“切り抜き動画”政治への影響も…収益や課題は? 切り抜き職人に密着
今、SNSなどでは“政治系切り抜き動画”が広がっています。情報の正しさよりも再生回数を増やして収益を上げることを重視していると問題視もされています。誰が動画を作り、どれくらいの収益を得ているのか、取材しました。
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「働いてる時間が倍になったので(収入は)『会社員時代の倍』はある」
政治家の発言や映像に、文字を載せて編集する“政治系切り抜き動画”。
国民民主党・玉木代表
「(動画を)撮って、撮って、お願いします」
石丸伸二氏のYouTubeには、「切り抜き・まとめ動画の作成は許容します」の文字も…。
今、選挙や政治への影響力が無視できなくなっていると言われています。
3日前に投開票が行われた「千葉県知事選挙」では、演説会場でカメラを回すユーチューバーが…。
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「撮ったやつを自分で切り抜いて、面白いところだけテロップつけたりとかしてやってます」
また一部の政治家も公式動画などからの“切り抜き”を認めるなど、今や“当たり前”となっている“政治系切り抜き動画”。
実際、去年行われた衆院選の期間中、YouTubeの選挙関連動画で再生された「2億7000万回」あまりのうち、政党や候補者以外による第三者の「政治系切り抜き動画」はおよそ“3割”にのぼっています。
どんな人がナゼ“切り抜き動画”を投稿しているのでしょうか。
私たちが取材したのは――
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「前職と(収入が)同じくらいになったのは2か月目くらい。(今の収入は)倍以上にはなっている」
総再生回数が3億5000万回を超える自身のYouTubeチャンネルで、切り抜き動画を投稿する30代の男性。
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「YouTubeを始めたキッカケは、(前)安芸高田市長の定例記者会見」
2023年、働いていた会社を辞め、“本業”として“切り抜き動画”の制作を全て1人で毎日16時間ほど行っているといいます。
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「サムネイルのインパクトというのはひとつ致し方ないのかなと思ってます」
興味を引くよう工夫する一方、会見や発言は複数回見て、事実関係を確認した上で動画を作るという男性。
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「僕は生活をしていかなきゃいけないので、利益というものは追求すべきだと思っていますし、より多くの方に見てもらいたいなら質を高めていく必要がある」
どんな思いで動画を投稿しているのでしょうか。
切り抜き動画を投稿するユーチューバー
「見てほしいがためにウソを載せるのはだめです」「自分が情報を発信することでより多くの人に情報が届く。届いた結果、見たものについて考えてもらう。それぞれ是非があっていいと思う」「とにかく政治の入り口みたいなところになってくれればいいだろうという思いを目的にしてやってます」
一方でネットでは、切り抜き動画のバイトも。
“バズる”ことを目的とした「切り抜き動画」の作成を募集するケースもありました。
ネットやSNS上の情報拡散に詳しい専門家は――
SNS上の情報拡散メカニズムに詳しい東京大学・鳥海不二夫教授
「情報の正しさであるとかそういったことではなくて、みなさんの関心を集めること、『アテンションを集めることによって動画の再生回数を増やす』ことが、動画配信者にとってのメリットになっているのは、社会的にはデメリットになっているのかもしれない」
より多くの情報を得ることができる一方、情報の“正確さ”よりも“関心を集める”ことが重視される側面があると指摘しています。
切り抜き動画を見たことがあるという人は――
切り抜き動画を見る人
「切り抜かれてるところは大体短いし見応えある」「うのみにするほど自分にも知識がないから、『こういうことになってるんだな』くらい」
切り抜き動画を見る人
「一視点なのでその人の主張だけしか伝わらない。自分が思いたいように思えばいいのかなと、軽く受け取っている形」
今、広がる“切り抜き動画”について専門家は――
SNS上の情報拡散メカニズムに詳しい東京大学・鳥海不二夫教授
「お金を儲けるためには 別に正しい情報である必要性はない」「“フィルターバブル”と言われる泡の中に入っていて、『泡の外の景色が見られないんだ』と認識した上で、動画サイトと向き合う 必要はあるかなと」
自分の見たい情報に囲まれ、興味のない情報が遮断されてしまうという「ネットの仕組み」を理解し、向き合うことが大切だといいます。
あふれる情報のうち、何が正しいのか。正しく理解することが求められています。