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【NNNドキュメント】原発事故で奪われた故郷… 大熊町に戻った女性 亡き祖母とこれからへの思い 東日本大震災13年~生きる支え~ NNNセレクション

2024年3月9日 15:59
【NNNドキュメント】原発事故で奪われた故郷… 大熊町に戻った女性 亡き祖母とこれからへの思い 東日本大震災13年~生きる支え~ NNNセレクション
東日本大震災から13年。当時の子どもたちも成人し、それぞれの道を歩んでいる。原発事故で町の半分が住めなくなった故郷に戻り、ここで生きていくと決めた27歳の女性。震災で何を失い、何に光を見出したのか。そして、今の「生きる支え」は。

絶望の淵に立たされたあの日から13年。当時、子どもだった私が心に刻んだ“生きる支え”。

福島県大熊町出身の小泉良空(みく)さん、27歳。

良空さん
「“13年前に福島が大変だったんだな”で終わらせることなく、自分自身はどうするのかという目線で、ぜひ考えるきっかけのひとつになればいいなと思っています」

あの時の体験を語り継いでいます。

原発事故が起きたのは、中学2年生のときでした。

良空さん
「避難の途中で、車のラジオから水素爆発の情報が流れてきました。テレビも見られる状況じゃなかったので、何が起こっているかはわからない状態で、数日間を過ごしています」

良空さん家族は、新潟県、神奈川県、喜多方市などを転々とし暮らしてきました。“普通に暮らす”という日常を奪われ、ある不安が押し寄せます。

良空さん
「家の前にバリケードが設置されたりとか、区域編成があって、自宅が帰還困難区域というものになったりとか。『(大熊町に)帰れるようになるまで30~40年かかるらしい』といううわさが流れ始めたときくらいに、じわじわと自分の中にあった期待というか望みが、時間とともに、周りからの声とともに減少していって」

暗闇に浮かぶのは福島第一原発。ここは13年前、原発事故が起きた町。いまも町の面積の半分は避難指示が続き、9割以上の住民が戻れていません。

良空さん
「夜は特にわかりやすいですよね、電気がつくかつかないかはっきりするので」

家族は避難を続けるなか良空さんは1人、故郷の大熊町のアパートに引っ越しました。

良空さん
「自分だけでも早く帰りたい気持ちのほうが強かったので」

大学卒業後、良空さんは福島県内のハウスメーカーに就職しましたが、この地域に戻ってきたきっかけがありました。

良空さん
「取引先の方と出身地の話になったときに、『大熊町って、もうないんじゃないの?』みたいなことを言われたとき、すごくショックだったというか悲しかったんですけど。ゆくゆく時間が経つと、言い返せない自分がすごく恥ずかしかったりとか、やっぱり地元に戻って伝える側になりたいなと思ったのも、きっかけのひとつ」

福島第一原発から7キロほどの大熊町の実家。生まれてから過ごしてきた母屋は、除染を理由に5年前に解体されました。

良空さん
「悲しかったし、悔しかったし、私としては見たくない現実なので。父からの『解体始まったよ』『解体中だよ』みたいな連絡も一切見ず」

ここでの思い出は、13年前から止まったまま。

家族でいちばん寄り添ってくれた祖母の栄子さんは、避難先で亡くなりました。

良空さん
「おばあちゃんも亡くなってしまって、(家族全員で帰還を)かなえることができなくて正直悔しい」

2023年1月。隣の双葉町に12年ぶりに戻ってきた「ダルマ市」。伝統の太鼓を良空さんが叩きます。

私は、戻ってきた。

おばあちゃんの友人が、良空さんに気づいて話しかけてくれました。

良空さん
「去年、祖母が亡くなってしまって。祖母のお友達ということで、祖母との思い出の話を聞いて。祖母が双葉町の出身なので、この場所で育ってくれたんだなって思い出話を聞いて、うるっときてしまいました」

いまだ原発事故で復興が遅れる故郷。でも、進展もありました。待ち合わせていたのは、祖父の政一さん(88)。

政一さん
「スイッチ入れてみろ」

良空さん
「あ、ついた」

13年ぶりに灯った明かり。止まった時間が動き始めました。家の建て替えも考え、再びここで思い出をつくる。

それが、私の“生きる支え”。

良空さん
「戻ってくるまですごく不安が大きかったりとか、(帰還は)自分にできないというフィルターをかけてしまっていた時期があったので、でも(大熊町に)戻りたいという気持ちを第一に大切にしながらここまでこられたと思うので」

あの日から13年。それでも“生きる支え”はきっと見つかる。

今、悲しみに打ちひしがれる、あなたも…。

2024年3月11日放送 NNNドキュメント’24『3・11大震災シリーズ(105) 東日本大震災13年 生きる支え 私のこれまでとこれから』をダイジェスト版にしました。
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