性犯罪歴を管理する“日本版DBS” 痴漢は対象外、民間事業者は任意に?……議論のポイントは「犯罪の線引き」「職業の範囲」
性被害から子どもを守るため、政府が新たな仕組みを検討中です。性犯罪歴がある人をデータベース化して管理する「日本版DBS」。中身と課題を考えます。
有働由美子キャスター
「『日本版DBS』とはどういうものなのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「こども家庭庁が、性犯罪歴がある人をデータベース化・管理するものです。学校や保育所などが職員を採用する時などにこれを確認して、性犯罪歴がある人を、子どもがいる場所で働けなくします」
「性犯罪は再犯率が特に高いため、イギリスなどでは既に始まっていて、政府は日本でも導入しようと、秋の臨時国会に法案を提出する予定です。ただ、今議論されているポイントが大きく分けて2つあります」
小栗委員長
「1つは、就職を禁止する性犯罪の線引きはどこか。データベースに登録する対象となるのは、不同意性交罪など法律に違反するものに限定されそうです。痴漢や盗撮は自治体ごとに取り締まりにばらつきがあるため、対象にならないケースが考えられるといいます」
「ただ盗撮については今後、新たに作られた『撮影罪』が適用されればデータベースに載る見込みです」
有働キャスター
「それでも、痴漢は対象にならない可能性があるということですね」
小栗委員長
「続いてポイントの2つ目は、就職を禁止する職業の範囲についてです。学校や保育所などは日本版DBSの導入を義務化される見込みですが、塾やスイミングスクール、ベビーシッターといった民間事業者については導入は任意になりそうです」
「つまり、事業者がデータベースを導入しなければ、性犯罪をしていても働くことができるかもしれません」
有働キャスター
「それで本当に子どもを守れるのか、ですよね」
小栗委員長
「専門家会議では『高度のプライバシーに関わる情報が利用される』など慎重な意見も出ています。23日の議論でも、義務化の対象は広げたいものの『まずはスピーディーに進めるため、この形を取るのが現実的では』という意見が多かったということです」
「子ども政策に詳しい日本大学の末冨芳(すえとみ・かおり)教授は『イギリスのDBSは、不起訴の場合でも通報歴でも引っかかる。もし日本で痴漢などの性犯罪が含まれないと、子どもの権利が守られるとはとても言えないと思う』と指摘しています」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「性犯罪はただでさえ、長期にわたって尊厳を傷つけられるものです。さらに子どもだと、被害を受けたその時だけではなく、後々大人になってから意味を理解して、その時に2度傷つくこともあります。本当に許しがたい犯罪だと思います」
「実際これまでベビーシッターなどの性犯罪もあったわけですし、学校に限らず子どもに関わる業種では等しく義務化すべきだなと思います。とにかくグレーゾーンを作らず、性被害をゼロにすることが、何よりもまず大事ではないかなと思います」
有働キャスター
「性犯罪は『魂の殺人』とも呼ばれますが、そういう犯罪から子どもをどうやって守っていくのか。抜け穴のない、実効性の高い仕組みを作れるかどうか、大人側の本気が問われていると思います」
(8月23日『news zero』より)