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外来種カメムシが北上中…あなたの家に来ちゃうかも?

2022年5月22日 8:00
外来種カメムシが北上中…あなたの家に来ちゃうかも?

歯止めがかからない「地球温暖化」。「虫」や身近な生き物の生息地にも着々と影響が出ていることがスマホアプリを使った調査でわかりました。「見たことない外来種のカメムシが自宅に来ちゃう日も近い?」。アプリを手がけた起業家が見通す未来とは。

■カメムシが北上中?1万7000人の調査でわかった生息地の変化

生き物を見つけてスマートフォンで撮影すれば、AIでその正体が判定できるアプリ「バイオーム」。「見たことない生き物を見つけてもすぐ調べられる」などとして話題になり、43万ダウンロードされている人気アプリです。(2022年5月時点)

このアプリを利用して、昨年度行われたのが、生き物の生息地から地球温暖化の影響を調べる「気候変動いきもの大調査」。のべ1万7000人超のユーザーが参加しました。

このアプリを手がけた藤木庄五郎代表取締役(33)は、特に「キマダラカメムシ」の分布に衝撃を受けたと話します。

藤木さん
「調査結果で言うと、かなり多くの種が北上している。キマダラカメムシは外来種のカメムシなので、広がると非常にいろんな生態系に影響が出ます」

バイオームによると、もともと東南アジアを中心に分布する外来種の「キマダラカメムシ」。1990年代は九州を中心に生息していましたが、2000年代に分布域が急速に拡大。今回の調査で関東北部にまで北上している実態がわかりました。このままだと近い将来、東北地方にも広がる可能性があるといいます。

増えすぎると、街路樹や農作物に被害が出るなど、生態系を崩してしまう可能性もあります。

■原点は「ブルーギルばかり釣れる池」釣り好き少年の生態系守る決心

藤木さんが、生態系に興味を持った原点は、釣り好きだった幼少期のある体験でした。

藤木さん
「ブルーギルばかり釣れる池があって、すごく不思議だなといろいろ調べてみると、外国から来た魚が日本の魚を食い荒らして、生態系が崩れていることがわかってきて、自分の好きなものが壊れることがとっても嫌で。生態系を守る活動をやりたいと思うようになりました」

■「環境保全がお金になる仕組みを作る」

その後は生態系を保全する研究者を目指して大学進学。環境破壊の最前線であるという、東南アジアのボルネオ島のジャングルで2年半ほどキャンプ生活を送りながら生物調査を行ったといいます。しかし、現地では木を伐採し環境を破壊することで生計を立てている人がいることを知り、環境問題はお金という観点を無視して考えても意味がないと思うようになったといいます。

藤木さん
「環境保全がお金になる仕組みを作るための会社、ちゃんと環境保全で利益を上げるということをやっている会社を作ることはとても大事なのではないか。当時ほとんどそういうことをやっている会社がなくて自分で会社を起業しました」

■企業の意識が低い理由…データ化が進んでいない生態系の分野

藤木さんの開発したアプリ「バイオーム」は、国内に生息している動物や植物などもほぼ網羅していて、実に9万5000種以上の生物を自動判定することが可能。図鑑代わりとして人気だといいます。

環境保全をビジネスにつなげるために、このアプリを利用して藤木さんが目指すのは、「生き物の分布をデータで表す」こと。これにより、生態系への意識が低い日本企業の現状を変えたいという思いがあるからです。

二酸化炭素の削減目標などは「何トン削減」など数字で評価できるため企業も取り組みやすい一方、生態系の豊かさについてはデータで把握できないためルールや目標を作ることが難しく、その結果、他の環境課題に比べて「企業の実際の行動につながりにくくなっている」と藤木さんは考えています。

■“害虫予報”も開発中 生物分布のデータで企業や農業をサポート

将来的には、CO2の排出量などと同様に、企業活動の生態系への影響の情報開示が義務化される未来も近いと考えている藤木さん。企業が自分たちで生態系の調査ができるような新たなツールを開発し、生態系や生物多様性を守るために動き出している企業をサポートしたいとしています。

さらに、害虫などの農作物の害となる生物の分布や出現時期を予測できる“害虫予報”の仕組みも開発中。

藤木さん
「自然相手でよくわかっていなかったものをデータ化して、解決できる道筋が見えてくるようなサービスは絶対世の中に必要だと思っているので、“自然相手だから仕方ない”という状態を変えていきたいと思っています」

研究者の道ではなく、ビジネスを通して、環境問題に取り組む決断をした藤木さんが、つくりたい未来とは。

藤木さん
「つくりたい未来は、環境を守らなきゃいけないと思わなくても、環境が守られている社会です」

世の中が環境にいい製品やサービスばかりになれば、人は生きてるだけで環境を守れる、と語る藤木さん。今後企業の取り組みの支援などをして、社会の仕組みを変えていきたいとしています。

■Good For the Planetウィーク

この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planetウィーク」(グップラ)の一環で取材しました。

日本テレビ系列では、5月29日~6月5日を地球のためにいいことを考える「Good For the Planetウィーク」として、様々な番組や発信を通して地球のため、暮らしのためにいいことを皆さんと一緒に考えます。これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球や社会にいい取り組み」や実践者を取材し、記事を発信していきます。