名水百選“うちぬき”使った稲作に和菓子作り…「未来に残したい」清流・加茂川と生きる人々の暮らし
石鎚の山々を源とする、愛媛が誇る“清流”。人々の暮らしを潤しながら流れ続ける川の表情を取材しました。
西条市を流れる、加茂川。西日本最高峰、石鎚山の周辺に降りそそいだ雨を集めながら、燧灘までのおよそ28kmを流れる、二級河川です。
秋に行われるまちの一大行事、「西条まつり」では、クライマックスの「川入り」の舞台となり…春には花見のスポットに。いつの時代も、四季を通じて多くの人が訪れる、まちを代表する行楽スポットです。
まだ春遠い、2月。川のほとりに建てられたテントに、人が集まっていました。
Q.どちらから?
「神戸です」
愛知県からの男性:
「(朝)6時集合で、そっからこっちへ来たら昼2時過ぎにここに着いて。友達は九州から6時間かけてきた」
中流域に設けられた、県内では唯一のキャッチ&リリース区間。アマゴ釣りが解禁になるこの時期、全国各地の釣り人が、ここ加茂川を訪れます。
愛知県岡崎市の杉坂研治さん。実は毛ばりを使ったフライフィッシングでその名を知られた、エキスパートです!
杉坂研治さん:
「ここまで7時間走っても友達と年に1回会えるし、ここ来だして20年になるから、自分の代から次、息子たちが釣りするようになって「一緒に行くぞ」っていま連れてきてて。これがいつまでも残ってると嬉しいんだけどね」
青く澄んだ、加茂川の流れ。その流れはやがて姿を変え、流域に暮らす人たちの暮らしを潤します。
名水百選にも選ばれた「うちぬき」に代表される、地下水です。
禎瑞地区の米農家、川下 兼吉さん。この日、愛媛県が開発したお米、「ひめの凜」の田植えに追われていました。
川下さん:
「(田んぼの水は)地下水。おいしいんよ。おいしいけん値段も高く売れる」
名水の里のおいしいものは、ほかにも!
アクアトピアのほとりに建つ和菓子店、「おおさかや 蔵はち」。創業以来作り続ける餅菓子のほか、三代目の山地 良太さんが洋のテイストを取り入れて開発した商品が評判の和菓子店です。
3代目 山地 良太さん:
「お店全体としては74年。最初はお餅屋さんで、普通の白いお餅というか、柏餅とか桜餅、餅菓子全般を作っていました。赤飯とか(原料は)稲が基本で、稲も石鎚のうちぬきで育ったお米なので、“オールインうちぬき”」
3代目が胸を張る和菓子店には、うちぬきが主役のスペシャルなひと品があるんです!
店長 山地 愛さん:
Q.この氷は?
「ここで作っているうちぬき水で、お客様も「まろやかでおいしい」って言ってくれます」
トッピングは県内産の栗を使った和菓子屋のモンブランクリームを生絞り!そこに軽い触感のエスプーマ、仕上げに三温糖をキャラメリゼして香ばしさもプラスします。
水辺に面したカフェコーナーで味わう、贅沢なかき氷…西条でしか味わえない逸品です!
山地 良太さん:
「泳いでてもきれいだし、魚も結構獲れますし、県外の方来られてもお水がおいしいって言っていただける。僕は(加茂川は)日本一、世界一だと思っています」
今月、アユ漁が解禁となった加茂川。
釣り人 高木敬さん:
「加茂川のほとりで生まれたけん、子どもの時からやっとるもう古いぞね。もう80年やっとる」
高木 敬さん。時間があるときにはいまでも毎日、加茂川で釣り糸を垂れる、御年89のアユ釣り名人です!
高木さん:
「お!来たぞ…来たぞ来たぞ!これを塩焼きにしての、今頃のアユは頭も骨もはらわたもやわらかいけんね、非常においしい!」
その後も次々と釣り上げていく高木さん。さすが、年季が違います!
高木さん:
「大きないけん手ごたえも小さいけんどの、やっぱあのチュクチュクっと(手応え)するのが何とも言えん。これが子どもの時からやっとってやまらん!病気じゃわいのう」
記憶の中と変わらない姿で流れ続ける、ふるさとの川…
加茂川漁協 岡村重治組合長:
「5,60年前、ちっちゃい時にはもっともっときれいな川だった」
加茂川漁協の岡村組合長。魚の放流や清掃などを通じて、環境の保存に努めています。
岡村組合長:
「未来に残したいですね。悪いものを残すんじゃなしに、ちょっとずつ良くなっていくような形で残したい」
青く澄み切った加茂川の流れは、未来に向けて流れ続けます。