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史上初「永世七冠」羽生棋聖、強さのヒミツ

2017年12月6日 20:31
史上初「永世七冠」羽生棋聖、強さのヒミツ

 鹿児島県でおこなわれていた将棋の竜王戦で5日、渡辺明竜王を破り、史上初の「永世七冠」を達成した羽生善治棋聖。“前人未到”の記録を達成し、偉業を成し遂げてもなお、「まだまだ」と話した。その強さのヒミツを小西美穂・日本テレビ解説委員が解説する。

 羽生善治竜王「将棋そのものを本質的にどこまでわかっているかと言われれば、まだまだやっぱり、何もわかっていない」

■「永世七冠」のスゴさ

 まず、羽生さんが達成した「永世七冠」がどのくらいスゴイ記録なのかというと、将棋には7つのタイトル戦があって、このタイトルごとに通算5期など一定の回数を獲得すると、「永世」の称号があたえられる。

 一つのタイトルで「永世」を獲得するだけで超一流の証しだが、それを羽生さんは7つとった。これは、史上初のことだ。

 今年の将棋界は、29連勝記録を達成した中学生プロ棋士の藤井聡太四段がフィーバーした。羽生さんのデビューも中学生だった15歳の時で、その3年後には、初タイトルとなる「竜王」を獲得、25歳の若さで7つのタイトルを達成している。これも、史上初めてのことだった。

■強さのヒミツ(1)「集中力の高さ」

 このように、30年近くトップを走り続けている羽生さんだが、一方で、トレードマークは「寝癖」。こうやって気を抜いているかのように見えるが、実は羽生さんの強さは「集中力の高さ」。

 その集中力の高さゆえ、ともいわれている現象が「手の震え」で、自分の「勝ち」が見えると手が震えてしまうといい、将棋ファンの間では、羽生さんの手が震え出すと勝負が決まった、と盛り上がるという。

■強さのヒミツ(2)「スタミナ」

 では、羽生さんのどこが他の棋士と違うのか。

 羽生さんと同い年の永世名人・森内俊之九段によると、羽生さんの強さのヒミツは、「苦手な展開が少ないこと」と「考え続けてもスタミナ切れを起こさないこと」だという。つまり、オールラウンドの強さがあって、今の若手はこのスタイルをお手本にしているそうだ。

 いわば脳の体力があって、考え続けても疲れず、将棋の長丁場を常に高いパフォーマンスで乗り切る強さがある。

 森内九段も、「まねできない天性のもので、うらやましい」と話していた。

■強さのヒミツ(3)「飽くなき探求心」

 そう評価されている一方で、羽生さんには「飽くなき探求心」がある。それは5日の会見でもにじみ出ていた。

 羽生善治竜王「盤上で起こっているのは、基本的にテクノロジーの世界。過去にこんな実績があった、ここで勝てたというのは、これから先、何か盤上で意味があるかと言われたらあまり意味はない。常に最先端のところを探求していく気持ち」

 会見の中で羽生さんは、自分は将棋の本質を「まだまだわかっていない」とも話していた。最近は、例えば藤井四段もそうだが、将棋ソフトを参考にした戦術が取り入れられている。それもあって、将棋の戦術は劇的に変化していて、それに追いついていくのが難しくなっているという。

 トップに居続ける一方で、そこにはすさまじい努力があるのだろう。衰えを知らない羽生さんの挑戦を、今後も見続けたい。