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子どもを性犯罪から守れ 日本版DBSとは? 塾は除外?

2023年8月24日 12:46

今月、元塾講師の男が、教え子の女子児童の下着を盗撮したなどの疑いで逮捕された。子どもたちをこうした事件から守るための対策を求める声が上がる中、政府は、子どもに関わる仕事に就く人については、性犯罪歴などがないことを確認する仕組み“日本版DBS”の導入に向けた検討を進めている。23日は、こども家庭庁で有識者会議が行われ、対象の職種をどうするかなどの議論があった。

■DBSとは?
日本版DBSのモデルとなるのは、イギリスのDisclosure and Barring Service(=前歴開示および前歴者就業制限機構)。イギリスの政府系機関が犯罪歴をデータベース上で管理し、子どもに関わる職業などに就く際に必要な書類を発行するものだ。性犯罪歴がある人を子どもがいる場所で働けなくすることで、子どもを性犯罪から守ることが期待されている。

■導入に向けた主な論点は?
大きな論点は二つ。一つ目は対象となる事業・職種の範囲である。こども家庭庁の有識者会議では、「対象をなるべく広げたい」という点では各委員の意見は一致しているという。また、学習塾などで構成される日本民間教育協議会なども、有識者会議のヒアリングに対し、DBSの導入に前向きな姿勢を示している。

しかし、義務化の対象について有識者会議では、この制度をなるべく早く始めるために、まずは公的な認可を受ける学校・保育園・児童養護施設などとし、民間事業者の分野、つまり学習塾やスイミングスクール、認可外保育園、学童保育などは義務化せず、認定制度とし、導入を希望する事業者にのみ、犯罪歴の照会を義務化することが現実的ではないかという意見が多かったという。一方で、それでは不十分だと強く反対する委員もいて、広く義務化することを徹底すべきとの意見も根強い。

二つ目の論点は、データベースに登録する性犯罪歴の範囲についてである。正確性を担保する観点から、性犯罪関連の法律に違反し、有罪となった人物についてはデータベースに載せることで委員の意見はまとまっている。

一方、そのほかの扱いでは、意見が分かれているという。具体的には、自治体の「条例」で取り締まっている「痴漢」や「売春」を対象とするかどうかだ。「条例」は自治体ごとに内容が異なるため、ばらつきのある状態で全国統一のデータベースに犯罪歴として載せるのは適切ではないという考え方がある。また、「懲戒免職」などの行政上の「懲戒処分」を含めるかという議論もある。

そして、仮に「有罪」が確定した人物のみをデータベースに載せるとなると、逮捕後、不起訴処分となった場合は載らないことになる。性犯罪の場合、実際には加害行為があったとしても、被害者側が大ごとになることを嫌って示談とし、その結果、加害者が不起訴処分となるケースも少なくない。

23日の有識者会議では、この不起訴処分をめぐって、不起訴にする際に「子どもに関する仕事には就かない」「データベースに登録・照会されて構わない」と誓約させた上で、一般社会に戻すということも、一つの更生のあり方ではないかとする意見も出たが、起訴されるかどうかのせめぎ合いの中で、加害者がこうした誓約に同意したとしても、本人の自発的な同意といえるのか、この人物をデータベースに載せてよいものか、など慎重な意見もあったという。

また、ほかの論点としては、未成年の加害者を載せるかどうかも、更生の観点とのバランスが難しいという。専門家会議では、対象を広げるべきという共通のスタンスがあるものの、「高度のプライバシーにかかわる情報が利用され、犯罪歴を有する者の社会復帰を妨げる恐れがある」「職業選択の自由をおかすことにもなりうる」という意見も出たという。

■「すべての仕事を対象に!」との声…7万人超え
現在、2017年からDBSの導入を訴えてきた認定NPO法人フローレンスが、子どもと関わるすべての仕事を日本版DBSの対象にすることを求めて、オンライン署名を実施している。今月10日の開始から約2週間で、7万2000筆を超える署名が集まっている(24日現在)。

フローレンスや子どもの支援にかかわる専門家らは、学習塾や習い事などをDBS対象の義務化からはずすと、学校などで働けない性犯罪者が「じゃあ、こちらに就職すればいいや」と流れてきてしまうと危機感を強めていて、「子どもを性被害から守るため、充実した制度を」という切実な声が高まっている。

■今後の見通しは?
有識者会議の意見は、来月5日の次回会議でとりまとめられる予定だ。これを受け、こども家庭庁は法案の策定を進め、早ければ秋の臨時国会にも提出をする見通しだ。

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