約50人に1人が経験の「死産」、母親の心と体のケアは…
日本では、赤ちゃんのうち50人に1人が亡くなった状態で生まれています。女性の心と体に大きな負担がかかる「死産」。そのケアについて取材しました。
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神奈川県立こども医療センター。
看護師 中山由香さん
「これが一番小さい、8cmになります」
亡くなった状態で生まれた赤ちゃんのための洋服です。
看護師 中山由香さん
「満期で生まれてくるお子さんだと50cmの洋服を着ることがある。40cmと8cmだとこれだけの差はある」
洋服は、死産を経験した女性たちの団体から贈られたもの。すべて手作りです。
病院に寄付する洋服を縫う音羽さん。死産を経験した当事者です。
音羽さん
「もう生まれてくるっていうことしか考えていませんでした。人生の中で一番悲しい状況が起きたなって」
帝王切開予定日の3日前に突然出血。急きょ出産しましたが赤ちゃんは亡くなっていました。
思いもしない別れに気持ちが追いつかない中、死産を経験した女性たちが作った洋服を受け取りました。
音羽さん
「同じようにつらい経験をされた方がたくさんいるんだなって。(洋服を)いただいた時は本当にうれしかった」
「1人じゃないですよって励ましというか、そういう思いで縫っています」
日本で2022年に生まれた赤ちゃんは約77万人。そのうち約1万5000人は、染色体の異常などさまざまな要因で、妊娠満12週以降に、亡くなった状態で生まれました。
つまり、50人に1人が音羽さんのような経験をしています。
死産について、病院の担当者は──
遺伝カウンセラー 西川智子さん
「珍しいことではないんだと思いますね。産声をあげないこどもの出産をする。出血も伴いますしホルモンのバランスも変わります」
心と体の痛みや負担がほぼ同時におこる死産。亡くなった赤ちゃんと過ごせる時間は、長くても1週間程度だといいます。
遺伝カウンセラー 西川智子さん
「赤ちゃんのことをなかったことにしないということが非常に大事」
この病院では、家族の希望を聞き、限られた時間の中で思い出を残すケアが──
看護師 中山由香さん
「お風呂に一緒に入れてあげたいとか、赤ちゃんの手形足形を取ってあげるとか、折り紙を折ってあげる。そんなご家族もいらっしゃいます」
音羽さんも入院した病院で、赤ちゃんの手や足の形をとることができたといいます。
音羽さん
「(赤ちゃんの)手がすごく固まっていたので、手形をとるのはなかなか難しかった。足形はきれいに取れたかなと」
火葬までの2日間、生きて生まれた赤ちゃんと同じように、沐浴などもできました。
音羽さん
「あのときに(病院が)希望を叶えてくれたので後悔みたいなものはなくて、1つでもその希望が叶えられてなかったとしたら、悔いが残ったりっていうのはあったと思う」
死産や流産はけっして珍しいものではありません。
一人一人に寄り添うケアが求められています。