【解説】運輸「2024年問題」…配送依頼する側の変化が必要 再配達を減らすには
間もなく4月になり、進学・就職など新生活への準備を始めている人もいるかもしれません。4月から、宅配便の料金が値上げされます。背景には何があるのでしょうか。
●1箱いくらに?
●深刻! ドライバー不足
●再配達が負担
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
4月から、業界大手2社が宅配便の料金を値上げします。佐川急便は4月1日からクール便を含む宅配便の料金を7%~11%値上げ、ヤマト運輸は4月3日から宅配便の料金を約10%値上げするということです。
関東から関西に荷物を送った場合、縦・横・高さの3辺の合計が60センチ以内の荷物だと、佐川急便は現在の880円から970円に、ヤマト運輸は1040円から1060円に値上げされます。そして、3辺の合計が100センチ以内の場合、佐川急便は1496円から1610円に、ヤマト運輸は1500円から1650円に値上げされます。
こうした背景には、トラックの燃料費などの上昇のほか慢性的なドライバー不足があります。そもそも、なり手不足の中、近年のネット通販の増加もあり、トラックドライバーの人手不足が深刻になっています。人が少ないのに荷物は増えているので、長時間労働が常態化してしまっています。
こうした中、運輸業界で対応が急がれているのが「2024年問題」です。
これは、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働の規制が強化されることで起きる様々な問題のことです。実は今、トラックドライバーには時間外労働時間の上限がありません。それを24年4月から「年間960時間」に制限することになります。
1か月に20日間働くとすると、単純計算で1日あたりの時間外労働は4時間までということになります。ドライバーの負担を軽減できる一方で、1日に運べる荷物の量が減ってしまうといった問題も指摘されています。
野村総合研究所は2024年問題の影響でドライバー不足はさらに進み、運搬できなくなる荷物が2025年時点では全国で約28%、2030年時点では約35%になると推計しています。
ネット通販の拡大により、宅配便の取り扱い個数は急増しています。国土交通省によると、2016年から2021年までの5年間で9億個以上増加し、2021年度の取り扱いは約49億5000万個にのぼっています。
荷物が増え続ける中で、さらにドライバーの仕事を増やしているのが再配達です。
国交省による去年10月の調査では、1か月で扱う宅配便のうち実に11.8%が再配達になっていることが明らかになりました。これを労働力に換算すると、1年間で約6万人のドライバーの労働力に相当するというのです。
こうした再配達はドライバー不足を深刻化させる重大な社会問題の1つだとして、国交省も削減に取り組んでいます。特に来月が2024年問題まであと1年ということで、「再配達削減」のPRを強化します。斉藤国交相自らが説明に立って、宅配便利用者に協力を呼びかけています。再配達削減策として、次の9つのアクションを提案しています。
●受け取れる日時・場所指定
●まとめ買い
●配送状況の通知アプリを活用
●急ぎ便の使い分け
●相手が受け取れる日時・場所指定
●送り先は正しく
●宅配ボックス・置き配
●コンビニ受け取り
●宅配ロッカー
一人暮らしで家を空けることが多いという人は、好きな時間に受け取ることができるコンビニ受け取りや、街中の宅配ロッカーを活用してみてもいいかもしれません。
首都圏に展開するスーパーのサミット、マルエツ、ヤオコー、ライフコーポレーション4社が今月、物流の改善を図るためタッグを組むと宣言しました。
その取り組みの1つが「加工食品の発注の前倒し」です。スーパーは通常、午後に卸へ発注し、翌日に商品が納入されます。しかし、4社では店舗からの発注を午前に早めることで卸やメーカーが出荷準備に必要な時間を確保し、夜間配送の削減や積載効率の高い配送につなげるということです。
常温で長期間保存のきく加工食品などから始めて、物流業界の負担を少しでも軽減しなければ、将来、食品が私たちに届かないという事態も起こりかねません。
もはや2024年問題は、配送を依頼する側が変わっていかなければ改善されない問題なのです。
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ネット通販などの利便性が高まっていますが、その裏には配送ドライバーの長時間労働がありました。ドライバーの負担を減らすためにも、まずは再配達を減らす努力から始めていきましょう。
(2023年3月28日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)