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【国際女性デー】食事だけでは…貧血は自覚しにくい、生理や子宮の病気と関係も

2024年3月8日 15:00
【国際女性デー】食事だけでは…貧血は自覚しにくい、生理や子宮の病気と関係も

女性によくみられる貧血。疲れや立ちくらみなどがみられることもありますが、実は貧血に特有の症状はあまりないんだそうです。貧血は生理や子宮の病気などと関係していることもあるので、そのうち治るだろうと放置するのは危険。東京大学医学部付属病院産婦人科 平池修医師に聞きました。

■貧血、どうやったらわかるの?

Q:そもそも女性は貧血になりやすい?

A:そうです。理由はいくつかあって、過度なダイエットや菜食主義などで、鉄分を含んだ食事をしていないとか、生理が毎月あるので血液を失う機会が男性より多いです。また妊娠出産の際には、胎児に鉄分を供給するため、貧血になりがちです。アスリートの食事制限などもあります。そして、そもそも血液中の鉄分や酸素を運ぶヘモグロビンの量が女性の方が男性よりも少ないんです。

■食生活の変化も影響

A:鉄分を多く含む食物としては、何が思い浮かびます?

Q:レバーですかね。

A:食べます? レバー。

Q:いえ、あまり食べないです。

A:ですよね。レバー、ひじき、海藻など以前はよく食べていたが、生活が欧米化して油っぽいものが増えるなど食生活も大きく変わりました。厚生労働省の調査で、食事でどれほど鉄分を取っているか推計値でみると、1975年は14ミリグラム、今は7ミリ前後と言われています。食事を見直すのは、貧血改善策のひとつにはなるので、ひじきをおいしく食べるレシピとかあってもいい。朝食を抜くのは、それだけ鉄分を体に取り入れる機会を失っている。

Q:サプリはどうでしょう?

A:サプリで補充するといっても、鉄だけをとればいいのではない。食事に代わる万能なサプリはないです。栄養バランスよく、広く色々なものを食べるのがいいとは言えますね。とはいえ、実は1日20ミリの鉄分を口から摂取しても、体に吸収されるのは1ミリとかなんです。食事でがんばってとろうとしても吸収されないのが問題です。

Q:そうなんですか? ではどうすれば?

A:貧血かどうか知るには、健康診断で血液中の鉄分を測ることです。実は、貧血は自覚しにくいんです。症状として言われるのは、疲れる、集中できない、歩いていて急にふらふらするなどですが、たとえば「めまいがして倒れそうになる」という症状があると答えたのは、貧血の人のうち15%。こうした症状は、ちょっと疲れた時にもありそうなものですよね。症状から貧血を自覚するのは難しいんです。

Q:めまいがあるような人はもう重い貧血なんでしょうか?

A:ずっと貧血だとこれらの症状がひんぱんにあって、順応してしまうことがあってわかりにくいです。医師が「めまいなどがありましたか」と聞くと、「よくわからない」という人が多いんです。一方、血液検査の数値で見ると貧血かどうかはっきりわかるので、会社員などは年1度の健診をうけて、それで貧血だとわかったら、病院に行くといいでしょう。もうひとつ鉄分についてとてもわかりやすい指標は、採血データのうち、フェリチンの量ですが、通常の検査ではあまり調べません。

妊娠したい女性は「プレコンセプションケア」といって妊娠前に異常がないかどうかを調べようという動きがあります。その一環で、生理の状態や貧血などを自ら把握するのは「たしなみ」のひとつかなと思います。

■婦人科・・内診は必須ではない

Q:とはいえ、産婦人科を受診するのはハードルが高い。何かあっても「そのうちなんとかなるだろう」と思ってしまいます。受診しにくいと感じている人にむけて、「貧血をきっかけに受診したら、気がみつかることがある」と言うと、受診する気になるかなとも思いますが。

A:貧血の背景には子宮筋腫など、いろいろな病気が隠れている可能性があります。「そのうちなんとかなるだろう」と思っても、なんともならないです。体のどこかが異常だから数値が下がっているわけなので、受診をおすすめします。内診は必須ではありません。

Q:放置すると子宮筋腫は大きくなる?

A:基本的に、ほうっておくと筋腫は徐々に大きくなります。小さいうちはとるのも可能ですが、大きくなると手術も大変で、妊娠もしづらくなります。初めて意を決して病院に行ってみたら「とても大きい筋腫があります。今後妊娠できません」となったら悲しいですよね。

私のところに来られる方は「できあがった貧血」の人。生理の際、出血が多いなと思っても、それぐらいでは受診しないんですよね。出血が多いままがずっと続いて、貧血ができあがってからやっと受診する例が多い。こうなってからだと鉄剤を服用する治療です。

貧血がきっかけで病気が見つかることもあるので、健康診断で貧血だと言われた女性はちゃんと婦人科にかかるべきです。そして生理の痛みがないか、量が多いかを把握するのも、自分を守るための礎(いしずえ)だと思います。

Q:貧血は生理との関係が欠かせない?

A:そうです。生理痛がつらいとか量が多いと思う女性は受診してほしい…と言っても、生理の経血量は数字で表せないし、量が多いのか判断が難しいですよね。女性同士でも、人に聞いたり、比べたりしないから、知るすべがない。生理の(経血)量の正常値は、1回に60から140ミリリットルで、それを超えると「多い」(過多月経)と言われます。しかし、過去の研究データでも様々な数値があって難しい。

■生理の量が多いのかわからず、貧血が進んでしまう

Q:つまり生理が重くても、自分ではよくわからず、気がつかないうちに貧血が進行することも?

A:そうです。病院に来られるのはそういう方ばかりです。やっと病院に来てみたら、血液中のヘモグロビンの量がえらい低いですね、と。生理の量や痛みは人と比較ができない。可視化できない。そして生理が正常にあることは健康において大切なものなんですが、「うっとうしいもの」と感じ、正常かどうかむきあっていない人が多い。今後、ウエアラブル端末のような機器で判断できるようになるといいでしょう。生理ナプキンにどれほど血液がついたら多いのか、AIが判断するとか。新規機器などの開発が待たれます。

とにかく重要なのは、貧血というのは特定の症状がないので、健診結果や生理をきっかけに自分の状態を把握して、受診した方がいいです。貧血改善のために自分だけでできることは限られますので、婦人科に行ってみることをおすすめします。

■自分の体は自分で守る、セルフケアの重要性

アプリなども使って、生理周期や量などを把握することも重要です。医師からのメッセージとしてはセルフケアの重要性を強調したいということでした。何が原因で貧血になるかが大事で、放置せず、見過ごさず、受診や相談をすることが大切です。