【解説】防衛力強化の柱「反撃能力」…日本を守る“抑止力”となるのか 岸田首相が言及
岸田首相は1日、防衛力強化で踏み込んだ発言をしました。“日本の被害を最小限にとどめるための反撃能力”について言及したのです。戦後の日本の防衛政策は「攻撃しない」ことでしたが、はたして「反撃能力」は日本を守る“抑止力”になるのでしょうか。
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これまで、日米同盟の中で日本は防御を表す「盾」、アメリカは攻撃を表す「矛」の役割を担うとされてきましたが、岸田首相は1日、今後、日本も「矛」の一部を担う可能性があると説明しました。
立憲民主党 杉尾秀哉参院議員
「(反撃能力の保有などで)『矛』の一部を日本が担う、こういうことで基本的な役割が変わるじゃないですか」
岸田首相
「今後は、アメリカの打撃力に完全に依存するということではなくなり、反撃能力の運用についても、他の個別の作戦分野と同様に日米が協力して対処していく、このようになることは想定されます」
一方で、岸田首相は反撃能力について、「あえて言えば、ミサイル攻撃から国民を守る『盾』の能力だ」とも強調しています。
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■“抑止力”となるか…日本の被害を最小限にとどめるための「反撃能力」
有働由美子キャスター
「日本は『反撃する』と言いながら『防衛の範囲内』…これは、どういうことなのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「これまでは、相手がミサイルを撃ってきた場合、これを撃ち落とすことはできるけれども、相手の発射拠点などを攻撃することはできませんでした。そこで政府は、他に攻撃を防ぐ手段がなくて、やむを得ない場合には攻撃できるようにする『反撃能力』というのを“抑止力”として持つようにしようと決めたのです」
「具体的に、どういうときに反撃できるようにするかというと、1日の首相の答弁から初めて見えてきたのは、基本的に“相手が明らかに攻撃してきた後”、“これ以上、撃たせないために、発射拠点などを反撃する”、これであれば、“日本の被害を最小限にとどめるためで、防衛だ”という説明です」
■“1発目はやむを得ない”? 「反撃能力」は本当に相手の“2発目”を止められるのか
有働キャスター
「ということは、『1発目を撃たれるまでは反撃しない』ということですか?」
小栗解説委員
「首相は『相手の1発目を事前に察知して、攻撃を阻止するのは難しい』と言っていて、“1発目を撃たれるのはやむを得ない”ともとれる発言でした。というのも、相手が撃とうとしていると思って実際の攻撃の前なのに攻撃した場合、相手が『そんなつもりはなかった』となると、日本の先制攻撃になってしまう――これは国際法に違反する可能性があるので、しないというわけです」
有働キャスター
「そうすると、反撃能力は抑止になるのですか?」
小栗解説委員
「そこがポイントです。反撃能力が本当に相手に次の攻撃を止められるのか、逆によりエスカレートさせてしまうことはないのか…という疑問も出てきます」
有働キャスター
「辻さんは、どうお考えですか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「同じ悲劇を繰り返さないために、戦後、日本が変わらず貫いてきた平和に対する姿勢が、今を分岐点として本当に大きく変わるかもしれない…それくらい重い決断の最中に今、私たちはいると思います。だからこそ、ウクライナの一件をきっかけに、今、起こっている不安だったり混乱の中で、ぬるっとさらっと変わっていくような怖さを感じてもいますし、本当に有効で必要な手段なのか、かなり慎重に議論する必要はあるなと思います」
有働キャスター
「『攻撃はしない』というのが戦後、日本の防衛政策でした。これは国民の命に関わることですので、説明はとにかく丁寧にしてほしいと思います」
(3月1日放送『news zero』より)