埼玉県独自の“エスカレーター条例”その効果は?
■“エスカレーターの日”に呼びかけ
「エスカレーターは立ち止まってご利用ください!」8日朝、浦和駅の改札前で通勤客に呼びかけていたのは、埼玉県の大野知事。
実は3月8日は、1914年に日本初のエスカレーターが設置され“エスカレーターの日”とされているのです。
埼玉県は、去年10月からエスカレーターの利用者に立ち止まって乗ることを求める条例を施行していて、8日の“エスカレーターの日”にあわせてキャンペーンが行われました。
■条例施行も、罰則はなし
この条例は去年3月、全国で初めて成立したもの。エスカレーターを使う場合、両側で、立ち止まって利用しなければならないとする条例なのですが、罰則はありません。
大野知事「エスカレーターを歩いて利用したからといって、いきなり罰金を科すのはいかがなものかという意見があるのも事実」
知事は罰則の難しさを認めています。つまりこの条例は、1人1人のモラルに頼るものなのです。
■「危険な思いをした」との声で条例成立
エスカレーターを歩くことはなぜダメなのでしょうか?知事は手の不自由な人や高齢者は手すり部分につかまるのが難しい場合があると強調。歩いたり走ったりする人がぶつかると大ケガにつながるおそれがあるといいます。
大きな事故の報告はありませんが、実際に危険な思いをしたという声が、多数寄せられたことが条例成立のきっかけとなりました。
■条例の効果は?
この条例ができてから変化はあるのでしょうか?筑波大学生活支援学研究室の徳田克己教授は、歩きスマホや障害者支援などが専門で、エスカレーター条例の効果を独自に研究しています。
教授は大宮駅と越谷レイクタウン駅で、条例施行前後のエスカレーター利用者の調査を行っていて、その結果、調査したすべてのエスカレーターで歩く人の数が減少していたといいます。
例えば、大宮駅の東武線からJRへの乗り換えの上りエスカレーター。条例施行前の去年9月17日は通勤時間帯の午前7時半から8時半の間で実に60.2パーセントの人が歩いていました。これが施行後の今年1月14日には38.1パーセントに。
大宮駅の西口エスカレーターの同時刻では去年9月17日は14.9パーセントだったのが、今年1月14日は10.1パーセントに減っています。
大規模ショッピングモールがある越谷レイクタウン駅のエスカレーターでは、去年9月26日の午前10時から11時の利用者は24.5パーセントが歩いていて、10月10日は17.2パーセントに減少。
徳田教授「条例の効果は明確で、内容が県民に浸透してきた可能性がある」
教授はこう分析すると同時に、エスカレーターの両側で人が立ち止まっていたり、直前で階段に切り替えたりする人の姿はいままで見られなかったと変化を実感していました。
ただ、「歩く人がいなくなることはもちろんないと思う」とも。
■県はさらなる周知へ
記者も浦和駅を利用していますが、最近も10人に1人ほどが歩いているという印象。
条例が成立してからも、「エスカレーターでぶつかった」などと危険を訴える声が県に届いているのも事実だといいます。
大野知事「若い方も、立ち止まらないと将来危険な思いをすることが誰でもあり得る。他の人にも危険な思いをさせないで」
知事は、この新たなモラルを県外にも広げていきたいとしています。