給付型奨学金制度、開始へ
【給付型奨学金制度の創設】
文部科学省は、2017年度から返済の必要がない給付型奨学金の支給を開始する。貸与型の奨学金の場合、卒業後に返済の義務があるため、進学を断念せざるを得ない学生や、そもそも入学費や学費を払えない学生も多く、文科省は、そうした全ての学生に平等な教育機会を与えるため、給付型奨学金の創設に向けて、専門家を交えて議論を重ねてきた。
【給付対象は】
給付型奨学金は、大学や短大、専門学校への進学を希望し、住民税が非課税となっている低所得世帯の学生が対象。住民税の非課税世帯の収入は、例えば夫婦と高校生、大学生の子ども2人の4人暮らしで、年収295万円程度。
対象となる学生の人数は、2017年度が2650人で、2018年度の本格スタート後は2万人程度になる予定。まずは、全国の高校およそ5000校に最低1人分の枠を割り当て、残りの枠はそれぞれの高校における非課税世帯の学生の割合などによって割り振られる。高校側が学生を推薦する仕組みで、成績が優秀、または教科以外で非常に活躍、かつ成績もおおむね良いことが推薦の条件となっている。
【給付金額と開始時期】
給付金額は、学生が自宅から国公立の大学などに通う場合は月2万円、自宅から私立に通う場合や、下宿先から国公立に通う場合は月3万円、下宿先から私立に通う場合は月4万円が基準となる。
また、児童養護施設の出身者などには、毎月の給付とは別に、大学などへの入学時に24万円が一括で給付される。
文科省は、毎年安定的に制度を運用するため、来年度の予算に70億円を計上し、学生への給付を行う日本学生支援機構に基金を立ち上げる。
本格的な給付は2018年度からだが、下宿先から私立大学に通う学生や、児童養護施設の出身者などおよそ2700人には、先行して、今年4月から毎月4万円の給付を開始する。
【無利子奨学金制度の拡充】
返す必要のない奨学金の創設を歓迎する声があがっているが、これを受け取る資格のある学生はおよそ6万人で、今の制度では、恩恵を受けるのは3分の1程度にとどまる。そのため文科省は、すでに制度化されている、返済の際に利子がない奨学金について、必要とする全ての学生が受け取れるように予算を増やすほか、給付の条件となっていた高校での成績基準を撤廃する。
評定平均値「3.5」以上という条件をなくし、評定基準を満たしていなかったり、予算不足が原因で奨学金を受け取れなかった学生およそ2万4000人が、無利子奨学金を受け取ることができる見こみ。
【今後の対応と課題】
文科省は、経済的な理由などで進学を諦めざるを得ない学生に、給付型奨学金制度や無利子奨学金の拡充を広め、利用してもらいたいとしている。
一方で、給付型奨学金は必要としている全ての学生に行き渡らないこと、給付額が大学などに通うのに十分とは言えないことなどが課題となっており、文科省は、制度開始後も引き続き強化を図っていきたいとしているが、予算の確保が課題。