上官も“ニックネーム”で…「ハラスメント対策」にも効果あり 海自・徳島基地独自の教育に密着
嫌がらせなど、いわゆる「ハラスメント」が相次ぐ自衛隊。一人ひとり声を上げられる環境作りを目指して、ハラスメント防止の面でも効果がある、海上自衛隊の徳島基地が行う独自の教育に日本テレビが密着取材しました。
徳島県にある海上自衛隊の基地。航空機の搭乗員を育成する部隊です。隊員およそ500人のトップは稲崎一等海佐です。有事に対応するためにも、上官の命令に従うことが法令で義務と定められている自衛隊。一目で上下関係が分かるよう、制服には階級章が縫い込まれています。
稲崎1佐より3階級下の小坂一尉。
小坂祥人一等海尉
「上官の命令にしっかり従うように、こうしたい、こうするべきだってのはあるんですけど、押し殺すようにはしてます」
そんな組織で問題になっているのがパワハラやセクハラなどのいわゆるハラスメント。
風通しのよい部隊を作るため、徳島基地が力を入れているのは──
教育を担当する森寛隊員
「階級とか年齢を意識せずに皆さんが平等な場に立って、びびらずコールネーム(ニックネーム)で呼び合ってください」
コミュニケーションを円滑にするための独自の教育です。
メンバーは、1佐から5階級下の3尉まで。まず行うのは、制服を脱ぎニックネームをつけること。
教育が行われる2日間、稲崎1佐は「イナ」、小坂1尉は「チャピ」に。
肩書を外した隊員たちが挑戦するのは、木材から落ちずに並び順を替えるミッション。外したはずの階級に遠慮し、若手はなかなか口を開けません。
しかし、ミッションが進むと…
イナ(稲崎一佐)
「俺が乗り越えればいいんだな?」
サカナ(佐藤一尉)
「イナさん、ちょっとこっちに来られます?」
イナがまわりとフラットに接することで若手からも声が出るようになりました。
サカナ
「話しやすい環境だなとすごく感じてきたので、言えるようになったかなと」
チャピ(小坂一尉)も―
チャピ
「ヒラ、またがれた方がいいんちゃう?」
教育を担当する森寛隊員
「もっと声出して言ったらいい。思っていても伝わらなければチームのためにならない」
チャピ
「ヒラ、またがれた方がいいんちゃう?」
チームがその通りに動くと、移動が成功。
チャピ
「今ので思いましたね。もっと言わないといけないなと」
続いては、全員でフープを下げるミッション。
森寛隊員「離れたかなと思ったら、その人に言ってあげてください」
指から離れたら失敗です。ところが…階級の上下にかかわらず、メンバーのミスは指摘できません。
チャピ「なかなか言えなかったですね。相手が嫌な思いをしないような言い方とか見つけていかないと」
改善すべき点も浮き彫りになりました。
徳島基地がこの教育を始めたのは6年前。隊員間のコミュニケーション不足から航空機の衝突事故になりかねない事案が発生し、再発防止のために導入されました。
しかし、一人ひとりが声を上げられる環境作りは、ハラスメント防止の面でも効果があると分かったといいます。
プログラム終了後、制服に戻った幹部たち。ちゃぴこと小坂一尉は。
小坂一尉
「今後、群のホームページをこちらの方に変更したいと考えております」
基地トップに対し、自ら提案を行った小坂1尉。
稲崎一佐
「それでよろしくお願いします。お疲れ様でした、チャピ」
小坂一尉
「思い切って言ってよかったです。自分が思ったことはしっかり発信して、群司令に決めていただけばいいと、考えが変わりました」
稲崎一佐
「自分が口出しすることが若手の発言の機会を萎縮させてしまう。若手の意見を引き出して、若手にリーダーシップを取らせて、進めていくことの重要さを改めて学ぶことができた」