【解説】どうなる「介護保険料」? 「40歳未満にも拡大」という案も
40歳以上の国民が原則、全員加入する「介護保険制度」について、収入の多い高齢者の負担増を含めた見直しの議論が始まりました。
◇総費用は3倍以上に
◇高所得者の負担増?
◇40歳未満への影響は
以上3点について詳しくお伝えします。
まず、そもそも介護保険という制度は、どのような制度なのかというところから始めたいと思います。介護保険制度は2000年にスタートし、20年あまり続いています。
介護が必要になった人を社会全体で支えるようにする仕組みで、満40歳を迎えると、すべての国民が原則、加入することになっています。
「給与明細」に書かれている会社員などの人も多いと思いますが、40歳からは原則、保険料の支払いは“一生涯”続きます。40歳から64歳までの人で、例えば会社員は、毎月の「健康保険料」と一緒に給与から天引きされています。給与額によって違いますが、今年度の負担は、平均で毎月6829円となっています。
そして、65歳以上の場合は、原則「年金」からの天引きとなっていて、平均で毎月6014円の負担となっています。
こうした金額はあくまで全国平均ですので、お住まいの自治体や収入によってこの金額は増減します。
まず、65歳以上の場合は、認知症や日常生活で広く介護や支援が必要となった時、また、40歳から64歳までは、脳梗塞や関節リウマチなど、法令で定められた「特定疾病」で介護や支援が必要になったときにサービスが受けられます。
どのようなサービスが受けられるのかというと、対象となる主なサービスは3つあります。
【訪問介護】
ホームヘルパーが、自宅で入浴の介護や掃除、洗濯などの家事を行います。
【デイサービス】
日帰りで施設や病院などを利用できて、リハビリなどを行うことができます。
【施設系サービス】
特別養護老人ホームなどに入所して、そこで食事や入浴、排せつなどの介護をトータルケアで受けることができます。
このようなさまざまなサービスなどを、少ない費用負担で受けられるという制度です。
やはり、一番大きいのは「お金」の問題です。介護保険制度が始まった2000年と2022年を比較してみます。
【要介護認定者(介護が必要だと認定された人)の数】
2000年:218万人
2022年:690万人
【介護にかかる総費用】
2000年度:3兆6000億円
2022年度:13兆3000億円
どちらも3倍以上に増えています。
これに伴って、65歳以上の人が払う介護保険料も、2000年度に2911円だったものが、2022年度には6014円と2倍以上に増えていまして、さらに、2040年度には、9000円程度に増えると推計されています。
この介護保険にかかる「お金」をどうするかという話をしていきます。
10月31日に行われた厚生労働省の部会で、すでに議論が始まっています。いくつかのポイントがあるのですが、例えば、出席者からは、「介護保険の対象を『40歳未満に拡大』するのはどうか」という議論も出ています。
2022年現在、40歳以上が対象となっている制度の枠を広げて、もっと多くの人たちからお金を集めてこの制度を支えるという意見です。ただ、この議論では、すでに現役世代は「高齢者医療向けに多大な拠出」をしている。また、子育て世代にさらなる負担となることから、「反対だ」という意見も根強く出ています。
簡潔に言いますと、高齢者でも「支払い能力に応じた負担」をしてもらおうということで議論が進んでいます。具体的にどういうことかというと、65歳以上で所得が高い人の保険料を増やす、その一方で、所得の低い人の保険料は抑えるという議論になっています。
ただ、「保険料の引き上げには限界がある」という意見もありまして、要介護度の低い高齢者は、介護保険ではなく「市町村による支援」に切り替えるという案や、介護のプランを作る「ケアマネジメント」の費用を利用者に一部負担してもらうという案が出ています。
こういったことが現在、議論されています。
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急激に進む少子高齢化の中で、この制度を維持するにはどうすればいいのか。これまでのように、高齢者の負担を現役世代にばかり押しつけすぎず、所得や資産のある高齢者には相応の負担もしてもらおうという流れに変えていく方針が、政府から打ち出されています。厚労省は2024年度の改正に向け、年内にも見直しの方向性をまとめます。
(2022年11月2日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)