【復活】大雨で水につかったシクラメン「再起は難しいのかな」支えたのは被災を免れた「種」 福岡
福岡県久留米市で、クリスマスや年末年始に贈り物として需要が高まる「シクラメン」の出荷が最盛期を迎えています。去年の記録的大雨で多くのハウスが水につかりましたが、生産者は被災を乗り越えて復興への歩みを進めています。
■吉村史織アナウンサー
「ハウスの中に入ると、シクラメンの花がピンク色のじゅうたんのように広がっています。 一つずつ見てみると、1色のオーソドックスなものから、花びらにフリルがかかっているものなど、 一鉢ずつ全く違った表情に見えます。」
福岡県久留米市の「園木園(そのきえん)」では色鮮やかなシクラメンが咲きそろい、12月中旬にかけて出荷の最盛期を迎えています。
この道35年の園木正広さんが、43品種、およそ1万5000鉢を栽培しています。
■園木園・園木正広さん
「夏場の高温で苦戦したが、出来自体は自分が満足する出来になっています。」
園木さんが長年、生産とともに手がけているのが「パウダーシリーズ」です。
■吉村アナウンサー
「こちらでは品種改良に力を入れているということで、ハウス内にあるのは、ほとんどがオリジナル品種だそうです。中でも人気だというのが、花びらが白く縁取られたシリーズです。」
「パウダーシリーズ」は、雪をイメージした白い縁取りが特徴で、より華やかな見た目が人気です。
さらに、ユニークな花づくりも。一つの株に見えますが左右で品種が違います。真ん中できれいに分ける技術の開発には、3、4年かかりました。
■園木さん
「花を作るには遊び心が必要かなと思って。」
園木さんは、笑顔で花の魅力を語ります。しかし去年の夏には、花づくりの道を諦めようとしていたといいます。
去年7月、記録的な大雨が九州北部を襲いました。久留米市では、耳納山(みのうさん)で24時間雨量が観測史上最大を記録するなど、各地に大きな被害をもたらしました。
シクラメンのハウスがある大橋地区も、近くの巨瀬川(こせがわ)が決壊し、一帯が冠水しました。園木さんの自宅は床上浸水し、ハウスには高さ1.5メートルほどまで水が流れ込みました。
■園木さん
「多分、この汚れが取れているところぐらいまで(浸水した)。中のボイラーや機械関係が全部つかっている。もうどうしようもない状況。」
ハウスにあったおよそ1万8000株はすべて廃棄し、去年はシクラメンの出荷を諦めざるを得ませんでした。
■園木さん
「これはちょっと、もう再起は難しいのかなと頭の中にはよぎった。」
一時は「廃業」を考えた園木さんを支えたのは、自宅の2階で被災を免れた、品種改良したばかりの種でした。
■園木さん
「最初から、1つ品種ができたら孫の名前を付けようと思っていたので、なんとか世の中に出したいという思いで。」
従業員たちで泥をかき出して設備を新調し、およそ7か月かけてハウスを再建しました。
被災後、初めての花づくりとなることし、園木さんは5、6年ぶりとなるオリジナル品種「リンカ」を咲かせました。名前の由来となった孫の鈴栞(りんか)ちゃん(3)が花を見つめる姿に、園木さんは目を細めます。
■園木さん
「もう、ひとしおですね。うれしさいっぱいです。」
自然災害や異常気象などで、花づくりの現場は厳しさを増しています。園木さんは地域の生産者と協力しながら、対策のヒントを見つけたいと考えています。
■園木さん
「技術はいろんな人と勉強しながら、できるだけ工夫しながら、やっていくしかないのかなと思っている。目標は、お客様が見て『すごいね、きれいね』と言われるような商品づくりをしたいと思います。」
水害を乗り越え、再び華やかな花をつけたシクラメン。復興の一歩として、ことしも冬の訪れを告げています。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年12月3日午後5時すぎ放送