【密着】町の安全を守る「千葉駅前交番」 “酔っ払い”“万引き”“行方不明者届”男性の保護などに対処『every.特集』
■様々な相談ごとが飛び込んでくる交番
JR総武本線・千葉駅。多くの人が利用するこの駅前で、町の安全を守る「千葉駅前交番」、通称「フクロウ交番」。ここには日々、様々な相談ごとが飛び込んでくる。
男性
「すみません。自転車が盗まれちゃったみたいで」
男性
「あの、落とし物しちゃって。財布なんですけど」
交番の主な業務は「道案内」や「落とし物」の処理、そして「交通事故」や「トラブル」の対処など。中には、こんな相談も…。
午後5時すぎ。
母親
「すみません、迷子になりました」
県南部から車できたという親子は、1時間ほど前から迷子なっているという。
警察官
「目的地は、どちらなんですか?」
娘
「パーキング」
母親
「パーキングなんですけど、なんて名前か分からなくて」
警察官
「(車をとめた)駐車場の場所が分からなくなった?」
母親
「そう」
娘
「ずっと歩いているんだけど、疲れちゃいました」
午後9時すぎ。警察官が近くの駐車場を教えると、親子はようやく車をとめた駐車場を見つけた。
午前0時40分。さらに、こんな訴えも…。
男性
「そこのね、所にね、スッポンポンの酔っ払いがいるの」
警察官
「スッポンポン?」
男性
「うん、スッポンポン、下だけ」
警察官
「何歳くらい?、おじさん?」
男性
「いや、まだ若い。二十歳くらいの酔っ払いで」
すぐさま、警察官が出動。裸になっていた男性を友人に保護させ、連れて帰らせた。
交番は昼夜問わず、様々な対応に追われている。午後7時前、電話が鳴る。
警察官
「はい、千葉駅前交番です」
駅前交番に「雑貨店」から通報が入った。
警察官
「万引き(犯)を捕まえたってことですね。(少女)2人?(少女)2人でやったってことですね」
「雑貨店」で「万引き事件」が発生した。10代の少女2人が犯行に及んだという。少女たちが万引きした商品は化粧品2点、被害額は合計で3740円だった。万引きをしたことについて、少女は…。
少女
「なんか、いったんお財布を見たの。で、ない(お金が足りない)から、みたいな」
警察官
「お金が足りないのは、分かっていたんでしょ?それでも欲しかったの?」
少女
「うん」
この日、中学生の時の友だちと遊んでいたという少女。化粧品が欲しくなり、金が足りなかったから万引きをしたという。その後少女たちは、親に連絡をとり電子マネーを送ってもらい、商品を買い取った。店は少女たちを罪に問うことはなかった。
警察官は交番で、少女たちを親に引き渡すことにした。連絡を受けた母親が交番に到着した。
母親
「本当にバカ。ふざけんなよオマエ。本当にはずかしい」
警察官
「簡単に事情を説明すると、そこの○○の○○(雑貨店)で、化粧品を2点(万引きした)」
母親
「何を笑っているの」
母親は、反省した様子を見せない娘をとがめた。
母親
「お金を持っているよね」
少女
「いや」
警察官
「ギリギリ足りなかったです」
母親
「じゃあ、買うのをあきらめて、次の日に買いに行けばいいでしょう」
万引きは20歳以上の場合、10年以下の懲役、または、50万円以下の罰金が科せられることもある。しかし、この日は…。
警察官
「今回は、事件になっていませんので、今後ないように、指導をお願いします」
警察官は同じ事を繰り返さぬよう、親に指導を依頼し、少女らを家に帰した。
別の日の午後11時半。
警察官
「どうしました?」
男性
「財布を盗まれたみたいなんです」
被害を訴えてきたのは、60代の男性。男性からはアルコールの臭いがし、かなり酒に酔っている様子だった。友だちとレストランで食事をした後、何者かに「財布」を盗まれたという。
男性
「コレ(ジャケット)だけ出てきたんですよ」
警察官
「どこからですか?」
男性
「あの~(店の)近くの植木から」
男性は店を出たあとで、「財布」と「ジャケット」がないことに気付いた。その後、友だちが店の近くの植え込みに、「ジャケット」だけが捨てられているのを発見したという。しかし、その話は矛盾だらけだった。
警察官
「財布はどこに入れていたんですか?ジャケットの」
男性
「ジャケットには入れてないです」
警察官
「ん!?」
男性
「ジャケットには(財布を)入れたという記憶はないです」
警察官
「(店ではジャケットを)座席にかけていたわけですよね」
男性
「支払いの時は、ジャケットは手元に持っていたと思います」
最初は「植え込みに捨てられていた」と言っていた「ジャケット」は、いつの間にか「手元に持っていた」と話がかわっていた。
警察官
「ジャケットは、持って(店から)出たわけですよね、じゃあ」
男性
「持って出たっていうことですね」
警察官
「じゃあ、(ジャケットから財布を)誰かがとらないですよ」
男性
「はい」
警察官
「だいぶ、酔っています?」
男性
「酔っています」
警察官は、男性と一緒に荷物を確認した。すると…。
警察官
「コレは?」
警察官
「コレは?お財布入っているじゃん」
男性
「あ!!」
「あったですね」
リュックサックの奥に「財布」はあった。「財布」は盗まれていなかった。
男性
「申し訳ございません」
男性は夕方の5時から、4時間以上酒を飲んでいたという。結局、「財布」は男性がリュックサックに自分でしまい込んでいた。酔った男性が交番に来てから30分、警察官は根気強く付き合った。とんだ、お騒がせおじさんだった。
繁華街にある「駅前交番」。夜がふけると、そこには様々な通報が飛び込んでくる。
終電が終わった午前1時。家出人の捜索を終え、交番に戻ろうとしていた時、駅前で泥酔者が寝ていると、警察本部から情報が入った。
警察官
「こんばんは、お兄さん起きて」
改札前の通路で寝ている男性を発見した。
警察官
「お兄さん起きて、起きて」
すると…。
警察官
「起きた」
突然、目を覚ました。男性はかなり酒に酔っていた。都内に暮らしているという、20代の大学生。この日、友だちと酒を飲み、気がついたら通路で寝ていたという。
警察官
「どうやって帰るの?今日」
男性
「千葉で泊まります」
警察官
「お金持っている?」
男性
「はい」
警察官
「財布をちょっと見せて」
警察官は所持金の確認を要請した。男性はホテルで宿泊できるほどの金を持っていた。
男性
「マン喫(漫画喫茶)行きます」
警察官
「漫画喫茶に行く?」
「漫画喫茶に行く」。そう言うと、男性は「千円札」を取り出し、警察官に渡そうとした。
警察官
「なんで千円だした?漫画喫茶に行って、お金を払おう」
警察官を「漫画喫茶」の店員と勘違いしていた。男性は、足元がおぼつかないほど酔っ払っていた。ひとりで行かせるのは危険と判断した警察官は、「漫画喫茶」まで付き添うことにした。すると男性が…。
男性
「いや、もう飲まないです」
日々、多くの酔っ払いに接している警察官によれば、これは酔っ払いがよく口にする言葉。しかし、なぜか多くの人が同じ事を繰り返すという。「酒は飲んでも飲まれるな」。
別の日の、午前0時すぎ。
警察官
「ん!? ちょっと待って、待って。○○(スナック)って言っているよ、ちょっと待って、待ってコレ」
警察本部から情報が入った。
警察署
「中央(警察署)から駅前(交番)」
警察官
「無線を傍受しました。(スナック)の所在地は分かりますか? どうぞ」
隣の駅にあるスナックで、刃物を持った男性が騒いでいるとの情報が入った。情報では、その男性はこれから命をたつと、自ら通報したという。現場では多くの警察官が駆けつけ、店を出た男性を取り囲んでいた。
警察官
「名前を教えてよ、○○(名字)何さんっていうの?」
男性
「だから○○(名字)、○○(名字)」
警察官
「いや、下の名前○○(名字)○○(名字)じゃあないでしょうよ。下の名前教えてよ」
男性
「なんで~♪」
男性(50代)はひどく酔っていた。何度名前を尋ねても、答えようとしなかった。警察官によると、男性は前にも同じようなトラブルを起こしているという。
警察官
「今日は、危ないモノは持っていないんでしょう?」
男性
「隠し持っているかもしれないよ」
警察官
「持っているの?」
男性
「フフッ」
男性は以前も刃物を所持していると、自ら通報。その時、家の中も確認したが、危険なモノは見つからなかったという。そして、この日は…。
警察官
「とりあえず、大麻を持っているとか、訳が分からないことを聞いているから、全部見せて」
警察官
「じゃあ、立って」
男性は大麻を所持していると話していた。しかし、所持品からは大麻のようなモノは見つからなかった。
警察官
「保護しよう、保護しよう」
警察官は男性をひとまず警察署で保護することにした。すると突然、激しく抵抗をはじめた。
警察官
「酔っ払っているんでしょう。名前も分からないし、住所も分からないんでしょう」
男性
「全然、酔っ払ってないよ」
警察官
「分かった。危ない、危ない」
男性
「え!何?、え!何?」
警察官
「少し(警察署で)休んでいこう」
男性
「違う、違う、違う、違う、違う。違う、違う、違う。待って、待って、待って、待って」
男性は、警察署に行くことを拒んだ。
男性
「住所を言えばいいの?」
警察官
「はい乗って、はい乗って、終わりだよ」
警察官
「もう終わり」
警察官
「はい、乗って、乗って、乗って、ほら」
警察官
「コラ、暴れない。力入れない、力入れない」
警察官
「足」
警察官
「足、足」
警察官
「おい!」
警察官
「けるんじゃあない」
男性
「乗っているから」
男性はしぶしぶ保護に応じた。その後、通報した内容はすべてウソだとわかった。男性は酒に酔うとウソの通報をする常習者、「困った酔っ払い」だった。
別の日の午後8時半。
「ピロピロ」
警察官
「お、きた!」
駅前交番に警察本部から連絡が入った。
警察官
「千葉駅周辺に」
警察官
「70歳の人ですね」
「行方不明者」が所持している携帯電話の位置情報が、千葉駅周辺で確認されたとの通報が入った。「行方不明者届」が出ているのは、70代の男性。突然、介護施設を飛び出し、行方が分からなくなったという。駅前を捜索していた、その時…。
警察官
「似ているな」
行方不明者の写真に似た高齢の男性を発見した。警察官が声をかけた。
警察官
「こんにちは」
男性
「こんにちは」
警察官
「旦那さん、お名前なんとおっしゃる?」
男性
「僕の名前は、○○○○」
警察官
「○○さん?」
男性
「うん」
「行方不明者届」が出ている男性だった。
警察官
「生活安全課捜索中、○○○○さん、発見しました」
男性は市内にある介護施設で暮らしていた。この日、そこから抜けだし、「行方不明者届」が出されていた。
警察官
「なんで今日(施設を)抜けだしちゃったの?」
男性
「イヤなのオレ。自分で結論を出して、もう、もういいやっと思って。み~んなさ、み~んな、ウソだらけじゃあないかよ」
男性は施設の職員とささいなことで口論になり、我慢できず、黙って出てきたという。
警察官
「あなたが勝手に出て行っちゃうことによってね、心配する人もいっぱいいるわけだよ。心配かけちゃあ、ダメでしょう」
男性
「いいよ」
警察官
「ダメだよ」
男性
「じゃあ、あれかい。オレのことは死ねってこと?」
警察官
「ん?」
男性
「オレは死んでもいいってことか?」
警察官
「死んじゃあダメだから、私たち捜しにきたの」
男性
「イヤなんだよ」
男性は施設でイヤなことがあると、その度に黙って飛び出すことを繰り返していた。
警察署から担当の警察官が到着した。
警察官
「ご自宅(施設)に帰りましょうね」
男性
「イヤだよ」
警察官
「帰りましょう」
男性
「帰っても、また同じことになるよ」
ささいなことで、度々飛び出してしまうという男性。帰りたいという気持ちはあるものの、なかなか素直になれないようだった。
警察官
「涼しい所に行こう、とりあえず」
警察官
「いったん、涼しい所に行こう」
警察官
「車(パトカー)の中、クーラーがきいていますから」
男性
「いいよ、いいよ。クーラーなんかいいよ」
警察官
「いったん、涼しい所に行きましょうよ」
こうした事態を見逃せば、事件や事故につながる恐れがある。警察官は、男性の気持ちの整理がつくまで、警察署で保護することにした。
町のトラブルに対処する「駅前交番」。そこは、昼夜問わず、いろんな人が訪れる「人の交差点」。
(12月10日『news every.』より)