「国産コーヒー」を福岡で栽培 乗り越えたのは梅雨と湿地の湿気 水郷・柳川で挑戦 「コーヒーの2050年問題」も
いま福岡では、世界的なコーヒーのチェーン店が続々と進出する一方、個性的なカフェも多くあり、コーヒー熱が高まっています。そうした中、コーヒー通から注目される“国産”のコーヒー栽培が柳川市で行われています。
毎日のリラックスタイムにコーヒーが欠かせません。
福岡市・天神のデパートにあるこちらのカフェでは、こうばしい香りに包まれながらのんびりとしたひとときを過ごす人たちの姿がありました。
いま、こだわりの味を求める人に人気なのが、めったに流通しないという希少な国産コーヒー、しかも福岡で収穫された豆です。
■店員
「お待たせいたしました。こちら福岡県産の国産コーヒーです。」
■吉村史織アナウンサー
「おいしい。しっかりした苦みもあるんですが、 同時にフレッシュな感じ、華やかな甘い香りがします。すごくすっきりとして飲みやすいコーヒーです。」
1杯の価格は、通常のブレンドコーヒーより2割ほど高い800円です。それでも、毎日5・6杯ほど注文が入るといいます。
■カフェ博多小町・堀川玲奈 副店長
「福岡でコーヒーを作っているというのが大変驚いた。そもそも国産のコーヒー自体、出合うこともないので、『珍しいので飲んでみたい』という客が多い。」
福岡産のコーヒー豆を栽培しているのは、柳川市の杏里ファームです。農業用ハウスには、およそ1500本のコーヒーの木がずらりと並んでいます。生産者の椛島大翔さんが、5年前に栽培を始めました。
■国産コーヒー生産者・椛島大翔さん(30)
「もともとうち(実家)がマンゴーなど南国フルーツを栽培していた。日本でコーヒーを作っている人があまりいなかった。日本で作れたら面白いなと思って始めた。」
コーヒーの原料は、年末から4月にかけて実るこの赤い実です。果肉をむくと種が入っていて、焙煎するとおなじみのコーヒー豆になります。
椛島さんは年間およそ50キロを収穫し、インターネットなどを通じて全国に出荷しています。
一般的にコーヒー豆の栽培が盛んなのは、ブラジルやベトナムなど“コーヒーベルト”と呼ばれる赤道付近の熱帯地域です。
日本でも、沖縄や小笠原諸島などの温暖な地域を中心に生産に乗り出していますが、多くの場所では気象条件がそろわず栽培が難しいとされています。
柳川でコーヒーを生産する椛島さんは、ハワイのコーヒー農園で栽培方法を学びました。
乗り越えるべき大きな壁は、湿気の多い日本の「梅雨」でした。
■椛島さん
「その(梅雨の)時期につぼみができていた。ただそうすると湿気でカビて、 つぼみが枯れたりいろんな事があったりした。開花の時期を少し早めるような工夫を今やっている。」
さらに“水の都”として知られる柳川は湿地が多く、適度な乾燥を好むコーヒーの木には不向きです。
そこで、椛島さんが取り入れたのが、水はけが良い鉢植えで育てる「ポット栽培」です。柳川の環境でも育つよう試行錯誤を重ねました。
椛島さんのコーヒー豆は5杯分に当たる50グラムで2700円と高めですが、毎年完売するなど、人気を集めているということです。
■椛島さん
「一番は新鮮さ。収穫して飲むまでのスピード感、そこは輸入に比べるとかなり早い。コーヒー豆を生産している人の顔を見て飲めるコーヒーはなかなか海外のものだとないと思う。」
椛島さんが栽培とともに力を入ていることがあります。
■吉村アナウンサー
「こちら、小さい苗がありますね。」
■椛島さん
「そうですね。これが実際に販売している苗です。」
3年ほど前から、苗木の販売を始め、栽培のノウハウを提供しています。
年々問い合わせが増え、去年は香川県や愛知県などにおよそ300本を出荷したほか、北海道からも問い合わせがあったといいます。
■椛島さん
「(寒いところでも)気温を上げることはできるので。燃料たいてできると思う。全国いろんな方が作ってくれると国産コーヒーの認知も広がる。もっと盛り上がるかなと思う。」
日本をコーヒーの産地にしたい。樺島さんの思いが国産コーヒーの可能性を広げます。
コーヒーの消費量は世界的に増加傾向ですが、気軽に飲めなくなる日が来るかもしれません。
「コーヒーの2050年問題」です。地球温暖化の影響で、気候が変化したり病害虫が繁殖したりして、コーヒー豆の栽培に適した土地が2050年までに半減すると、世界的な研究機関が指摘しています。そうなると、需要と供給のバランスが崩れ、現在のような価格でコーヒーが飲めなくなるかもしれないという懸念です。
世界的な問題の解決には品種改良が欠かせませんが、日本国内では国産コーヒーの需要が増え、栽培への注目も高まるかもしれません。