田村淳×辻愛沙子3 校則、育休どう思う?
ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんとクリエイティブディレクターの辻愛沙子さんの対談をお送りするUpdate the world。これまで配信で扱った、ペット問題や校則、性教育、男性の育休など幅広いテーマについて議論を交わした。
■ペットが販売されている、本質的な理由はあるか
これまで、Update the worldでは、SDGsにかかわるテーマについて、様々なジャンルのエキスパートと一緒に考えてきた。過去の放送のテーマで気になる事柄について、田村さんと辻さんに語り合ってもらった。
田村さんが真っ先に挙げたのは、ペットの問題だ。必ずしも生まれたばかりの犬や猫を飼う必要はない。ペットショップの中には、悪質なものもある。そもそも一目ぼれで飼うこと自体、命を預かる観点では、アウトオブデートな価値観だと番組を通して学んできた。
辻
「私も動物が大好きなんですが、一度海外の団体の活動を調べたことがあり、欧米にはペットショップがほとんど存在しないと知って驚きました。淳さんはペットを取り巻く環境について、どうお考えですか?」
田村
「娘と先日行ったスーパーの中にペットショップがありました。それを見て娘は、『なんで売られているの?』と聞いたんです。その問いかけに、答えが全然出てきませんでした。結局僕は、『なんでだろうね。パパも分からないから、今度調べてみようか』と答えました。僕自身も考えるきっかけになりましたね」
辻
「子どもの純粋な視点からの質問は、大人もドキッとしますよね。娘さんにとっても、考えるきっかけになったでしょうね」
■校則を議論し合える環境に
次なるテーマとして掲げられたのは、「高校生にふさわしい」。田村さん自身も学生時代から校則に疑問を抱いていたという。
田村
「学生時代、どうして校則があるんだろうか、破ったらどうなるのか、すごく疑問でした。中学生の頃は、よく先生から『悪いことをすると、内申書に書くぞ』と脅されて。ああやって自分の夢を人質にされたら、規則自体が正しいのかは置いといて、守らなければいけないと思い込んでしまいます。一方で、高校ではルール違反をして停学になりました。ある程度規則がないと、僕みたいにルールを犯す子どももいる。とはいえ、何が校則として正しいのかは、生徒も含めて議論すべきだと思います」
辻
「先生と生徒が対等な関係で意見を言い合えるといいですよね。もしかしたら『実は朝礼はいらないと思っていた』と考える先生もいるかもしれません。私は中高時代、海外に住んでいました。海外ではいろんな髪の色の人がいるので、日本の黒髪にする校則には驚きましたね」
田村さんは以前、YouTubeで髪色に関する意見を発信した。学生時代、金髪にしたら先生に怒られた。その先生は白髪染めをしていたから、なぜ先生はいいのかと問いかけたら、「うるさい!」と理不尽に怒られたという。
田村
「毛を染める行為自体は同じなのに、なぜ違うのかと思いましたね。理論立てて説明してくれたら納得できる生徒だったと思うんですが、頭ごなしに否定されて。この先生は嫌いだなと感じました」
辻
「別に反抗したくて言っているわけではなくて、納得したいんですよね。よくTwitterでも、『いつも怒っているよね』と書かれるんですが、私は全然そんなことなくて」
田村
「そう。本当に疑問に思っているだけなんですよ。『これなんで?』と思う、小学生の心のままなんです」
■「イクメン」自体、偏ったキーワード
次なるテーマは、性教育や育休に。この問題には、個人の価値観はもちろん、社会的な構造も大きな一因となっているのではと語る。
田村
「小学生の頃、女子がブルマを穿いているのを疑問に感じて、先生に聞いたんです。すると『おまえはエッチな目線で見ているからそうなるんだ』と言われて。むしろ、女子がいつも目線が気になると悩んでいるから、男子と同じ体操着でいいのではと提言したのに『おまえはエッチだ』と断罪されて。すごくショックでした」
辻
「そのエピソード、同級生だったら好きになっていたと思います(笑)。そして一緒に意見を言いにいったと思う。少し話が逸れますが、日本の性教育は足りていないとよく言われています。これが悲しい事件が頻繁に起きる一因でもあると感じます。
淳さんには、育休についても伺いたいです。よく男性が育児を『手伝う』という言葉を聞きますが、そもそも『手伝う』という価値観自体おかしいと思うんです。この価値観の根本には、個人の問題はもちろん、社会の構造にも理由があると思います。たとえば保健体育でも、男子は生理の構造も、妊娠のプロセスが身体がどう変わるのか、妊娠後にどんな負担があるのかも学びません。無理解でも仕方がないと感じます。
淳さんは、ごく当たり前に子育てしているイメージがあります。一方で、育休という問題では、男性側が取りたいと思っていても、取れない会社もあると思います。この点に関してはどう思いますか?」
田村
「キャリアに影響するから育休を取らないという話も、夢を人質にしているんですよ。そもそも『男性の育休』というテーマ自体、偏った内容ですよね」
辻
「たしかに、『イクメン』はあるのに、『イクウーメン』は聞きませんね」
田村
「やっぱり偏っているんですよね。これはメディアの責任もあると思います。キーワードだけを押し出しすぎて、本質に触れていない。本来すべき議論ができていないのです。だから僕は、議論を投げかけるしかないと考えています。本当は柔らかい言葉で問いかけたいものの、それだと注目を集められない。なかなかもどかしいところですね」
本質を見つめる。様々な議論が飛び交う時代において、一人ひとりに求められる姿勢と言えるだろう。
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この記事は、2021年12月17日に配信された「Update the world #12 私たちはどうアップデートできるか」をもとに制作しました。
■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。