【解説】インフルエンザ 今年の冬は要警戒 入国規制の解除・免疫低下 オーストラリアで大流行の兆し…日本は?
新型コロナウイルスの感染拡大以降、めっきり減っているのが季節性インフルエンザの流行ですが、今、冬を迎えているオーストラリアでインフルエンザ患者が急増しています。
「オーストラリアでインフルエンザ大流行の兆し…なぜ?」
「今後、日本でも流行はあるのか?」
「インフルの“免疫”低下」
以上の3つのポイントについて詳しく解説します。
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オーストラリア保健省によると、新型コロナ感染拡大前のインフルエンザ感染者数の平均は、オーストラリアの冬にあたる8月ごろをピークに患者数が増えていましたが、去年は全く流行がありませんでした。
しかし今年は、4月の終わりごろからグラフの線が垂直に上がっており、現在、急激な患者数の増加が報告されています。今年の冬に、日本でもインフルエンザが大流行するのか気になります。
日本がある北半球と、オーストラリアがある南半球は、季節が逆で、日本が夏の時期にオーストラリアは冬を迎えています。インフルエンザは冬の時期に流行するため、これからのシーズンに、オーストラリアでどれくらいインフルエンザが流行するかが、その後、冬を迎える日本での流行を予測する上で参考になると言われています。
実際、北半球で使用されるインフルエンザワクチンは、南半球の流行状況なども参考にしてワクチン型が決められるといいます。今年はオーストラリアで患者が急増しているということなので、日本でも同じように流行するのでしょうか。
私たちは2年以上新型コロナに向き合ってきましたが、これまでの日本におけるインフルエンザ流行の状況について確認します。
厚生労働省のホームページによると、新型コロナの感染拡大前、インフルエンザは冬に感染のピークを迎えてきました。新型コロナが流行し始めた2020年のピークは前年の3分の1以下になり、去年と今年は、グラフでは見えないくらい感染者数が激減しています。つまり過去3回のシーズンでは、大きな流行はみられませんでした。
インフルエンザの流行が抑えられたのは、新型コロナ対策のおかげなのでしょうか。感染症が専門でグローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝医師は、次の2つの点を指摘しています。
1.マスク着用や手洗い、手指消毒など新型コロナの基本的な感染対策を行っていることが功を奏しているということ。また、国内では、テレワークの実施や飲食・イベントが制限されたことで、人との接触機会が減ったこと。
2.海外との人の行き来が激減したことで、海外から持ち込まれるウイルスが減ったということ。
一方、このような状況は世界でも同じはずで、なぜオーストラリアで今、インフルエンザ患者が増加しているのでしょうか。
オーストラリアでは新型コロナ対策が緩和され、すでに病院などを除き、屋内でもマスク着用義務がなくなっています。さらに、今年2月には、海外からの入国規制も全面的に解除されていて、人の移動が非常に活発になってきていることも考えられます。
また、新型コロナの感染拡大以降、約3年間にわたりインフルエンザの感染者が減っていたということで、インフルエンザの免疫が低下した人が増加したことなどが感染拡大の加速要因になっているとみられています。
日本は大丈夫なのでしょうか。
今月から日本でも水際対策が緩和され、1日あたりの入国者数の上限が1万人から2万人に引き上げられました。
団体ツアー客など限定ですが、10日から観光目的の受け入れも再開されました。先ほどの水野医師は、「海外から感染源となるウイルスが持ち込まれることは避けられないので、どれだけ感染の経路を断つか、つまり感染の拡大を封じ込められるかがポイント」だと話しています。
しかも、インフルエンザは、冬だけでなく夏にも流行することがあります。実際、2019年にはラグビーのワールドカップが日本で開催され、南半球など含め海外から多くの人が入国したこともあり、9月の時点で中学校の「学級閉鎖」が相次いだケースもありました。
今回も、水際対策が緩和され多くの外国人の入国が増えると、2019年時と同じようなことが起こり得るため、「冬まで安心」というわけでもなさそうです。
また、例年10月ごろにはインフルエンザの予防接種が始まりますが、特に重症化リスクが高いとされる「2歳未満の子供」、「65歳以上の高齢者」、「妊婦」、「基礎疾患がある人」などに対しては、ワクチン接種が推奨されます。
水野医師も、「今後、インフルエンザの感染拡大の兆しが見えてきたら、素早くアラートを出して、しっかりと対応できるよう、今のうちから医療体制を整えておく必要がある」と強調していました。
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現在、日本での新型コロナの感染はやや落ち着きつつありますが、また冬場にかけて再流行する可能性も指摘されています。今のうちに新型コロナとインフルエンザ、両方の流行も想定した体制を整えておくことも重要です。
(2022年6月10日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)