処理水放出から1年 「福島の漁業を絶対残していく」漁業関係者の思い
福島第一原発の処理水の放出が始まって24日で丸1年です。「news every.」の森圭介キャスターが、福島県相馬市の港町、松川浦で、福島の漁業のいまと漁業関係者の思いを取材しました。
◇
23日午前7時。
森圭介キャスター(福島・相馬市、23日午前7時ごろ)
「港に続々と船が戻ってきていますよ」
早朝から活気づいていたのは、福島県相馬市の松川浦漁港です。「常磐もの」と呼ばれる福島県でとれた海産物が次々と水揚げされていきます。
港に戻った漁船の1つ福進丸の船長、石橋正裕さん(45)に話を聞きました。東日本大震災の後、全国へ福島の魚をPRするイベントを企画するなど、復興に力を入れてきました。
――自身でPRをやりたいと思ったきっかけは?
相馬市の漁師 石橋正裕さん(45)
「震災をきっかけに、漁業者が消費者に直接伝えることで、おいしい魚を伝えられるんじゃないかなと」
それでも、県内の沿岸漁業の水揚げ量は現在、震災前の4分の1ほど。まだ道半ばの福島の漁業ですが、去年、大きな出来事がありました。
福島第一原発に保管されている処理水の放出です。廃炉を進めるため、去年8月、海への放出が始まり、現在、8回目の放出が続けられています。
――24日で処理水の放出から1年、どのような時間でした?
石橋正裕さん(45)
「処理水放出前も放出後も基本的に変わらない。目の前の操業を一生懸命やることしか自分たちにはできない」
震災や原発事故を乗り越え、処理水の問題とも向き合いながら前に進む福島の漁業。
石橋正裕さん(45)
「若い漁業者も巻き込みながら後世につなげていく。福島の漁業だけは絶対、永代残していく」
漁港近くの食堂では、刺し身やカレイの煮付けなど、「常磐もの」を求めて県内外から多くの観光客が訪れていました。
――相馬の海産物はいいですか?
山形からきた観光客
「すごくねおいしい」
――常磐ものの魅力は?
山形からきた観光客
「来て食べてもらわないとね。口ではなかなか言えないから」
福島県内からきた観光客
「おいしいですよ。先ほどのお客さんが言った通り」
――「食べて応援」、そういった声は聞かれる?
お食事処たこ八 小野芳征会長
「処理水で福島困っているのかなと、『応援しに食べに来た』という声も結構ありました」
――そういう声を聞くとどのような気持ちに?
お食事処たこ八 小野芳征会長
「本当にうれしかったです」
◇
未来に向け明るい兆しも出てきています。
去年の春、東京から単身で福島に移り住んだ漁師の原瑛貴さん、17歳。震災後、父親と福島県内でボランティアをした際に、地元の漁師に釣りを教わったのがきっかけで、小学6年生の時、漁師を志したといいます。
昨年度、沿岸漁業に新たに就業した人が統計開始以来、最も多い26人となった福島県。そのうち39歳以下が8割以上と若手漁師の増加に期待が高まっています。
新人漁師 原瑛貴さん(17)
「福島県でやりたい気持ちが強くて、この船でいろいろ覚えて(魚を)いっぱいとれる漁師になりたい」
◇
森圭介キャスター
「福島の漁業は震災前の規模にはまだ戻っていません。処理水放出や廃炉までにはまだまだ長い時間がかかります」
「ただ、話を聞いた漁師の皆さんは一歩一歩できることをして前に進みたいと力強く話していましたし、厳しい現実を前にしても相馬、松川浦の海に魅せられた若い人たちの姿に希望を感じました。次の世代につながっていると力強く感じました」
「そして、改めて私たちも処理水放出、廃炉までの道を伝え続けていこうと感じました」