【NNNドキュメント】夫を亡くし… 能登半島地震と豪雨被害 被災者の10か月 NNNセレクション
ここで夫が亡くなったのは、10か月前。
「水害がくるまでは、(供養を)もうちょっと、もうちょっとって延ばしていたけれど。この家を見たらもう、形が無くなっていたから、早々にした方がいいと思って」
能登半島を襲った、元日の地震。そして、9月の豪雨。
人々は、口にしました。
「神様も仏様もない・・・」
石川県輪島市の中心部から、約10キロの山里にある三井町。避難所となった三井公民館には、約100人が身を寄せていました。
「おかえりなさい」
中学生の山下香音さん、14歳。兄と姉は成人して県外で暮らし、母・真由美さんと避難所暮らしです。
地震で崩れた裏山が家を押し潰し、香音さんの父・正博さんが、下敷きになって亡くなりました。51歳でした。
2人は真由美さんの実家にいて、難を逃れました。
真由美さん
「土砂の下になってから6日目やわ。やっぱり、そこにおったかと思って。もう二度と経験したくない」
「お父さんも優しい、カワイイ感じのお父さんやったがいね」
避難所に暮らしてもうすぐ半年。
真由美さん
「ほんとは、6月がきたら26年やったね」
香音さん
「何が?」
真由美さん
「結婚記念日。26回目やった」
香音さん
「おおー」
真由美さん
「私の高校の時からつき合っとったから、ずーっと、一緒にいる」
避難所の責任者、小山栄さん(74)。
小山さん
「仮設(住宅)当たったってか?」
真由美さん
「当たった。」
小山さん
「良かったな」
真由美さん
「ありがとうございます!あっち、木造の方。2Kの方当たって」
小山さんは、山下さん夫妻の仲人でした。
真由美さん
「ちょっと余裕あるかな」
小山さん
「おお、そりゃ良かった」
真由美さん
「それまでお願いします」
職場のクリーニング店に復帰した真由美さん。夫の捜索に立ち合ってくれたのは、社長の春木さんでした。
春木さん
「潰れてしまった家の、こたつがあるから。ここにいつもいるから、ここにいるやろ。そこに向かってしゃがんで、隙間から『1人にせんといて』って泣いて叫ぶ。それ見たときに、凄く切なくなって・・・」
真由美さんと香音さんは、仮設住宅へ。また、親子での生活が始まります。
真由美さん
「いいことやね。周りに知ってる人いっぱいいるってね」
小山さん
「悪い人生だけじゃないわ、いいこともある。がんばりや」
真由美さん
「うん、ありがとうございます」
復興の兆しが、やっと見え始めました。潰れた家から持ち出せた家族写真は数枚だけ。
真由美さん
「ほんとに、人に恵まれとる。小山さん、さまさま」
その矢先の9月下旬、能登半島の上空に 線状降水帯が発生しました。三井公民館に住民たちが避難してきました。
住民
「恐ろしかったわね。水がだんだんと(上がってくる)」
住民
「いま見てきたけど、こんなひどいことになるとは、ちょっと思わなかった」
住民
「やっぱり、神様も仏様もおらんのお」
この豪雨で15人が亡くなり、住宅の被害は 2168棟にのぼりました。
崩れた山下さんの家。
真由美さん
「水害がくるまでは(供養を)もうちょっと、もうちょっとって延ばしていたけれど。この家を見たら、もう形が無くなっていたから、早々にした方がいいなと思って。これで安心かな…。これで成仏できるかな…」
山下さん親子は、家族が眠るこの土地で生きていくことを決めました。
能登の人たちの先の見えない不安は続いています。
2024年11月3日放送 NNNドキュメント’24『「神も仏も…」~能登半島地震と豪雨 被災者の10か月~』をダイジェスト版にしました。