「政治とカネをめぐる問題」「公共事業」「IR不認定」「国際航空便」2024県政を振り返る《長崎》
【NIB news every. 2024年12月26日放送より】
2024年を振り返るシリーズ、テーマは「県政」です。
政治とカネをめぐる問題に賛否が渦巻く公共事業、解決の糸口が見えない課題も山積しています。
日本の政界を大きく揺るがした自民党派閥の裏金事件。
それは長崎でも…
(元衆議院議員 谷川 弥一氏)
「自身の認識の甘さがあったと深く反省している。すべての国民の皆様に対して、この場を借りて深くお詫び申し上げる」
1月、謝罪会見を開いた谷川 弥一氏。
派閥から5年間で4300万円を超えるキックバックを受けながら、収支報告書に記載しなかったとして、政治資金規正法違反の罪で東京地検に略式起訴されました。
(元衆議院議員 谷川 弥一氏)
「私は力をつけたかった。長崎県が抱えた課題を色々処理していきたかった。それなら大臣並みの(ノルマの)金を集めてやろうと思った」
離島振興などの地域課題に議員として、約40年にわたって “剛腕” を振るった重鎮でしたが、詳細を明らかにしないまま、政治の表舞台から去ることに…。
この政治資金を巡っては、谷川氏と同じ自民党の旧安倍派に所属した加藤 竜祥 衆議院議員にも、10万円の(収支報告書への)不記載が判明し、国交大臣政務官の役職を辞任。
相次いで発覚した政治とカネの問題に、市民は…
(市民)
「そういう人が2人もいるのはちょっとがっかりする」
「日本全国に長崎のイメージが、国会議員によって悪くなるのはよくない」
国民の不信が高まる中、8月。
(岸田首相)
「自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くことだ」
岸田総理大臣が退陣することを表明。新総理となった石破氏は…
(石破首相)
「私どもの内閣がやろうとしていること、政権としてやろうとしていることに対して、信任を賜ることが今回の解散総選挙の意義」
総理に就任して、わずか8日後の解散。
「政治改革」が争点の一つとされる中、長崎選挙区は変更された3つの小選挙区にあわせて12人が立候補し、与野党が対決しました。
新1区では、国民民主党の西岡 秀子氏が3回目の当選を果たし、県北に離島地域が加わった新3区は、自民党・金子 容三氏が議席を維持。
“最激戦区” とされた新2区は、10万円の不記載で逆風の中での戦いとなった自民の加藤 竜祥氏が、立憲民主党の候補者に1万4000票あまりの差をつけて勝利。
ただ、今月出席した政治倫理審査会では…
(加藤 竜祥議員)
「監督責任は私にある。10万円とはいえ、額の大小は関係なく反省すべきことなんだろうと」
キックバックの仕組みなどは「知らなかった」との弁明を繰り返しました。
政治とカネを巡る問題は県でも。
(大石知事)
「私の後援会の資金管理の報告の記載内容をめぐり、県民の皆様にご心配をおかけしていることを、心からお詫び申し上げる」
疑惑の目が向けられたのは、2022年の知事選挙に絡む大石賢吾知事。
医療法人など9つの団体からの「う回献金」を受けた疑惑や、自身の後援会に2000万円を貸し付け、約655万円の返済金を受け取ったとする「架空貸し付け」の疑惑が浮上しています。
県議会では選挙戦を支えた “身内” からも「県政の停滞を招く重大事案だ」「信頼回復のため、知事は説明責任を果たすべき」などの指摘を受けました。
10月までに実施された総務委員会の集中審査には、後援会の元関係者も参考人として出席。
(大石知事の後援会元関係者)
「真実は一つです。それを変えることはできません。これ以上、うそにうそを重ねることをやめていただきたい」
(大石知事)
「説明ができるように事実確認の努力は続けたい。ただ相手があることなので、いつまでとお約束はできないが可能な限り対応したい」
知事と参考人の証言が食い違い、真相究明には至りませんでした。
野党系の “改革21” など4つの会派は「百条委員会」の設置を求める動議を提出しましたが、最大会派・自民党の反対で不採択に。
ただし自民党は、2月に開く全員協議会の場で県政のトップとして、説明責任を果たすよう大石知事に求めています。
(大石知事)
「これまでもできる限りの事実関係の整理をしながら、真実を述べてきたところだが、引き続きそういった対応を真摯に行っていきたい」
今年は、離島のトップの顔ぶれも変わりました。
壱岐市では46歳(当時)の 篠原 一生新市長が誕生。
五島市のトップには、49歳の出口 太 氏。
一方、対馬市長選挙で争点となったのは、原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の誘致の是非でした。
推進派の新人と反対派の現職の一騎打ちの結果、反対を訴えた現職が勝利。
人口2万8000人の “国境の島” を揺るがしました。
(比田勝 対馬市長)
「豊かな島づくりを目指して、観光、一次産業を活用したた海業の振興など中心として、産業活性化対策にしていきたい」
県政を取り巻く課題も山積です。
1年前(去年)、資金調達の不確実性などを理由に国が、認定しないとの判断を示したカジノを含む統合型リゾート施設=「IR」のハウステンボスへの誘致。
県は、多大なコストや労力、時間が必要なことから、今の制度での再チャレンジは「相当程度ハードルが高い」との受け止めを先月、改めて示しました。
(湯川 亮一IR室長)
「現行制度では、IRに再チャレンジするというのは相当程度難しいのではないかと認識している」
ただ、県内ではIRへの “再チャレンジ” に期待を寄せる自治体や、企業などの動きも。
(大村青年会議所65周年企画委員会 宮村 仁士委員長)
「新たなエンジンとして、特定複合観光施設IRの誘致が大村湾のどこかに必要ではないかと考えている」
今後が注目されます。
解決の糸口が見えない川棚町で進む石木ダム建設事業は今年8月、公共事業の評価監視委員会で、完成時期を7年延長し、総事業費を当初の計画から1.5倍となる420億円に変更する方針が承認されました。
県は工期を7年延長し、2032年度末とする方針を示しましたが、建設に反対する住民との溝は深まるばかりです。
コロナ禍を経て、航空、観光業界の “再開” の動きが加速しています。
10月、長崎空港に降り立ったのは、韓国・ソウルからの国際航空便。
(大韓航空 李 碩雨 日本地域本部長)
「大韓航空の長崎線を応援してほしい。文化や歴史があり、韓国人が好きなゴルフがあり、温泉があり、素晴らしい地域だ」
約5年半ぶりとなった「ソウル便」の再開に続き、12月には「韓国・務安国際空港を直行で結ぶチャーター便」の運航も始まりました。
政府観光局が発表した今年1月から11月までに日本を訪れた外国人は、累計で約3338万人と過去最多だった2019年の通年を上回っています。
インバウンド獲得競争が激化する中、海外向けプロモーションの強化など対応が急がれる観光立県・長崎。
再生、成長が期待される巳年の来年、真価が問われる1年となりそうです。