「アルテミス計画が本格スタート…月探査新時代、日本はどう挑むのか」
アルテミス計画が本格始動
アメリカは16日、月探査用の大型ロケットの打ち上げを成功させました。これは、アポロ計画以来、およそ半世紀ぶりとなる有人月探査を目指す「アルテミス計画」の第1弾です。
ロケットの上部には月上空に向かう宇宙船が搭載されています。今回は宇宙船の安全性などを確かめるのが大きな目的なので、宇宙飛行士は乗り込んでいません。
その代わりに、「スヌーピー」と「ひつじのショーン」のぬいぐるみたちが乗り込みました。
アルテミス計画というのは、人が月や火星を探査するための様々な計画のことを指します。アメリカが主導し、日本やカナダ、ヨーロッパも参加することになっています。2025年に、宇宙飛行士を月の南極に着陸させることを目指しています。
月の上空や、月面に基地を建設し、将来的には月を拠点にして火星の探査に繰り出そうという構想もあります。
ターゲットは月の「南極」
アルテミス計画で活動拠点にする月の南極は、太陽の光がほとんど当たらない場所が多くあり、水が蒸発せずに地下に大量にあると言われています。
月にある水を利用していくこともアルテミス計画の重要な目的の一つです。
水は、飲用などの生活用に使えるほかにも、燃料を作り出す材料にもなります。水からは水素と酸素を取り出すことができるためです。月の水で燃料をつくれば、月で宇宙船の燃料を補給し、地球に帰ってくることができるようになるかもしれません。いわば、月に宇宙船の「ガソリンスタンド」ができるようなイメージです。
JAXAでは実際に、月面に燃料工場をつくる検討もしているほか、水素で走る月面探査車の開発も進めています。
小型着陸機「オモテナシ」
アルテミス計画第1弾のミッションの中には、日本の計画も含まれています。中でも特に注目されているのが、日本の月面着陸機「オモテナシ」です。
重さは12キロほど。世界最小の月面着陸機とも言われています。この小ささですが、自力で月に向かい、成功すれば、日本としては初の月面着陸となります。
オモテナシは宇宙空間に打ち上げられて飛行を始めたところまでは順調でしたが、途中、トラブルが発生したために 太陽電池の面が太陽の方を向かず、充電ができていない状況ということです。
JAXAは現在、地上から復旧作業を試みているそうです。
着陸技術を磨きたい日本
かつて、日本は2回、月の上空を周回する衛星を打ち上げました。1990年に打ち上げた「ひてん」と、2007年の「かぐや」です。しかし、日本はまだ月に着陸したことがありません。
月面の観測が進み、水や金属などの資源が月には豊富に含まれていることが徐々に分かってきています。このため、世界各国が月面探査に本格的に乗り出そうとしている中、日本も「着陸」で後れを取っていてはいけません。
そこで、「オモテナシ」以降も、日本は着陸技術を磨いていく考えです
来年の春には、オモテナシよりも少し大きな着陸機を打ち上げて、ゆっくりと、狙った場所にピンポイントで降りる探査機「SLIM」が打ち上げられる予定です。SLIMは、これまでにまだどの国も成功したことのない、誤差100メートル以内での高精度な着陸を目指しています。
2020年代中に、日本は宇宙飛行士を月面に着陸させることを目指しているほか、将来的には、月面にさらに大きな着陸船を送り、基地で宇宙飛行士が食べる食糧などの物資を補給する構想も検討されています。
民間企業も月に続々挑戦
これから先、民間企業の挑戦も続々と予定されています。
今月28日には、宇宙ベンチャーの「ispace」社が開発した月着陸船が、アメリカのロケットで打ち上げられます。来年4月末、月に到着する予定です。
この着陸船には、おもちゃの技術を応用した月探査用のロボットも搭載されています。
おもちゃメーカーの「タカラトミー」などが開発したもので、丸い形から変形し、砂をかきわけて月面の上を進み、月面の状態を写真に撮って地球に送ることになっています。
この「変形」をするところに、おもちゃの変形ロボットの技術が使われているそうです。
これからは、民間企業の技術も月で活躍する姿も、みられるようになりそうです。
宇宙大航海時代
かつて、コロンブスが「大航海」に出たのと同じような冒険が、いま、宇宙でも始まろうとしています。一昔前は「SF映画の世界」だったものが、今は、技術の進歩で実際にできる時代になってきています。ぜひ今後の宇宙探査に注目して、みんなで盛り上がっていきたいですよね。