3年ぶり!参議院議員食堂に寿司店オープン 一番の自慢は“地物”マグロ
あまり知られていない国会の中のゴハン事情。忙しい国会議員や職員のおなかと心を満たすのは…?
岸田前首相の退任、石破首相の誕生、そして衆議院の解散と、めまぐるしく動く永田町。そんな中、10月11日、参議院議員食堂に新しく寿司店がオープンした。
参議院議員食堂には、1960年から寿司店が入店していた。その店は60年もの間、参議院で寿司を提供し続けたが、経営上の理由から、2020年3月に閉店することとなった。
その後、別の寿司店が入店したものの、新型コロナウイルスの影響で、およそ1年で閉店。参議院側も、新しい店舗に入ってもらおうと公募などを行ったが、このスペースではガスが使えないことや、カウンターがあることなど、設備の関係で寿司店以外の営業が難しいということもあり、店探しは難航。議員食堂の設備は参議院のものとなっている関係で、基本的に、入居する店舗が勝手につくりを変えることはできないという、国会の中ならではの事情もあった。
それでも、閉店からおよそ3年。参議院議員食堂には久しぶりに寿司店が復活することになった。新しい寿司店、「鮨 塩釜港 国会議事堂店」は、“塩釜港”の名の通り、本店は宮城県塩釜市にある。なぜ、国会の中に出店しようと思ったのか。社長である立花陽三さんに話を聞いてみた。
「知り合いの議員さんに、参議院の寿司屋スペースが空いているけど興味はないか?と聞かれたんですよね。そこではじめてそんな募集があることを知ったので、話を聞かせてください、と。そして公募に申し込みました」「例えば、塩釜には“ひがしもの”というメバチマグロがあるんですが、これ実はあまり東京では食べないんです。でも、国会の方々って全国から集まっているので、何?と興味を持ってもらって、知ってもらって、観光客がどんどん塩釜に来てお寿司食べてもらえたら、復興にもつながるし、いいな、と」
■国会の中の寿司店、経営の難しさ
国会の中には、衆議院に3つ、参議院に3つの飲食店がある。また、隣接する議員会館にも食堂や軽食を提供するカフェテリアが出店している。
一方で、国会の中の食堂は基本的には一般に開放されておらず、利用者の多くは国会議員やその秘書、国会で働く職員など、関係者に限られる。その上、衆議院議員食堂にも寿司店があるのだ。このような事情から、客の数を増やすことは容易ではない。そんな中で、立花社長は「国会周辺では少し安い価格設定」や「地物の提供」で他の食堂と差をつけたいという。
「国会には議員の先生だけではなく、裏方で働く職員さんがたくさんいることを知った。そういう方々にも喜んでいただきたいと思い、正直、最初の価格設定からかなり変えました」「基本的には全て我々は、地元でせりで落として、自分たちでさばいて、それを東京に送っている。だからおいしいものを安く、皆さんにご提供できるんです。そこが差別化できるところかなと」
また、オープン時点ではキャッシュレス決済のみ利用可能となっている。実は、官邸や国会に入っている飲食店は、現金のみの利用となっている店舗や、現金かQRコード決済のみ使用可能となっている店舗が多い。そんな中でも、キャッシュレス決済のみ利用可とした理由を、立花社長は「商売なのでお客様にある程度譲歩しないといけない」とした上で、「それでもオペレーションコストや管理コストが馬鹿にならない。その分値段で還元できたら」と話す。
■長く愛される店に…
国会の中ならではの経営の難しさがありながらも、出店を決意し、無事オープンをむかえた「鮨 塩釜港 国会議事堂店」。参議院議員食堂待望の寿司店として、「私が生きているうちは続けたい」と立花社長は語る。「僕はそもそも塩釜のマグロが美味しいよってことを知ってほしいんで、1個の発信基地になればいいし、自信もって美味しいもの出すんで、それを味わっていただけたらなと」
立花社長は、「塩釜のマグロがナンバー1だ」とインタビュー中に何度も繰り返していた。では、ナンバー1のマグロはどんな味なのか。オープン日のお昼、お店にお邪魔して、自慢のマグロをいただいいてみることにした。しっかり食感があるのにとろけていく不思議な感覚で、大変おいしかった!
「鮨 塩釜港 国会議事堂店」が、参議院議員食堂のこの場所で長く続くことと、おいしいお寿司でパワーチャージをした国会議員が日本を前に進めてくれることを期待したい。