子供の転落事故が増加 防止策、紹介します
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。10日は「子どもの転落事故を防ぐ」をテーマに、日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
■子どもの転落事故 年々増加
マンションなどから子どもが転落する事故が後をたたない。12歳以下の子どもがベランダや窓といった高い場所から転落し、救急搬送される件数は、年々増加していて、そのうち重症など命に危険を及ぼす事故は、半数に迫るほどの割合で毎年起きている。
さらに、年齢別では1歳~4歳までの事故が多く、12歳以下の搬送数全体の6割以上を占めている。
過去の事故事例を見てみると、母親がゴミ捨てから共同住宅の8階の部屋に戻り、4歳の息子の姿が見えないのでベランダから下を見てみると、地面に倒れていたというケースがあったり、また、別の4歳の男の子の事例では、転落したマンションの3階のベランダに、踏み台があったというケースもあった。
■安心できない高さ…110センチの柵
実は、建築基準法では2階以上のベランダには、床から110センチ以上の高さの柵などを設けるよう定めている。ただ、日本大学の八藤後教授によると、「高さ110センチの柵があっても、子どもは“足がかり”さえあれば乗り越える恐れがある」という。
実際、八藤後教授は、4歳~6歳の子ども90人を対象に、子どもがどれくらいの高さの台に登れるか、また柵の高さはどれくらいあれば安全なのかという実験を行った。
まず65センチの台、これはエアコンの室外機ほどの高さだが、これには4歳~6歳のほとんどの子どもがよじ登れた。この高さが足がかりになるとすれば、110センチの柵から身を乗り出すことができてしまう。
一方、高さ30センチの台、これはちょうどプランターほどの高さだが、この高さであっても、子どもは柵から身を乗り出せることがわかった。子どもは体に対して頭が大きいので、少し身を乗り出すだけでも、バランスを崩し転落しやすいという。
■転落防止へ…注意点
実験から分かったのは、まず、柵の高さは、足がかりになる物から最低でも90センチ以上はないと危険だということ。また、エアコンの室外機を置く場所も、柵から離して、少なくとも60センチ以上は離れた場所に置くか、壁の高いところに取り付けるべきとしている。他にも、椅子やテーブル、古新聞や三輪車など、足がかりになりそうな物は柵から離すなど、注意が必要だ。
■企業も独自基準で対策
一方で、企業側も独自の基準を作り、安全対策を取り始めている。分譲マンションを手がける大京は、エアコンの室外機とベランダの柵の間を60センチ以上確保するなどの基準を4年前から設けている。同様に三菱地所レジデンスも、去年11月から、ベランダの柵と室外機などの間隔を70センチ以上離すよう基準を作ったそうだ。
■高所平気症?
しかし、企業がこのような対策をしても、実際には、転落事故は増えている。その背景について、福島学院大学の織田正昭教授は、「幼い頃から高層マンションに住む人が増えて、子どもが“高所平気症”になっていることも要因の一つ」と話している。
子どもは、自分の目の高さと地面との距離で高いかどうかを判断するそうだが、高層階に住んでいると地面が見えにくく“高い場所が怖い”という感覚が育ちにくいというのだ。
その対策として、織田教授は公園のブランコや滑り台、ジャングルジムなど、地面からの距離を感じられる遊具で積極的に遊ばせることが重要だと話している。
■成長に応じた安全対策を
きょうのポイントは「成長に応じた安全対策を」。子どもは日々成長して、きのう登れなかった所にもきょうは登れたりする。思わぬ転落事故につながらないよう、子どもの成長に合わせた安全対策をしていきたいものだ。