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性犯罪歴を管理する“日本版DBS” 痴漢は対象外、民間事業者は任意に?……議論のポイントは「犯罪の線引き」「職業の範囲」

2023年8月24日 10:40
性犯罪歴を管理する“日本版DBS” 痴漢は対象外、民間事業者は任意に?……議論のポイントは「犯罪の線引き」「職業の範囲」

性被害から子どもを守るため、政府が新たな仕組みを検討中です。性犯罪歴がある人をデータベース化して管理する「日本版DBS」。中身と課題を考えます。

■子どもがいる場所で働けなくする仕組み

有働由美子キャスター
「『日本版DBS』とはどういうものなのでしょうか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員長
「こども家庭庁が、性犯罪歴がある人をデータベース化・管理するものです。学校や保育所などが職員を採用する時などにこれを確認して、性犯罪歴がある人を、子どもがいる場所で働けなくします」

「性犯罪は再犯率が特に高いため、イギリスなどでは既に始まっていて、政府は日本でも導入しようと、秋の臨時国会に法案を提出する予定です。ただ、今議論されているポイントが大きく分けて2つあります」

■就職を禁じる性犯罪の線引きは?

小栗委員長
「1つは、就職を禁止する性犯罪の線引きはどこか。データベースに登録する対象となるのは、不同意性交罪など法律に違反するものに限定されそうです。痴漢や盗撮は自治体ごとに取り締まりにばらつきがあるため、対象にならないケースが考えられるといいます」

「ただ盗撮については今後、新たに作られた『撮影罪』が適用されればデータベースに載る見込みです」

有働キャスター
「それでも、痴漢は対象にならない可能性があるということですね」

■就職を禁止する職種の範囲は?

小栗委員長
「続いてポイントの2つ目は、就職を禁止する職業の範囲についてです。学校や保育所などは日本版DBSの導入を義務化される見込みですが、塾やスイミングスクール、ベビーシッターといった民間事業者については導入は任意になりそうです」

「つまり、事業者がデータベースを導入しなければ、性犯罪をしていても働くことができるかもしれません」

有働キャスター
「それで本当に子どもを守れるのか、ですよね」

■専門家らが議論「この形が現実的では」

小栗委員長
「専門家会議では『高度のプライバシーに関わる情報が利用される』など慎重な意見も出ています。23日の議論でも、義務化の対象は広げたいものの『まずはスピーディーに進めるため、この形を取るのが現実的では』という意見が多かったということです」

「子ども政策に詳しい日本大学の末冨芳(すえとみ・かおり)教授は『イギリスのDBSは、不起訴の場合でも通報歴でも引っかかる。もし日本で痴漢などの性犯罪が含まれないと、子どもの権利が守られるとはとても言えないと思う』と指摘しています」

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■辻さん「等しく義務化すべきでは」