教員の待遇見直しどうなる? 文科省と財務省対立【#きっかけ解説】
いま、教員の長時間勤務が問題となっています背景には近年増えるいじめ問題、部活動や保護者の対応など学校現場の負担が増え続けている現状があります。
その一方、実は公立学校の先生たちの給与形態は一律で決まっています。いくら働いても残業代がでない仕組みになっていて、長時間勤務のほか、教員の成り手不足も深刻化させているんです。
──長時間勤務になってしまっているのに、残業代が出ないというのは問題ですね
はい。公立学校の教員の給与というのは基本給に給与の4%分の額、教職調整額と呼ばれるものを一律に上乗せする代わりに残業代を出さないということが法律で決まっているんです。
この4%という上乗せ分は、残業時間8時間相当にあたるのですが、これは50年以上前にこの法律が制定された当時に決まったものなんです。
ただ、2022年度の調査によりますと、全国の教員の時間外勤務の平均は小学校で月41時間、中学校で月58時間と、現代の教員の残業時間と見合っていないのが実情です。
こうした問題を受け、今回半世紀ぶりに給与改善をしようという動きになったんですが、その方法をめぐり文科省と財務省が対立しているです。
それぞれどのような改善案を示しているんでしょうか。
まず文科省案では給与に上乗せする教職調整額を現在の4%から2026年度以降一気に13%に引き上げることを提案しています。
(文部科学省などの試算による)例えば、基本給が30万円の教員の場合、調整額を4%から13%に上げると、上乗せ分は現在の1万2千円から3万9千円に増額されることになります。
──目に見える形でお金を増やすということなんですね
ただ、長時間勤務の現状は変わらないので文科省は、全国で教員の配置をおよそ7600人増やし、教師1人にかかる負担軽減を目指したいとしているんです。
また、13%に引き上げるには国の負担が年間1080億円ほどになると試算されています
──財務省案はどういったものでしょうか?
一方、財務省は、国が設定する残業時間の目標値を全国の教員の残業時間の平均が下回れば、その都度、翌年度の調整額を上げたい考えで、現在の4%から段階的に10%まで引き上げることを提案しています。
つまり財務省はまず残業時間を減らすことを条件にしていて、そのリターンとして調整額、給与を増やすという働き方改革 ありきの案を示しているんです。
具体的には、国が設定する残業時間の目標値を全国の教員の残業時間の平均が下回れば、その都度、翌年度の調整額を上げたい考えで、現在の4%から段階的に10%まで引き上げることを提案しています。
──狙いはどこにあるんでしょうか?
財務省は勤務時間の管理の徹底や、教員が担わなくてもいい業務を減らすことなどにつなげ、数年かけて残業時間を平均で月20時間に減らしたい考えです。
ただこの財務省案に対し、阿部文科相はこう言っています。
教員や外部人員を確保せずに現場の努力だけで業務を減そうとするのは「乱暴な議論だ」などと批判しているんですね。
──学校など現場からは実際にどういった意見が出ているのでしょうか?
現役の先生に話を聞いてきました。
岐阜県の現役高校教師西村 祐二さん
「まず求めるのはお金よりも働き方改革」
「文科省が出している案については、残業が今後確実に減っていくという確信がなにも 持てない」
「その中で『ちょっと給与を増やすよ』ということをいきなり言われて、これは『給与を増やすからこれまで通り働いてくださいね』という受け止めとなってしまう」
──このニュースを通じて、島津記者が一番伝えたいことは何でしょうか?
この年末には予算編成があります。このあとどういったカタチで見直しがされるか教員の待遇の方向性を決める、今後の教育の行方を左右する大きなターニングポイントだと思うので、現場の教員が納得する結論にしてほしいです。
──こどもたちの将来を育てる教員の待遇がどう見直されるか、注視していきたいですね。