野生動物による被害は年間3億6000万円超…農作物を守れ!新人ハンターたちの実践訓練
野生動物による農作物などへの被害を防ぐため、活動するハンター。今回、技術の向上を目指し、狩猟免許を取って間もない“新人ハンター”を対象に2日間の実戦訓練が行われました。
山の中に分け入り…イノシシやシカを捕獲のため“わな”を仕掛ける。
彼らは、「わな猟」の免許を持つハンターです。
愛媛県西条市で、県主催の新人ハンターを対象にした研修会が初めて開かれました。
県内各地から参加したのは30代から70代までのおよそ30人。全員、わな猟の免許を取得して5年以内のハンター、“若葉マーク”ハンターです。
愛南町から:
「まだ2年目。去年(免許を)取ったんで。捕獲技術が全く上がっていない結果で、獲れていない。ここに来ればある程度捕獲頭数が上がるかなと思って」
四国中央市から:
「基本、猟友会の人って銃を持って山へ入っていく人が多いので、わなってなったら、なかなか教えてもらう機会がない」
野生鳥獣対策連携センター中村幸子さん:
「一番大事なことのひとつは、行動の予測です。彼らは大体夜間行動しているので、それを実際に見て確認するのは非常に難しい」
狩猟免許を持つ人はピーク時の半分にまで減少する中…
県内の昨年度の野生動物による農作物の被害額は3億6791万円。
また、シカに木の皮などが食べられる森林被害額は9605万円にのぼります。
一方で、県内で狩猟免許を持つ人は5594人、ピーク時の半分にまで減少しているのが現状です。
県自然保護課 秋川裕一郎課長:
「若い方に捕獲の技術あるいは知識を伝えて、それを継承していただくことで狩猟者のレベルアップにつながって捕獲効率も上がってくる」
野生鳥獣対策連携センター 中村幸子さん:
「赤丸の所にわなが埋めてあってけもの道がある。ここを歩いてくるシカやイノシシを獲ろうということで埋めているが、この時はわなの一部が露出していてそれになんか気づいちゃう」
相手に気づかれないよう、わなを仕掛けるのも、捕獲の大きなカギになります。
ハンターの平均年齢70代後半の鬼北町で 役場に勤める36歳が免許を取得
参加者の1人、鬼北町役場に勤める楠目匠さん(36)です。
楠目さん:
「鬼北町で有害鳥獣の担当をしているが、猟師さんの高齢化とかがあって若い人が頑張らないといけないなと思って(免許を取得した)」
ハンターの平均年齢が70代後半という鬼北町にとって期待の星ですが…今月免許を受け取ったばかりの楠目さん、わなを作るのは初めてです。
楠目さん:
「大変ですね、これ。結構力がいる」
今回、参加者が作るのは、「くくりわな」。動物が足で仕掛けを踏むと、ばねの力でワイヤーが跳ね上がり足をくくって捕まえます。
仕掛けが完成すると、早速、山に入ってセッティングです。
向かったのは、車で10分ほど離れた高速道路脇の山。地元のベテラン猟師に案内してもらうと…
県猟友会西条西支部 村上利幸さん(72):
「ここから”ぬた場”になってます」
道路に近い場所にイノシシやシカが泥浴びをする「ぬた場」が2か所あり、年々目撃が増えているポイントです。
さきほど作ったわなを実際に仕掛け、獲物を捕まえます。
野生鳥獣対策連携センター 橋口海斗さん:
「今これ皆さん、けもの道って分かりますか?なんとなく、落ち葉がよけてて、地面が露出してて、目で見ると何か土が見えてて道になってるなという」
いかに動物たちに気づかれない“わな”を仕掛けるか
まずは講師が、けもの道やフンなどの動物の痕跡の見つけ方、そして、わなの仕掛け方をレクチャーします。
特に、動物にわなを見抜かれないための「偽装」は、新人たちにとって貴重なテクニックです。
橋口さん:
「こう見ると、明らかにここだけ色違って変ですよね。だから、よそで表層(の土)を取って来てください。周りの地面とそんなに色が変わらないようにしてください」
新人ハンター、山の中へと散らばり自由にわなを仕掛けます。
鬼北町から参加した楠目さん、斜面の低いところにあるけもの道に狙いを定めました。
楠目さん:
「上の方も見てきたが、結構、何本も道があったんで難しいなと思って。よく分からない。初めてなんで」
穴を掘り、慎重にわなを埋めて枯草などで隠しながら偽装していきます。
楠目さん:
「もうちょっと埋めた方がよかったかもしれない」
少し穴が浅かったか?仕掛けが見えてしまっています。
掘り返してもっと深い位置に埋め直し、準備完了です。
楠目さん:
「かかってたらいいんですけど」
翌日、仕掛けた30個のわなを確認すると
研修2日目。前日に仕掛けたわなを確認します。
橋口さん:
「わなってここですか?」
新人男性:
「そうですね。これ(木の根)がまたぐかなと思って」
橋口さん:
「もしかしたらあと1週間以内で捕まったかもしれない。なかなか1日では難しい」
楠目さんのわなも…残念、獲物はかかっていませんでした。
橋口さん:
「わなの真ん中をぐっと踏んで作動させてください。そしたらそれが抜けないか確認してもらっていいですか。うん大丈夫ですね」
結局、仕掛けた30個のわなにかかった獲物はゼロ。なぜ、失敗したのか…
新人男性①:
「こちら辺というのは候補に入れたりした?」
新人男性②:
「そっちは石が結構あると思ったので」
新人同士それぞれに批評し合いながら、問題点を洗い出します。
楠目さん:
「ぜんぜん違う。他の方のわなも見ることができたりとか、痕跡の探し方とかも教えていただいたので、それを地元に持ち帰って頑張りたい」
研修を終えた新人ハンター、得た知識と技術で野生動物との知恵比べに挑みます。