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【解説】避難所での診察・医療の状況 今後の避難生活の注意点

2024年1月16日 21:17
【解説】避難所での診察・医療の状況 今後の避難生活の注意点
能登半島地震の被災地では16日、真冬並みの厳しい寒さとなり、氷点下を記録したところもありました。避難されている方の体調も心配されています。先週まで、輪島市の避難所で診療を行った大阪赤十字病院の黄 文禧(ファン・ムンヒ)医師に避難先での診察の様子などについて尋ねました。

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藤井貴彦キャスター
「今もたくさんの方が避難されています。先生が診察に行った輪島市の避難所では具合が悪い避難者の方はどれぐらいいたのでしょうか」

黄医師
「500人規模の避難所で、20人程度の発熱の患者さん、数名の下痢の患者さんです。そこは少し広いスペースがあったので、隔離されて診ておられる状態でした。もう少し本当は具合の悪い方もいたのではないかと思います」

藤井キャスター
「避難所では通常医療ができない状況だったかと思います。薬の投与や点滴など、どこまでの治療ができたのでしょうか」

黄医師
「避難所内に簡易に机を並べて、診療希望される方を集めて診療したりしました。ほとんどの場合はそれほど重篤な状態ではなくて、咳とか喉が痛いということが多かったので、そういうのに対しては自前で持っていった薬剤などを処方しました。ただ、診療所を作れないような場所もありましたので、そういう場合は具合の悪い方がお休みになっている場所に直接伺って、診察させてもらったりしました」

黄医師
「基本的には点滴などができる状態ではなかったのですが、午前中まで具合のよかった80代の方がお昼から熱を出して動けなくなっているということで、駆け付けたところ、非常に状態が悪かったので、ほかの赤十字の救護班の協力を得て、救急車を自分たちで出して輪島病院に診療を依頼したというような経過もありました」

藤井キャスター
「急に状態が悪くなってしまうというのは、患者さんがなかなか『今の状態が良くない』と言い出せないからなのでしょうか?」

黄医師
「状態が悪くなった方は(それまでは)元気だったみたいなので。診察したところ、もともと基礎疾患がある方で、多分、そういう方がちょっとした発熱とかでグッと体力的に。やはり被災して生活の中で体力も落ちてきてますし、急に状況が悪くなってしまうことは、特に高齢者の方に出やすいではないかと感じました」

藤井キャスター
「黄先生は呼吸器内科がご専門です。特に寒い季節、注意が必要な病気は、『新型コロナウイルス』『インフルエンザ』『肺炎』ということですが、改めて、なぜ寒い季節だとこうした病気になりやすいのでしょうか」

黄医師
「気温が下がったり、湿度が下がったりしている状況が、まずウイルスにとって快適な状況になっていること。あと、それ(ウイルス)が広がりやすい。どうしても寒いと換気も悪かったり、避難所内だと密になりやすい環境ですので、それが広がりやすい。その中で、気をつけないといけない。特に寒い季節では多くなるし、今の環境下ではより広がりやすい状況です」

藤井キャスター
「今後はホテルや旅館などに『2次避難』される方も少しずつ増えてくると思います。2次避難をする上で注意することはありますか」

黄医師
「2次避難場所もホテルなどが多いのかなと報道を見て思ったのですが、ホテルの中は基本的に閉鎖空間の集まり。そういう所に具合が悪い方が入ったときに、ちゃんと事前に(体調不良を)申し出たりしやすい環境とか、あとは定期的に保健師や看護師たちが巡回したりして(避難者の)体調に目配せできるようなかたちの対応は必要だと思いました」

藤井キャスター
「ご高齢の方は、避難所でストーブがあって、少し食料があって『これ以上、望むことはできない』とおっしゃる方も多くいらっしゃるようです。でも避難しているときに、改めて自分は『どれぐらい体調が悪いか』ということを伝えてもらいたいですよね」

黄医師
「そうですね。遠慮なく伝えていただきたい。その段階で(診察し)大丈夫な状態だったら『大丈夫』と安心していただいたらいいのかなと思います」

藤井キャスター
「2次避難は不安だと思うご高齢の方、みんなでしっかり手厚くサポートするということですので、ぜひ2次避難も考えていくのも一つの手かもしれません。大阪赤十字病院の黄文禧医師とお伝えしました」