金ベースで考えると教育の差ができてしまい、そうなってくると日本から優秀な人材が流出するだけでなく海外からも入ってこなくなる可能性があります」
トムさん「日本の大学ではアメリカの大学みたいなことをどうしてしてこなかったんでしょうか?」
中沢さん「実は20年位前からアメリカの事例は話題に上がっていました。しかしこの20年間あまり成果が出なかったというのが1つあると思います。もう一つは自分の仮説になるのですが、大学が設立された背景がそもそも違っていたことが影響するかもと考えています。
アメリカとかは、一部のお金を持った方々が積極的にそのお金を拠出して研究とか教育を進めるっていう側面が背景として強くあったのではないかと思います。そうして、自らお金を集める文化が起こりやすくなったのかなと。
それに対して、日本などのアジア圏では国立大学が結構多いと考えていて、明治維新じゃないですけど、“西洋に追いつかなきゃいけない”っていう過程の中で大学が設立された影響が大きいのではないかと考えています。
(当時の日本では)幅広い方々に教育を届けることがミッションと考えられていて、国立大学となったとします。そうすると、より広い人に教育を受けてもらうためには学費は下げたほうがいいとなったのかなと思います。そういった経緯で、収入構造的に補助金が過半数以上を占める大学が日本では生まれてきたのではないかと思っています。
ただ、 明治維新の頃からだいぶ、大学の1番の役割が変わってきた感じはあります。例えば、国際的な卓越性みたいなものを求めるようになった時に、 補助金ベースでは世界レベルの研究や教育レベルを絶対に提供できないことがここ数十年分かってきました。今改めて転換が求められているタイミングなのではないかと、私たちは考えています。」
◇◇◇
本記事は、日テレNEWS NNN YouTubeチャンネルメンバーシップ開設記念番組「the SOCIAL season1」の発言をもとに作成されています。