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ふるさと納税 あるべき姿とは

2020年1月9日 15:06
ふるさと納税 あるべき姿とは

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「ふるさと納税で楽器を寄付」。地方公務員と中央官僚をつなぐ「よんなな会」を主宰している神奈川県職員の脇雅昭氏に話を聞いた。

「ふるさと納税」の返礼品の見直しなどが行われるなか、いま「楽器寄付ふるさと納税」が注目されています。これは、使われなくなった楽器を、自治体を通じて、学校や音楽団体などに寄付し、その査定価格が税金控除される新しい仕組みです。

2018年10月からスタートして現在は、6つの自治体が参加。これまでに約200点、査定価格にして約500万円分が寄付されたということです。

この話題について脇さんのご意見をうかがいます。


――まずはフリップをお願いします。

「円から縁へ」と書きました。

ふるさと納税の話になると、どうしても「円」、いくらふるさと納税額がなされたかというランキングにみんな注目しがちなんですけれども、本当はいくら寄付が集まったかよりもこちらの「縁」、いただいた寄付をどう活用して、その地元のために盛り上げて使ったか、新しい縁を作っていったか、そういったこともすごく大事だなと思っています。やっぱり「円」だとランキングを作りやすいので、世の中に出てきやすいですが、もっとこっちの「縁」がある事例を世の中に出していきたいです。

その中でも、この楽器のふるさと納税というのはすごく価値があると思っていて、私自身も実は小学校のときにトランペットを吹いていたんですが、そのトランペットってやっぱり大事に使っていたので、その後吹かなくなっても、やっぱり捨てられないんですよね。で、家の中にずっと保管してある。でも、このふるさと納税に楽器が活用できますよとなった瞬間に、子供たちが喜んで大事に使ってくれるんだったらと思うと寄付したくなりますよね。

なので、寄付の文化の醸成というふるさと納税の元々の趣旨というところにもすごく合っています。これは三重県のいなべ市がやり始めたんですけども、この学校が深刻な楽器不足になってしまった。それを普通だと税金で賄おうとするんですけど、税金は限られているのでなかなか楽器にだけお金を使うというのが難しい中で、寄付だったら全国から集められるということでやったみたいですね。「寄付文化の醸成」と「その地域が抱える課題」というのをうまく結びつけている制度で、こういった活用の事例がもっと世の中に出ていったらいいなと思っています。

――また今年は、企業版ふるさと納税も始まるということなんですが。

今の事例は、個人版のふるさと納税ですが、企業版のふるさと納税というのがパワーアップするんですね。個人版のふるさと納税は5000億円ぐらいの市場ができあがっているんですが、実はまだまだ企業版は使われていません。これまでは、6割税額控除されていたのが、今後、9割税額控除されるようになって、より使いやすくなってくる。とはいえ1割は企業が負担しなくてはいけないので、その1割を企業が負担する理由というのがもっと求められるようになる。そうするとより「円から縁」になっていく。大事なのはそっち側(縁)に変わっていくのではないかと思っています。

――つながりを感じていける制度に、私たちでしていかないといけないですね

皆さんも、どのように自分が寄付したものが使われてるのかをぜひチェックしていただきたいと思います。

■脇雅昭氏プロフィル
全国の地方自治体の職員と国家公務員が交流する「よんなな会」主宰・神奈川県職員。総務省に入省後、熊本県と神奈川県に出向した脇氏。そこで地方と中央のつながりが必要と感じ、「公務員の志や能力が1%上がったら社会がもっとよくなる」という思いのもと「よんなな会」をスタート。年に数回行われる会合では、全都道府県・全省庁から500人を超える人が集結。現在は、民間もふくめ5000人を超えるネットワークに成長した。人をつなぐことで公務員の新たな姿を作り出す。

【the SOCIAL opinionsより】