皇太子さま59歳の誕生日 会見全文1/4
皇太子さまは23日、59歳の誕生日を迎えられた。これに先がけ、皇太子さまは21日、即位前最後となる誕生日の記者会見に臨まれている。
記者会見の全文は以下の通り。また、会見のうち撮影が認められた部分についてはノーカットで映像を配信する。(1/4)
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皇太子殿下御誕生日につき
平成31年2月21日(木)16:00~16:35 東宮御所檜の間
(宮内記者会代表質問)
【問1】
殿下が新天皇として即位されるまで残り2か月余りとなりました。皇太子としての歩みを振り返るとともに、即位を控えた現在の心境や、新たな時代に臨む決意をお聞かせください。皇室全体では皇族の減少や高齢化が進んでいますが、殿下はどのような皇室の将来像を描かれていますか。
殿 下
今から30年前、昭和から平成の新しい御代への移り変わりを、私は、皇居の吹上御所で迎えました。深い悲しみの中に、一つの時代が終わったという感慨が、頭の中を駆け巡ったことを記憶しています。立場が変わったことを認識しつつも、最初しばらくは、「皇太子様」と呼ばれても、何か実感が湧かなかったことを覚えています。ただ、昭和の時代から、回数は限られますが、現在の両陛下の御公務に御一緒したり、昭和62年には、私自身も昭和天皇の国事行為臨時代行を務めさせていただくなどしたことは、皇太子としての準備を進めさせていただく機会になったものと有り難く思っております。
実際に皇太子となってからは、自分の中でもその役割に対する自覚というものがより根付いてきたように思います。特に、平成3年2月に立太子の礼を陛下に執り行っていただいたことで、その気持ちがより強くなったことを思い出します。
皇太子としての活動を行うに当たっては、国民の幸せを願い、国民と共にありたいと思っておられる陛下をお助けすべく、皇太子として自分に何ができるかを常に考えながら、一つ一つの公務に取り組んでまいりました。私は、様々な行事の機会に、あるいは被災地の視察として、各地を訪問してまいりましたが、国民の中に入り、国民に少しでも寄り添うことを目指し、行く先々では多くの方々のお話を聴き、皆さんの置かれている状況や関心、皇室が国民のために何をすべきかなどについて、的確に感じ取れるように、国民と接する機会を広く持つよう心掛けてまいりました。こうしたことは、今後とも自分の活動の大きな柱として大切にしていきたいと思います。
国際親善とそれに伴う交流活動も皇室の重要な公務の一つであると思います。これについては、これまで30か国以上を親善訪問し、また、日本に来られた賓客や外国青年代表、国際賞受賞者等多くの外国の方とお会いする機会がありました。こうしたことが、日本と各国との友好親善の一助となったのであれば幸いです。また、これらの経験によって、自分自身も世界に対する視野を広げ、関心を深めることができたように思い、有り難く思っております。
平成28年8月8日の天皇陛下のおことば以来、これから私が担うこととなる重責について、改めて思いを巡らせる機会も増えてきましたが、その度に、両陛下のこれまでの御苦労と御努力に感謝と尊敬の念を覚えます。また、両陛下から、様々な機会に、多くのお話を伺わせていただいていることも、今後公務に取り組んでいく際の大きな道標(しるべ)となるものであり、大変有り難いことと思っております。
これからのことを思うと、とても厳粛な気持ちになりますが、引き続き自己研鑽(さん)に努めながら、過去の天皇のなさりようを心にとどめ、国民を思い、国民のために祈るとともに、両陛下がなさっておられるように、国民に常に寄り添い、人々と共に喜び、あるいは共に悲しみながら、象徴としての務めを果たしてまいりたいと思います。また、以前も述べたとおり、私が長年携わってきました「水」問題についても、そのことを切り口に、豊かさや防災など、国民生活の安定と発展について考えを巡らせることもできると思います。日本の変化に富む豊かな国土は、同時に、自然災害、例えば台風や豪雨、津波などの影響を受けやすいことから、「水」問題への取組で得られた知見も、これからの務めの中で、国民生活の安定と発展を願い、また、防災・減災の重要性を考えていく上で、大切にいかしていきたいと思います。
皇室の将来像についての御質問については、男性皇族の割合が減り、高齢化が進んでいること、また、女性皇族は結婚により皇籍を離脱しなければならないということは、将来の皇室の在り方とも関係する問題です。ただ、制度に関わる事項については、私からこの場で言及することは控えたいと思います。
皇室の在り方に関しては、国民と心を共にし、苦楽を共にする皇室、ということが基本であり、これは時代を超えて受け継がれてきているものだと思います。過去の天皇が歩んでこられた道と、天皇は日本国及び日本国民統合の象徴であるとの日本国憲法の規定に思いを致し、国民と苦楽を共にしながら、国民の幸せを願い、象徴とはどうあるべきか、その望ましい在り方を求め続けることが大切であるとの考えは、今も変わっておりません。
同時に、その時代時代で新しい風が吹くように、皇室の在り方もその時代時代によって変わってくるものと思います。私も、過去から様々なことを学び、古くからの伝統をしっかりと引き継いでいくとともに、それぞれの時代に応じて求められる皇室の在り方を追い求めていきたいと思います。