市川 栞 キャスター：
北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。

野口さん：
金沢には、兼六園以外にもクオリティの高い庭園がたくさんあります。
金沢市では、これらを「金沢の庭園文化」として一体で発信し、活性化につなげることになりました。

野口さん：
そこで、きょうのテーマは、こちら。「庭園のまち金沢 エコな魅力発信」

野口さん：
金沢市の調査では、天下の名園・ 兼六園とまではいかなくても、中心部には、市の文化財に指定されている庭園が12カ所、それ以外でも武家や神社・お寺が築いた庭園が20か所以上存在します。

野口さん：
国の名勝に指定されたものとしては成巽閣の庭園、去年、名勝に指定された西氏庭園が知られていますが、野村家の庭園や松風閣庭園などの人気スポットもあります。

市川：
江戸から昭和まで、時代の特徴を映し出す庭園が、街並みの中に溶け込んでいるんですね。

野口さん：
建物と一体となって、お茶席の演出に生かされたり、庭園の木々を守る雪つりや、土塀を寒さから保護する薦かけなど、雪国ならではの職人技が息づく空間としても貴重です。

市川：
ただ、庭園はほとんど個人の家の敷地にあるため、都市公園のように、だれもが気軽に入れないですよね。

野口さん：
金沢市では…

●所有者に依頼し公開日設定　各庭園つなぐ観光ルートを
●雪づりなどの技術をもつ職人育成
●庭園を維持・管理するボランティア活動を支援　

といった活性化プランを作り、まちなかの庭園を、皆で盛り上げる取り組みを始めるそうです。

野口さん：
そこで1つ目の、目からウロコです。「用水網が生命線水と緑で潤う城下」

野口さん：
金沢は藩政期から、街なかに網の目のように用水が張り巡らされ、潤沢に水が供給できる都市構造になっていました。辰巳用水、大野庄用水、鞍月用水 という三大用水を中心に55本の用水があり、合わせると150キロぐらいになります。

市川：
金沢から珠洲の中心部へ行くより長いですね。

野口さん：
兼六園では、藩政期に整備された 辰巳用水から引いた水がダイレクトに流れ込んで園内の池に水を供給し、曲水、せせらぎといった方が分かりやすい小さな川を形作っています。

都心部の武家や地主などの屋敷では、用水の水を引いて曲水をつくる、いわば「ミニ兼六園」と言える庭園があちこちにあります。

野口さん：
去年、国の名勝に指定された西氏庭園などは大正時代の築造ですが、家の前を流れる大野庄用水を巧みに取り込んで、独自の自然景観を表現しています。

用水なくして、木や草花をしっかり育てるような庭園はなかなか築けない。まちなかに自然を取り込んだ都市構造の街づくりは、加賀藩の時代から脈々と息づいています。

市川：
そんな都市構造が、いま世界から注目を集めているんですね。

野口さん：
そこで、2つ目の、目からウロコです。「金沢の生態系再生 世界先進モデルに」

野口さん：
おととし、国連の機関であるUNEP(国連環境計画)が、生態系に配慮した街づくりをしている世界11の都市をモデル都市に認定したんですが、金沢が日本で唯一選ばれました。

木を使った文化都市づくりを目指している点や、まさに今、話題になっている庭園や用水など、都市に自然を取り込む「グリーンインフラ」が整っていることが評価されたようです。

野口さん：
ことし5月には、金沢で、認定された世界の都市の代表が集まって国際シンポジウムが開かれる。

市川：
庭園都市の金沢を世界にアピールする絶好のチャンスになりそうですね。

野口さん：
金沢が生んだ文豪・室生犀星は、庭造りにも情熱を傾けたことが知られています。

野口さん：
その犀星がエッセーの中で「庭は日本の身だしなみである」という言葉を残していて、「日本の自然をセンス良く整えて披露する舞台」という解釈もできます。

市川：
犀星の文学に与えた庭園のまちの影響の大きさを感じられますね。

野口さん：
街なかに庭園を配置する独特のエコなまちづくりと合わせて、金沢の文化をアピールする上でも、庭園文化を発信する価値は高いんじゃないでしょうか。

市川：
ありがとうございました。野口さんの目からウロコでした。