騒音・安全は…羽田増便で都心を低空飛行?
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。24日は、「都心を低空で?」をテーマに日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
■羽田増便へ…都心を低空飛行?
国土交通省は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに羽田空港を発着する国際線の便数を増やすため、新たな飛行ルートを検討している。国交省はこの夏、周辺住民への説明会を行い、先週、住民らから寄せられた意見を公表した。
こうした説明会を行っている理由の1つは、これまで飛んでいなかったルートで、都心などの上空を低い高度で飛ぶことになるからだ。いまは羽田空港に到着する便は、主に東京湾上空から着陸している。新たな飛行ルートでは、これに加えて、新宿、渋谷、品川など都心の上空を飛んで着陸するルートや、川崎市上空や江東区などの上空を飛ぶ出発ルートも検討されている。
■1時間に31便? 東京タワーより低く飛ぶ?
これらの新しいルートは、国際線の発着便が集中する時間帯だけに限られるのだが、例えば新宿や渋谷上空を飛ぶ東側のルートを見てみると、午後3時から午後7時の間に1時間あたり最大31便が飛ぶ可能性があり、およそ2分に1回のペースで上空を航空機が飛ぶということになる。
また、その高度も低く、新宿・中野付近では約915mの高さを、渋谷や恵比寿付近では高度約610m。そして、品川区の大井町付近では、高度約305mまで下降して、羽田空港へ着陸していくことになる。つまり渋谷付近では、高さ634mのスカイツリーよりも低い位置を飛ぶことになるし、大井町付近では、高さ333mの東京タワーよりも低い位置を航空機が飛ぶということになるのだ。
■事故を心配する声も
国交省へ寄せられた意見には、「人の多い街中や住宅街を飛行するので、事故によるリスクが高いのではないか」「飛行機からの落下物により被害が生じないか心配だ」という声もあった。
ただ、航空評論家の樋口さんは、「旅客機にはエンジンが2つ以上あるため、1つがエンジン不能となって50%の推力を失っても、旅客機は高度を上げて、地上の障害物を避ける性能が備わっている。リスクがあるとしても、非常に確率は低い」と話している。
また、落下物について国交省は、航空機から部品や氷などを落下させないよう航空会社などに点検や整備を徹底するよう指導するとしている。
■騒音…渋谷付近なら“新幹線の車内”レベルか
低いところを飛ぶとなると、心配されるのが騒音の問題だ。実際にどれくらいの騒音が想定されているのかというと、新宿付近では約63~70デシベルで、目安としてはファミリーレストランの店内並の音が想定され、渋谷付近では約68~74デシベル。これは新幹線の車内に近い音のレベル。そして、大井町付近では約76~80デシベル、航空機の機内並の音が想定されている。
こうしたことから、国交省へ寄せられた意見でも、「住宅街やオフィス街を飛行するので、騒音の影響が心配だ」「騒音の範囲や想定値を詳細に示してほしい」といった騒音に関する声も多く寄せられた。
■きょうのポイント
きょうのポイントは「不安に応える」。国交省は、新しい飛行ルートが導入されれば、国際線の発着便数を年間約1.7倍に増やせるとしている。寄せられた意見では、「海外への渡航がより便利になり、海外旅行等の機会が増える」「訪日旅行者数の増加に対応するため、羽田空港の機能強化は必要」との賛成意見も多くあった。
国交省は再来週から各地域で住民説明会を改めて開く。これまでに不安の声も寄せられていることから、こうした不安に応えるよう、提案の背景や理由についても丁寧な説明が求められる。