家族の写真が“無断で掲載” なぜ写真は流通した? “フリー素材”の怖さとは…【#みんなのギモン】
10日のギモンは「突然、自分の写真が無断で掲載されたら」。
「自分の姿が勝手に誰かに撮影をされて、知らぬ間にネットに流通している」ということが起きています。
先月。日本テレビの情報提供サイトに、小学生の子を持つ母親から「子どもの写真が盗撮され、ネット上でフリー素材に使われていました」というメールをいただきました。
“フリー素材”というウェブサイトがあり、いろんな写真が並んでいて、無料でダウンロードして使えるサイトです。そこに我が子の写真が出ていたといいます。それも、無断で撮ったものだといいます。
“フリー素材”をうたうサイトは多数ありますが、写っている方の許可を得て撮影され、使われることも許可を得た上で、掲載されているものだと思いがちです。まさか無断で使っていたとは驚きですが、なぜそんなことになったのでしょうか。
取材をしたら、ずさんな経緯がありました。
●なぜ写真は流通した?
●フリー素材に怖さが…
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
■息子の写真が“フリー素材”に キャンペーン広告に使用され…
今回、何が起きたのか。情報提供をいただいた母親のもとを、記者が訪ねました。
無断掲載された子どもの母親
「知人から連絡がありまして、私の息子の写真がスポーツ関連のメールマガジンのキャンペーンの画像に使われているということで」
小学校3年生の息子が、サッカーの試合で相手の選手にスライディングしている瞬間の画像です。これがメールマガジンでキャンペーン広告に使われていました。母親は「自分で撮った写真ではない」といい、誰か第三者が勝手に撮ったものでした。
無断掲載された子どもの母親
「全身が写っているもので、後ろ姿ではあったんですが、クラブの公式ユニホームの背番号が写っているので、これは確実に息子の写真だというのはすぐにわかります」
調べた結果、この写真はウェブサイトでフリー素材として、掲載されていたことがわかりました。
無断掲載された子どもの母親
「ゾッとしましたね。息子の写真が勝手に世に出回っていると思った時は。3か月無料で勝手に配られてしまっていて。今、世の中にどの程度その写真が出回ってるかがわからないんですよ。それが怖いです」
これは気づいたケースになりますが、もしかしたら「気づいていない」ケースもあるのではないかと思うと、怖さを感じます。
そこで、今回のことで何があったか、整理してみました。経緯は以下の通りです。
誰かが息子の写真を無断で撮影
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それをフリー素材のサイトに投稿
・写真がダウンロードされるごとに投稿した人に報酬が入る仕組み。
・つまり無断で写真を撮った人物が息子の写真で「もうけようとしていた」ということ。
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この写真を、メールマガジンがダウンロードしてキャンペーン広告の写真に使用
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母親はサイトの運営会社に連絡し、写真を削除するよう要請
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これを受けて運営会社は、投稿した人物にこの写真のいきさつについて確認
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運営会社は母親に確認した結果を、次のように説明
「撮影者は許可は得ていなかったが、顔がわからなければ問題ないと考え投稿したようだ」
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運営会社は写真を削除した上で謝罪
そこで私たちも運営会社である「ACワークス」という会社に取材、今回の件をどう受け止めているのか見解を聞きました。
回答は「当該写真は顔は見えず、背番号以外の文字などもなく、一般の方々が個人を特定できるものではありませんでした。サービス全般に関して厳格な規約を設け、運用しています。改善すべき部分がある場合には改善に努めたいと考えています」というものでした。
そこで、こうした問題に詳しい弁護士の方々に聞きました。
福永臣吾弁護士(弁護士法人PRESIDENT)
「肖像権侵害になるのではないか。特定の人をクローズアップして無断で撮影している。顔は写っていなくても個人が特定される可能性がある。不特定多数の人が見られる場所に公開されている。さらに営利目的といえるので、違法の可能性は高い」
原口恵弁護士(骨董通り法律事務所)
「盗撮行為は迷惑防止条例違反になる場合もある」
今回、息子の写真を無断掲載された母親は怒っています。
無断掲載された子どもの母親
「私は息子の撮影を許可していません。無断で撮った写真かどうかのチェックもせず、無料でダウンロードできる状態を放置していたことは企業として問題だと思います」
フリー素材をうたう写真はネットでよく見かけますが、使う側もかなり気をつけなくてはいけません。
じつは今回の件を私たちは、一足早く9日に記事にしてネット配信しましたが、その記事に、たくさんのコメントをお寄せいただきました。そこには「私もこんな経験ある」という、次のようなコメントがありました。
「友達の娘の写真が出会い系サイトの広告に使われていた」
「愛犬の写真が勝手にペット用品メーカーのホームページで使われていた」
「旅行した際に写真をSNSにアップしたら『人気スポット写真』として使われていた」
SNSに写真や動画をアップして楽しんでいると思いますが、もしかしたら、それらが悪用されてしまう可能性があることにも、私たちは留意すべきでしょう。
こういったケースは横行しているから日常生活で気をつけなくてはいけないことがあります。例えば、教室でクラスメートと撮った写真、お祭りに参加して神輿(みこし)を担いでいる迫力シーンを撮った写真、人気のレストランで食事している写真などをSNSに気軽に投稿すると、知らないところで勝手に流用される可能性があります。
それが「フリー素材」として出回っている可能性もあります。逆にフリー素材を使う側に立つと「フリーだと書かれていたから大丈夫だ」と思って使ったら、トラブルになりかねません。基準やルールが明確にないからこそ、取り締まることができないのでしょうか。
弁護士の浜門俊也さん(東京新生法律事務所)は「悪用されて出回っている写真などについて取り締まれるかというと、現状では罪を問えるような状況になっていない」と話しました。
そして、もうひとつ気をつけなくてはいけないことがあります。こんなことも起きています。
千葉県成田市の小学校の学年だよりとホームページ作成にあたり、教員がイラストを添えたいと考えと「無料イラスト」と検索して表示されたイラストを、フリー素材だと思ってダウンロードして使ったところ、じつはイラストには「著作権」がありました。
「無断使用だ」と指摘を受け、成田市が約54万円を支払うことになりました。「著作権侵害になっているとは知らなかった」という言い訳は通用しないのです。どうすればいいのでしょうか。
まずは、フリー素材サイトの利用規約を確認すること。そして「写真につけられている情報」を丁寧に把握して、あやしかったら使わないことです。
フリー素材のサイトは多数あり、誰もが写真を投稿することがあります。そして、写真を使う側になることもあります。どんな時も「これやっていいかな」「これ大丈夫かな」と、ちょっと立ち止まることが大事になりそうです。
(2023年11月10日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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