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【政治デスク解説】世論調査“反対63%”なのになぜ増税?防衛費確保へ岸田首相の考えは?

2023年1月19日 20:13
【政治デスク解説】世論調査“反対63%”なのになぜ増税?防衛費確保へ岸田首相の考えは?

■“防衛増税”に反対63%

岸田首相は、防衛費を増額するための財源の一部を増税でまかなう方針です。具体的には、法人税と所得税とたばこ税を組み合わせてまかなう考えですが、今月のNNNと読売新聞の世論調査では、賛成28%に対して反対は63%と、反対が賛成の倍以上という結果となりました。無党派層に限っては賛成19%反対が72%と圧倒的。頼みの自民党支持層ですら賛成44%反対が48%と反対の方が上回っています。

このためか、防衛費の増額自体も賛成と反対が逆転してしまいました。先月12月には賛成が51%、反対が42%と賛成の方が多かったのですが、今月1月は賛成が43%、反対が49%となってしまいました。政権の中枢の一人は「やはり財源に増税という話が出てきてしまったので、これに引きずられて反対論が増えてしまったのではないか」と分析していました。

■“異次元の少子化対策”

新しい政策の表明もありました。岸田首相は年頭の会見で、異次元の少子化対策に挑戦すると表明しました。この少子化対策の拡充について、世論調査では評価するが58%、評価しないが34%ということで、前向きに受け止められているようです。ところが、そのための財源として、増税などの負担が生じることについては、賛成が38%、反対が56%と反対の方が上回っています。

防衛費の増額も少子化対策の拡充も、政策の方向性は理解されているけれども、実現のために増税など負担が増えることは理解されていません。自分の懐が痛むことになるということは、まだ受け入れられていないというのが現状のようです。こうした世論もあって、野党だけでなく、自民党内にも「増税は反対、国債や無駄の削減で手当てをするべき」という意見が根強くあります。

■岸田首相はなぜ増税にこだわるのか?

ではなぜ、岸田首相は財源を増税でまかなうことにこだわるのでしょうか。会見では次のように述べています。

岸田首相
「さまざまな議論がありましたが、私は内閣総理大臣として将来の世代に先送りすることではなく、今を生きる我々が将来世代への責任として対応すべきものであると考える」

借金に頼るのではなく、必要な収入をきちんと用意しようという考え方で、これは首相の信念といってもいいようです。周りによりますと首相は「政策を実現するために総理になったんだ。嫌われることを気にしていたら、何もしないままで終わる」というふうに話していたといいます。慎重と言われてきた首相ですが、最近は、リーダーシップを発揮しようという意気込みが見えます。

■岸田首相の“信念としての増税” 国民に理解はされるのか

政策の財源をまかなうのに、増税か借金かは意見が分かれるところです。それでも政治家の信念として増税が正しいと思っているのであれば、それをどう訴えて国民の理解を得るのか、与野党の政治家の支持を広げていくのか、ここはポイントになります。

最初はそれほど支持されていなくても訴え続けることによって実現した例があります。小泉純一郎元首相の郵政民営化です。これも最初から支持が多かったわけではありませんし、どちらかといえば実現するのは難しいのではないかと思われていました。それでも訴え続けたことと、首相の権力をうまく使ったことで実現しました。

岸田内閣の支持率は今回39%。ぎりぎり踏みとどまりましたが、瀬戸際です。ここからが首相の腕前の見せどころです。今月23日からの国会では、ぜひ説明を尽くしてもらいたいと思います。

(日本テレビ政治部デスク 竹内真)

■NNN・読売新聞世論調査
1月13日から15日 全国有権者に電話調査
固定電話 440人(回答率 61%)
携帯電話 632人(回答率 42%)