【解説】今年の夏「47年ぶり」現象発生? 「地球の気温が未知の領域に」住む地域の“リスク”知り備えを…
台風2号が近づいていますが、今年の夏は47年ぶりの現象が起きる可能性があります。
●台風2号の影響は
●47年ぶりの現象
●ハザードマップが文字に
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
30日時点、台風2号は強い勢力で沖縄の南をゆっくりと北上しています。
宮古島や石垣島など先島諸島が強風域に入っていて、3日後には沖縄本島付近に進むおそれがあります。その後、勢力は弱まるとみられていますが、最新の情報を確認し早めの備えが必要です。
一方で気になる梅雨入りについて、関東甲信では早くて来月2日になる可能性もありそうです。平年よりも5日早い梅雨入りとなるかもしれません。
気象庁は、今年の夏までにエルニーニョ現象が発生する確率が高いとしています。実は今年は冬まで「ラニーニャ現象」が起きていました。冬にラニーニャ現象、夏はエルニーニョ現象となれば、47年ぶりの現象となります。
エルニーニョ現象とは、南米沖の太平洋の海面水温が平年よりも高くなる現象です。この影響により、世界各地では干ばつや洪水などの異常気象が起きやすくなります。
南米沖から遠く離れた日本の天気に、どのような形で影響を及ぼすのでしょうか。
海面水温が高くなることで、豪雨をもたらす積乱雲が発生しやすくなると言われています。南米沖の海域の海水温の上昇は大気の流れを動かす力があり、日本の夏を左右する太平洋高気圧を弱める効果があるのです。これにより、「梅雨が長引く」「冷夏」「暖冬」になりやすいとされています。
この冷夏によって1993年から94年にかけて「平成の米騒動」が起きました。30代半ば以上の方なら記憶にあるかもしれません。当時、ある作業現場に掲げられた横断幕には、「米一粒を大切に」と書かれていました。この米騒動にも、エルニーニョ現象が影響したとも言われているのです。
当時の細川護熙首相は「お米の輸入に道をひらくことはこの上なく苦しくつらく、まさに断腸の思いの決断であったわけであります」と述べていました。
日照不足などが原因で深刻な米不足となり、米を限定販売する小売店に行列ができるといった光景も見られました。価格も高騰し、政府が外国産の米の緊急輸入に踏み切ったことから学校給食をタイ米に切り替える動きもありました。
エルニーニョ現象が発生しても、涼しくなる可能性があるとは言い切れません。
今年は2月まで、ラニーニャ現象が起きていました。エルニーニョ現象とは逆で、夏は暑く冬は厳しい寒さになる傾向があります。冬にラニーニャ現象が終わり、直後の夏にエルニーニョ現象が起きた場合、47年ぶりとなります。ラニーニャ現象の影響が残っているためエルニーニョ現象が起きても、この夏に日本は気温が下がらず暑い夏になる可能性があるのです。
冷夏にならない理由には、温暖化の影響もあるそうです。
世界気象機関は17日、今年から5年間のうち少なくとも1年の平均気温が観測史上最高となる可能性が98%と発表しました。そして、「地球の気温が未知の領域に入る」と警告しています。
温暖化によって、日本では気温以外の影響もあります。気象庁は特に、短時間に降る猛烈な雨が増えているため、急な浸水や小さな川の氾濫に警戒してほしいと呼びかけています。
命を守るためには、備えが必要です。国土地理院の「重ねるハザードマップ」はインターネット上で閲覧でき、自分が住んでいる地域のリスクを知っておくのに役立ちます。
洪水、土砂災害、高潮などのリスクがどの地域で・どれくらいあるのかチェックできるもので、30日からは文字でもリスクが分かるようになりました。
「新多摩川橋」と入力すると、「河川からあふれた水の流れにより、木造住宅などが倒壊する危険性のある場所です」などの具体的な説明が表示されます。
この文字表示により、ハザードマップを使いこなすのが難しい人にも危険を理解してもらうのが狙いです。自分や家族が住んでいる地域について調べることをおすすめします。
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地球温暖化は、私たちの生活にすでに多大な影響を及ぼしています。「気候変動は未知の領域に入った」と言われるだけに、気象庁でも予測が難しくなっているのが実情です。だからこそ、ハザードマップなどで自分のまわりにあるリスクを把握して、危険が近づいたらどのように対応すればよいのかシミュレーションしておくことが大切です。
(2023年5月30日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)