デリケートゾーンケアを専門家に聞いた
慶應義塾大学SFC研究所健康情報コンソーシアムが、「デリケートゾーンケア」についてのオンラインセミナーを1月18日に開催しました。正しいケアの方法や気を付けるポイントについて専門家に聞きました。
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慶應義塾大学SFC研究所の女性の健康の研究と啓発チームが、オンラインセミナーを開催しました。デリケートゾーンケア用品を販売する企業が、去年、20代~50代の男女518人を対象に行った調査では、およそ9割が「デリケートゾーンの正しい洗い方を知らない」と回答したということです。
■女性のライフステージとデリケートゾーンの変化
デリケートゾーンの特徴とトラブルについて、産婦人科の谷内麻子医師が説明しました。
谷内医師
「デリケートゾーンは顔よりも皮膚が薄いです。思春期になると女性ホルモンの量が急激に増加し、女性器も発達してきます。このとき、おりものが増えるのでニオイやムレなどのトラブルが増えやすくなります。20歳~50歳くらいが性成熟期となり、ニオイ・ムレ・かゆみ・おりものに加え、妊娠や出産によって色素沈着などの悩みが増えます。更年期になると、乾燥やかゆみ、排尿時痛などを感じる場合があります。ライフステージの変化と共に、一生を通して、常に悩みはあるので、適切なケアが必要となります」
■正しいデリケートゾーンケアの方法は?
産婦人科の看護師・矢込香織さんが、デリケートゾーンケアについて解説しました。
矢込さん
「デリケートゾーンのトラブルは皮膚のトラブルです。ポイントは、1清潔にする、2保湿、3通気性の良い下着、4おりものシートなどのこまめな交換の4つです。お風呂などで洗浄し清潔に保ち、保湿をするときは必要以上にじめじめさせないこと、綿やシルクなど天然素材の通気性のよい下着をつけることをおすすめします」
「デリケートゾーンを洗うときは、まずぬるま湯ですすぎます。次に、ボディーウォッシュや石けんをしっかりと泡立てて洗います。爪をたてず、指の腹を使って優しく洗います。ナイロンタオルなどでゴシゴシとこすることはやめましょう。このとき、雑菌の少ない前から後ろの順に洗います。逆にすると、雑菌が入る可能性があるので、前から後ろへの順番がポイントです」
「これはトイレの後、トイレットペーパーで拭くときも同じです。お風呂では、アンダーヘア、Vゾーン、Iゾーン、Oゾーンの順に洗います。最後はぬるま湯でしっかりと流しましょう。たっぷりと泡立てて優しく洗うのは洗顔の方法と似ているのではないでしょうか」
■参加者からの質問への回答は?
セミナーの終盤は、参加者から寄せられた質問に回答しました。
――脱毛はした方がよい?
谷内医師
「その方の価値観によりますが、ある程度、毛量が多い人が毛量を減らすと、(ムレやかゆみなどの)症状が改善される可能性もあります。ただ、脱毛をするときは、医療機関と連携したところで行ってください。最近、脱毛後のトラブルが多くなってきています」
――脱毛後のケアはどうしたらよい?
矢込さん
「脱毛はちょっとやけどをしている状態と同じことと考えてほしいので刺激を避けて、いつも以上に保湿をすることが大事です。痛みがある、腫れてしまう、熱い感じがする場合は、やけどをしている場合もあるので皮膚科に相談してください」
――生理中もケアをした方がよい?
谷内医師
「生理中は経血が毛に付いたり、ナプキンによるトラブルがあるためケアをしてほしいです。経血の多い1日目や2日目は、ナプキンを頻繁に替えると思いますが、経血の量が少なくなってきて汚れていなくても、雑菌がついているのでナプキンは交換するようにしましょう。お肌の調子が悪いときは、トイレに行くたびに交換するといいと思います。ナプキンは、値段でなく、自分のお肌にあったものを選んでくさい」
――ナプキンがあっているのか、あっていないかの判断は?
谷内医師
「付け心地ですかね。合わないと、付けているとムズムズしたり、チクチクしたり違和感が出てきます。そこは主観で判断するしかないと思います」
――妊娠中のデリケートゾーンのケアは?
谷内医師
「特に妊娠中だからということはありませんが、カンジダ膣炎などを起こしやすいためケアは必要です。」
───男性もデリケートゾーンのケアは必要なのでしょうか?
谷内医師
「男性の性教育をしている医師に話を聞くと、清潔に保つことは男性でも重要だといいます。男性器に垢がたまると、ウイルスが繁殖しやすくなるため、清潔を保つことが重要です。また、恥垢は陰茎癌のリスク因子です」
───3歳の娘がいます。3歳児のデリケートゾーンのケアはどうしたらよい?
谷内医師
「3歳になると自分でトイレに行くようになります。そのときに前から後ろへ拭くように教えてください。便が前(の部分)に付くと雑菌が膣の中に入るので、気を付けましょう。また子どもはゴシゴシ拭いてしまいがちですが、傷がつくので、トイレットペーパーをたたんで押しつけるように拭くことが大事です。お風呂のときは、最初はお湯だけでもよいかもしれません。前から後ろへ優しく洗うことを教えてあげてください」
学校などでも教えてもらう機会のない「デリケートゾーン」のケア。自分の健康状態を知るためにも洗い方などを知ってほしいと医師らは話していました。