盛り上がる「パラスポーツマンガ」の魅力
知っておきたいデータや情報をひもとく「input」。今回は「パラスポーツマンガ」。小学館マーケティング局の出村大進氏に聞いた。
――私はマンガが大好きで、暇さえあればいつも読ませていただいているんですけれども、今日は、障害者スポーツ(パラスポーツ)の魅力を描いた作品を2つご紹介します。
まずは「マーダーボール」。この作品では、車いすラグビーが取り上げられています。「マーダーボール」とは、日本語に訳すと「殺人球技」というほど激しいスポーツです。交通事故で足が不自由になり、車いす生活となった主人公の女子高生が、日常では、周りに「ぶつからない」ようにと気にして生活している中、車いすラグビーに出会い、思いっきり「ぶつかる」ことで、開放感を味わい、その魅力に目覚めていくというお話です。私も読ませてもらってかなり激しい描写もたくさんあって、迫力満点です。
そして、もう一つは「ましろ日」。こちらは、ブラインドマラソンを扱っている作品です。舞台は広島。不慮の事故で失明してしまった男性が、マラソンを通じ自らの運命を改めて切り開いていくというお話なのですが、登場人物が、人間くさくて魅力的なんです。舞台は広島で私が感銘を受けたのは、広島に原爆が落ちたことではなく、その後に周りの町がどう復興していたか、周りの人々がどう手を取り合って復興に努めていったかを見るべきなんだよという発言があって、その考え方がすてきだな、と思いました。
またこのブラインドマラソンという競技も健常者と障害者が2人ひと組で手を取り合って行うスポーツなんですが、あくまで対等な人間関係で心と心を合わせて進めていくというスポーツ。このスポーツ自体の魅力も感じています。
ところで出村さんは出版社でコミックスも扱っていらっしゃったんですけれども、このパラスポーツを扱った漫画については、どのようにご覧になっていますか。
そうですね、最近とても盛り上がってきているなと思って見てました。2020年のオリパラに向けてスポーツ漫画、とても盛り上がってますし、例えばボルダリングの「壁ドン!」っていう漫画がありますし、また、100メートルのパラアスリートが主人公の「新しい足で駆け抜けろ。」という作品もとても盛り上がっておりますので、今後さらに話題が広がったかなと思ってます。
さらに書店さんでもスポーツコーナーが大きくできたりしておりますのでまずは漫画でオリパラのことを知るってことは、とても素晴らしいことかなと思ってます。
―――そうですよね。マンガが入口になると入りやすいですよ。
そうですね。例えば小説とかも漫画化をすると年齢層がぐっと下がったり、年齢層の幅も一気にひろがりますので、そういった意味で興味の幅を広げてくれることを、漫画に期待したいことかと思います。
―――パラリンピックのスポーツについてもそうですし、もちろんオリンピックのスポーツや、ちょっと難しいし政治のネタも漫画であったりするものも楽しく勉強できますね。
そうですね。とっかかりとしては、とても良いメディアかなと思ってます。
■出村大進氏プロフィル
小学館に入社後、雑誌、マンガなどの編集を経て、2010年マーケティング局のコミック担当に。徹底したマーケティング戦略に基づき、ヒット作に次々と携わっている。その一方でマスコミやメディア、出版に携わる人々を中心とした勉強会「一冊会」を主宰。毎月、議論を交わしている。この勉強会では多くのアイディアが集まり、新しいプロジェクトが次々と生まれている。本の力、メディアの力で世界を幸せにしたいという。
【the SOCIAL inputより】