4年かけ卒業、悩み共有データベース……都立高「不登校クラス」、中退者が半数に 学校生活“やり直す”授業とは
小中学生の頃に不登校を経験し、さまざまな悩みを持つ生徒と向き合う都立高校があります。学校生活をやり直す「チャレンジ枠」として生徒たちを受け入れ、コミュニケーションの基本を学ぶ授業や出席方法など独自な取り組みで、中退者を半減させています。
■次々と悩み明かす…放課後の相談室
東京・八王子にある都立八王子拓真高校を訪ねました。授業風景は一見普通ですが、放課後の相談室では、教師に悩みを打ち明ける生徒たちの姿がありました。
ある女子生徒は「本当にやばい、最近。もう1回死のうとしたもん」「ゴリラが人間とコミュニケーション取れるのに、なんで私は人間とコミュニケーションが取れないんだろう」「楽しくねーもん、この学校」と吐き出しました。
教師は「楽しくない中で、何か楽しくしたいな」と声を掛けました。
別の男子生徒が「俺、ワンチャン退学…」と言うと、教師は「え、退学するの? どういうこと? いきなり話が飛んだけど。やめるの?」と驚いた様子。生徒は「分かんない。微妙な感じ」と答えました。
■毎年60人以上…不登校経験者が入学
この生徒たちは、かつて小中学校時代に、不登校を経験していました。この高校は、こうした生徒たちを「チャレンジ枠」として受け入れ、学校生活をやり直すための取り組みをしています。入学する不登校経験者は、毎年60人以上です。
2年生
「(中学時代に)休んだら、けっこう友達の輪とかに入りづらくなっちゃって。ああ、私はもうあそこには入れないんだな、みたいな」
1年生
「人と関わってきて嫌なことというか、いろんなぎくしゃくしたことが続いてしまって、周りが全員敵みたいな、そういう風に見えてしまって」
■コミュニケーションの基本学ぶ1年生
そこで1年生のクラスの授業では、まずは同級生とのコミュニケーションを学びます。
講師が「人が一生懸命話している時に聞いてくれないと、話す気持ちがなくなってしまうね。そうすると友達と交流はできないので、話は聞こうね」と伝えました。取材した日は朝日か夕日か、どちらが好きか選んで理由を説明するグループワークが行われていました。
ある生徒が「夕日だよ? 日曜日の夕方って想像してみろよ。明日学校という憂鬱に駆られるんだよ」と言いました。
別の生徒は「俺は夕日(が好き)。学校がやっと終わった(と感じる)から」と返すと、他の生徒たちも一斉に「あ~」と同調しました。和やかな雰囲気の中、夕日が好きではない生徒は「そっちか。違うんだよ、俺は」と反応しました。
講師は「良い悪いじゃないからね。どれもOK」とアドバイス。お互いの価値観や考えの違いを認め合うコミュニケーションの基本を学んでいきます。
■出席日数「不足」でも…独自の工夫
さらに、生徒のペースに合わせた出席方法もあります。
ある1年生は「(学校に)週3で行くっていう、先生と決まり事というか、約束みたいなのはしています」と話します。通常の3年ではなく、4年での卒業を基本とし、出席日数が足りなくても、補習を受けることや課題の提出で単位を認めるようにしました。
また担任だけではなく、全ての教師がそれぞれの生徒の悩みや問題を共有するデータベースを作成しています。
3年前からこうした取り組みを始めると、中退する生徒は半分に減ったといいます。
■生徒に生きづらさ…教諭「前向きに」
早乙女進一主任教諭
「多感な時期なので、生きるのがつらい、死にたいという風に考える子はいっぱいいると思うんですね」
「何がそうさせてしまったのか考えますね、話を聞いたり。どんなことがあっても前向き、ポジティブな方向に持っていこうとしますね」
学校生活のやり直しができた生徒には、新たな希望も生まれました。
中学時代に不登校を経験した2年生は「将来はちょっと保育士になりたいなと思っています。(学校生活は)楽しいです。やっぱり、なんか前向きになれた感じがします」と教えてくれました。
(2月23日『news zero』より)