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岸田首相は“検討使”? 発言を徹底分析「使われた言葉」1位は…

2022年10月8日 14:36
岸田首相は“検討使”? 発言を徹底分析「使われた言葉」1位は…

10月4日に発足1年を迎えた岸田政権。この1年間に、岸田首相が記者会見など、記者団の取材に応じた180回以上の発言を徹底分析。ネット上などで遣唐使ならぬ“検討使”と呼ばれる岸田首相だが、「検討」は果たして何位だったのか。また、最も使われた言葉とは?

■1位は「検討」? 岸田首相発言を分析すると

「私の口癖だと思う。そのように言われていることは十分承知している。しかし、これは、議論を進めて行くべきところはしっかり議論を行うんだということを申し上げている」

7月10日。岸田首相は、出演したテレビ番組で、国会答弁などで「検討する」と口にすることから“検討使”と呼ぶ声があることを問われ、こう答えた。

岸田首相自身が“口癖”というものの、果たして、首相は、「検討」という言葉をどれほど使ったのか。

今回、私たちは、テキスト分析ツールを活用し、岸田首相が官邸での記者会見など、記者対応を行った際の発言から、名詞の「出現回数」を調べ可視化。図では、回数の多い名詞の文字が大きく表示されている。なお、その名詞を抽出するにあたり、分析の観点からは意味がない一般的な単語は除外した。(※「いろいろ」「様々」など)

すると、出現回数が最も多かったのは「検討」ではなく「対応」。その数は、673回だった。ちなみに2位は「状況」だったが、466回と、「対応」と大きく差がついた。

そして、ネットなどで「首相の発言が多い」と言われてきた「検討」の出現回数は158回と、56位にとどまった。

【出現ランキング1~10位と56位】
1位「対応」673回出現
2位「状況」466回出現
3位「国民」456回出現
4位「皆さん」427回出現
5位「対策」409回出現
6位「経済」「日本」398回出現
7位「ウクライナ」「感染」379回出現
8位「政府」371回出現
9位「今後」333回出現
10位「我が国」330回出現
・・中略・・
56位「検討」158回出現

今回の分析では、岸田首相は「検討」という言葉よりも「対応」を多用していることが明らかになったが、なぜ岸田首相は“検討使”と言われているのか。

今年5月に行われた衆議院予算委員会。国民民主党の玉木代表が岸田首相にこう呼びかけた。

玉木代表
「総理、『けんとうし』って呼ばれてるんですよ」

さらに、6月の衆議院予算委員会でも、立憲民主党の山岸議員が岸田首相の国会答弁で「検討する」の言葉が204回、安倍元首相が143回、菅前首相が126回と、比べると「一目瞭然だ」と指摘した。

首相周辺の1人は「国会は、自分がやりたくないと思っている政策であっても、野党など対立する相手と議論しなければならない場。『検討』には、意見が違う相手でも突っぱねることなく、いったんは受け止めるという意味が暗に込められている。しかし、官邸での会見は、自分のやりたい政策について述べるわけで、『検討』というのはそういう場所ではあまり使わない」と解説する。

また、別の政府関係者は「岸田首相は真面目。だから無責任に言い切れない。ある政策について、率直に『やります』と言い切ればいいことも、『検討もせずに“やります”とは言えない』となり、結局答弁にそれを使うことになる」と語った。

■首相が「対応」してきたこと~岸田政権の「成果」は

岸田政権の1年を、今年3月までの「前半」と、4月以降の「後半」で区別して比較すると、首相が「対応」してきたことに違いがみられた。

前半は新型コロナへの「対応」に追われたこともあり、「感染」「接種」「経済」など、新型コロナに関わる言葉が、いずれも200回以上出現した。政権発足当初は「オミクロン株」への対応に追われ、全世界を対象に、外国人の新規入国を原則停止した。3回目のワクチン接種の促進に向け、テレビCMやSNSなどで、「ワクチンは、種類よりもスピード」などと、国民に接種を呼び掛けた。

また、岸田政権は新型コロナ対策において、感染防止と社会経済活動との両立を心掛けた「対応」をたびたび強調していたこともあり、「経済」という言葉も大きく表示された。

首相周辺は「政権の一番の成果はコロナだ。医療ひっ迫も抑えながら経済を回せている」と強調した。

2月下旬、ロシアによるウクライナ侵略が始まった。この影響は現在も続き、物価高騰などの要因になっている。

岸田首相の発言でも「ウクライナ」(8→7位)「ロシア」(22→10位)「G7」(41→18位)などの言葉が増え、ランキングの上位にあがった。

前半で大きく表示された「感染」や「接種」などは、陰に隠れるほど小さくなった。「感染」の出現回数は、前半で5位(263回)なのに対し、後半では21位(116回)と落ち込んだ。

一方、「経済」という言葉は前半が7位(213回)、後半が5位(185回)となり、回数自体は減ったものの、順位があがった。

ウクライナ侵略により、世界的なエネルギー価格や食料価格等が上昇し、日本も物価高に直面したことで、ガソリンの元売り会社への補助金の上限引き上げや、中小企業の賃上げに向けた施策、低所得の子育て世帯への給付など、補正予算の編成を含め、経済対策を進めたことが背景にある。

岸田首相は経済対策について、常に「切れ目なく対応」としてきた。ある首相周辺も「物価高は本当に深刻な状況。10月下旬までに対策を取りまとめるが、相当大きな宿題が降ってきている」と話すなど、岸田首相が経済対策への「対応」に力を入れていることが見て取れる。

7月には、日本国民の誰もが予想だにしない事件が起きた。参院選の最中に安倍元首相が銃で撃たれ亡くなった事件だ。その前後でも、出現回数1位のワードは「対応」だった。

岸田首相は安倍元首相の事件後、わずか6日で国葬の実施を発表。その後、いわゆる統一教会と政治家との問題などが次々に明るみに出ると、国民に丁寧に「説明」することが求められた。比較期間に差はあるものの、「説明」は事件前には出現回数49位(137回)だったが、事件後には22位(59回)に急上昇した。

そのほか、安倍元首相にまつわる発言が増えたこともあり、「総理」という言葉や、“統一教会”の問題について、政府としての対応が求められたことから、「政府」などの言葉が大きく表示された。

首相周辺は「これまでの政権に比べて、説明しようとしていることが、ここまでやって来られた一番の要因。『丁寧に説明』は、岸田政権の一つのキーワードだ」というが、閣僚経験者の1人は「役人の答弁を読むようなことしかできないのがダメだ」と厳しく指摘している。

■2年目に突入した岸田政権「課題の方が多い」

いわゆる統一教会をめぐる問題や、物価高・円安など、課題山積の岸田政権。

ある政権幹部は、「1年間はとにかくあっという間だった。国葬と統一教会の問題が急に出てきて、成果というより課題が増えている印象だ」と話し、今後も目の前の課題に「対応」していかなければならないとの考えを示した。

2年目に突入した岸田政権だが、ある自民党幹部は「バタバタしながらも乗りこえて、2年目に突入できたのはよくやっていると思う」と語る。

一方、自民党の世耕参院幹事長は、10月6日の参院本会議で、「国民はそろそろ岸田首相に対し『聞く力』に加え、『語る力』も熱烈に求めている」と述べた。岸田首相の政権運営への姿勢について、注文をつけた形だ。

首相周辺は、「今はそれなりにやりたいことができていて、これから徐々に、“岸田色”を出そうと思っている」と意気込む。さらに別の政府関係者は「今後は国会でも『検討』が少なくなり、『実施』が増えるのでは」と期待感を示す。

岸田政権の2年目は始まったばかりだが、早くも“真価”が問われている。

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