【解説】衆議院解散、“超短期”決戦へ 事実上の選挙戦スタート
9日、衆議院が解散され、事実上の選挙戦がスタートしました。解散前に行われた党首討論では、石破首相が野党党首らと80分を超える異例の論戦を繰り広げました。今後の展開などを日本テレビ政治部官邸キャップ・平本典昭記者が解説します。
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鈴江奈々キャスター
「3つの疑問について聞いていきます。
1.石破氏vs野田氏…勝ったのは?
2.“裏金議員”非公認…女性擁立へ
3.「○○」解散“超短期”決戦へ
まず、1つめです。党首討論、勝ったのはずばりどちらと見ていますか?」
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「一言で言うと、石破首相が9日は防戦一方だった印象です。終わった後に取材してみました。立憲民主党の幹部は『直接対決で、リーダーとして野田代表の方が石破首相より上だということが伝わったのではないか』と手応えを感じていました。一方、自民党ベテラン議員はこう言っていました。『厳しい攻撃だったけどよく耐えた』と。『野田代表が攻め続けたけど決定的な一撃までいかず、石破首相が逃げ切った』という声が多かったです」
「もう1つ多くの議員が指摘したのは、『政策議論が少なかった』という指摘でした。日本テレビ政治部で全議論をもう1回調べてみました。80分の中で純粋な政策議論は10分間、全体の12.5%だけでした。共産党の田村氏が最低賃金の問題を追及していましたが、それ以外は政治とカネなどの政局一色だったと言えます」
「そして、党首討論の後、衆議院は午後4時すぎに解散され、恒例の万歳三唱が行われていました」
桐谷美玲キャスター
「ふと思うんですが、なんで万歳をするんですか?」
平本記者
「解散はたしかに議員にとって職を失うリストラ宣言みたいなものですから、職を失っているのになんで万歳と思いますよね。複数の議員や国会関係者に聞いたところ、『選挙前の景気づけ』とか『やけっぱち』とか、諸説あるようですが、明治時代からの慣例のようで、理由は詳しくはわかっていないようです」
「ただ、おかしいと思って万歳しない人もいます。その1人が小泉進次郎議員です。これまでも『意味がわからない』と万歳してこなかったのですが、9日も私は衆議院本会議場で見ていましたが万歳はせず、下を向いていました」
鈴江キャスター
「そして9日は万歳のタイミングがバラバラとしていて、していなかった議員も多かったですよね」
平本記者
「これも終わった後に聞いてみたら、タイミングを逸してしまったという議員が多く、実は前に『衆議院を解散します』と言った時に万歳をしたら、議長からこのタイミングではないと訂正されたことがありました。どのタイミングで万歳をすればいいのかがわからないで周りを見渡してしまった議員が今日は印象的でした」
鈴江キャスター
「2つめの疑問です。裏金議員を非公認とするか、公認とするか、ずっと議論が続いていましたが、ついに決断がおりました。女性擁立へというのはどういった背景があったんでしょうか?」
平本記者
「まず9日、解散当日の朝8時から、石破首相は公認問題の調整にあっていました。自民党は新たに6人、あわせて12人を非公認とすることを決めました。そして、比例候補者が足りなくなるとして、女性候補の擁立を進める方針を打ち出しました。背景には自民党に女性議員が少ない現実があります。自民党は、今後10年で国会議員の女性割合を30%に引き上げる目標を掲げているんですが、現状は11.8%(23年8月時点)と他の政党よりも少ないです。女性議員を増やすため、比例候補者に女性擁立を進めるというわけのようです」
「また、非公認とする選挙区には、自民党は、基本的には対立候補を擁立しない考えだとわかりました。ただ、地元から要請があれば今後、別の公認候補を擁立することも否定しないと含みを残しています」
鈴江キャスター
「非公認というところで、今回の対応というのは厳しい対応と言えるのかどうか、この点についてはどうでしょうか?」
平本記者
「これは両論あって、旧安倍派の議員からすれば『厳しい対応』だったと。9日の会議でもある旧安倍派の議員は、『処分を2度も受けるのはおかしい』という意見が出たそうです。というのも一度、自民党は4月に処分を決めていますから、二重処分にあたるのではないかと」
「一方、野党側は『甘い』と批判してます。というのも、石破首相が『非公認は相当数』になると発言していました。党首討論でも野田代表は『大半が公認』の間違いじゃないかと批判していました」
鈴江キャスター
「そういった中で選挙戦に突入していくわけですが、超短期決戦となった9日の解散、平本記者は『何解散』とみていますか?」
平本記者
「これ考えたんですけれども、ずばり『裏金解散』と名付けたいと思います。というのも、まずこの選挙戦では何より、自民党の裏金事件への対応が十分だったか不十分だったかが問われるからです。自民党は内部調査を行い、処分を下し、政治資金規正法を改正し、トップの岸田前首相が責任をとって辞任しました。この対応が十分だったのかどうか。石破首相自身は『納得と共感内閣』と掲げていますので、この自民党の対応に私たちが『納得と共感』をするのかが問われる選挙だと思います」
「この『過去』の対応と同時にもう1つ問われるのが『未来』についてです。各党のマニフェストがそろってきています。私たちの未来の生活に直結する賃上げ政策などを含む経済対策、年金や医療などの社会保障政策、各党がどんな未来像を描いているのか」
「石破首相は周辺に『政権を担うのは自民党か立憲など野党か、どちらがふさわしいかを問いたい』と話しているそうです。野党第一党の立憲民主党は『政権交代こそ最大の政治改革』と訴えていますが、『本当にその力があるのか、政権を任せても大丈夫なのか』を冷静に見る必要があると思います。『過去』と『未来』を私たちが考えるきっかけの選挙になればと思います」