住宅地に“緑の壁” 住民が撤去要請も…
奈良県ののどかな住宅地に現れた、緑色の壁のようなものが住民を悩ませている。住民たちは行政に撤去を要請しているが、撤去できない理由があるという。
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弥生時代の遺跡などで有名な奈良県田原本町。田んぼが続くのどかな道で発見したのが、住宅街に現れた「緑の壁」。
一見、オシャレな街で見かける「緑のカーテン」のようにも見える。
every.「草がうっそうと茂っていて、近づくと量の多さに圧倒されますね。近づいて初めてわかるんですが、何か建設する時の“足場”ですかね。中に建物はなくて、足場のようなものだけが残っている状態です」
「緑の壁」の正体は、高さ10メートルほどの建築用の足場に、雑草やツタが絡みついたもの。
また、上から見ると、内部に建物はなく、空洞になっているのがわかる。
足場のさびや、絡みついた草のようすから、かなりの年数が経過しているように見える。誰がなんのために建てたのだろうか?
壁に隣接した住宅の住民によると、“意外な話”があった。
「緑の壁」の隣接住人「建てかけの家があって、屋根瓦も載ってて」
住民によると、16年以上前、この足場の中には、家が建てられようとしていたという。しかし、この家が途中で建築基準法に抵触していることがわかったため、工事が中止になった。家は取り壊されたが、なぜか足場だけはそのまま放置され、雑草に覆われたという。
また、この「緑の壁」による問題も起きている。
「緑の壁」の隣接住人「風がきつい日。台風の時もそうだけど、その時は揺れるので怖いです」
足場を横から見てみると、住民宅の塀にもたれかかっているようにも見える。倒壊の危険を感じ、安心して寝られないという。
さらに、別の問題も起きている。
「緑の壁」の隣接住人「水がたまっててボウフラがわくのかな」
内部に水たまりがあり、夏、大量の蚊が発生するという。
一方、この土地の所有者は、地元の会社経営者だった。
「緑の壁」の土地の所有者「君らが取れっていうねん。邪魔やったら。なんで僕がそこまでやらなあかんの。(今後、家を)建てると思うし」
「再び家を建てる可能性があるため、自ら撤去はしない」という。
そこで住民らは先月、町役場に「緑の壁」撤去の要望書を提出。しかし、行政が出した答えは…
田原本町・総務部防災課 松井和樹課長「現状すぐに不安を解消させるような方法はないと。資産価値がそこ(足場)にはあるのかなと」
町役場によると、周辺環境などに悪影響を及ぼす危険性がある空き家は、「特定空き家」として、自治体による立ち入り調査が許可されているが、足場だけでは特定空き家に該当せず、調査ができないという。
できることといえば…
田原本町・総務部防災課 松井和樹課長「粘り強く足場の所有者に語りかけをしていきたい」
行政も介入できないという「緑の壁」。住民は今も不安を抱えている。