「クビにしてやる」「赤飯の駅弁にゴマ塩が入ってなかった」 “旅行カスハラ”の実態
客が悪質なクレームを行うカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」。旅行先でのカスハラもあとを絶ちません。こうしたカスハラには厳正な態度を取ることをJR東日本が表明しました。悪質なカスハラの実態を取材しました。
乗客
「車掌の言い方が気に入らん」
乗客
「早くしろ、クズ!」
乗客
「いつ発車するのか放送しろ!」
暴言を吐き、車掌をスマホで撮影する客。これは鉄道で実際にあった「カスタマーハラスメント」、略して“カスハラ”の一例。客から従業員への理不尽な要求です。
JR東日本は4月26日に、こうした“カスハラ”に対するポリシーを制定しました。社員個人への身体的・精神的な攻撃や威圧的な言動に対し、悪質なカスハラと判断された場合、客への対応を行わず、警察・弁護士等に相談のうえ、厳正に対処するとしています。
3月には東京メトロも同様のポリシーを制定。駅員への暴力も増加傾向にあるということです。
“カスハラ”撲滅へ厳格な姿勢を打ち出しはじめた企業。背景には、年を追うごとに増える被害があり、ある調査によると、2020年までの直近2年で客から迷惑行為があったと答えた人は56.7%と半数を超えています。(※UAゼンセン2020年調査より)
JR連合は、“カスハラ”の事例を一部公表しました。そこには旅行先で起きた悪質な“カスハラ”の数々が記されていました。
利用客
「さっさとせいや!」
切符の払い戻しをせかす客。手数料を説明すると…
利用客
「お前らこんな手数料で利益とっとんのか!」
駅で赤飯の弁当を買った人物。
乗客
「赤飯の駅弁にゴマ塩が入ってなかった」
その後、弁当業者が連絡すると…
乗客
「食べたあとに気分が悪くなった、誠意を見せろ」
執拗(しつよう)な苦情を受け、おわびとして弁当業者が5万円支払うはめになりました。
乗客
「俺は東京の不動産会社の社長だぞ! お前なんかクビにしてやる、名刺を出せ!」
こう激高したのは、JRグループのホテルで自動精算機での事前精算を案内された客。差し出させた名刺を破り捨て、従業員に正座を要求しました。
JR西日本グループ
「もしもし…もしもし?」
発信者
「…」
お客様センターへ無言電話を100回以上繰り返した人物。
発信者
「殺すぞ」「(お客様)センターに行くぞ!」
暴言もエスカレートし、殺人予告などにより逮捕された事案もありました。
◇
ゴールデンウイークで人出が増える時期。タクシーの運転手に、遭遇した“カスハラ”体験を聞くと…
タクシー運転手
「遠回りしたとか、道間違えたとか(の指摘)。結構大きい声で怒鳴られたり、『どこ行くんだよ! こっちじゃないよ!』とか。迷惑だけどしょうがない」
旅行先の宿泊施設で起きる“カスハラ”もあります。
愛媛県松山市のホテル。名湯・道後温泉と地元の食材にこだわった会席料理がウリですが、この「夕食」の提供を巡りトラブルになったといいます。
道後プリンスホテル 織田祐吾本部長
「どうしても夕食のお時間が決まった設定になってございます。遅くに到着されると夕食の提供ができないんです」
自身の都合で夕食の提供時間が終わった夜10時過ぎに到着した客。
従業員
「夕食の提供はできかねます」
客
「そんなホテルは聞いたことがない。前に泊まったホテルはそんなことなかった。旅行が台無しだ」
客はやりとりに費やした約1時間を“返してほしい”と要求。ホテル側は、夕食代を返金という形で対応したということです。
道後プリンスホテル 織田祐吾本部長
「お連れ様もいらっしゃったんですが、2人とも非常にお怒りになられてました。表現は悪いですが、(従業員は)サンドバッグのような状態」
客の声掛け1つで左右されるという従業員のモチベーション。悪質な“カスハラ”に対する毅然(きぜん)とした姿勢が求められています。