【解説】「新型コロナ」と“熱中症”対策
例年、夏にかけて増える熱中症ですが、今年は、新型コロナウイルス対策と熱中症対策で「誰も経験したことのない夏」に。
いまからできる、注意点と具体的な対策は?
■この先、暑い日が続く見通し
11日、東京・青梅市で30℃となり、今年初めての夏日となりました。
気象庁によると、4月は全国的に平年より気温の低い日が続き、肌寒く感じられる日が多かったということです。しかし、5月になると一転して、気温が高い日が続いています。
気象庁は、4月が寒かったことに加えて、この時期は、まだ体が暑さに慣れていないため、熱中症になる危険性が高いと呼びかけています。
これは気象庁が発表した、5月9日からの1か月予報。
赤やオレンジは、平年より気温が高いと予想されるところですが、全国的に広がっていて、この先も5月は暑い日が続くことが予想されます。
■新型コロナと熱中症
この暑さに加えて、今年は気になることが。
日本体育大学大学院教授で救急医学が専門の横田裕行先生によると、
「新型コロナの流行と熱中症の季節が同時に訪れる。これは世界で誰も経験したことのない事態」
として、この状況を憂えています。
例えば、今年は寒い季節、花粉症の季節が過ぎても、マスクが外せない状況が続いています。冬はマスクをしていると、暖かくていいですが、夏場は熱中症の観点から問題がでてきます。
横田先生によると『吐く息の温度は36℃に近く、湿度は100%と高い』といいます。熱中症の危険因子は「高温・多湿」なので、マスクの狭い環境の中で、熱中症が起こりやすい状態が起きてしまいます。
■“巣ごもり”で熱中症増加の危険
さらに、新型コロナに関連して気になることが。
例年5月は、熱中症で救急搬送される人が増え始める時期です。搬送される年齢層で一番多いのは、やはり65歳以上の高齢者です。
「発生した場所」に注目すると、3位が『駅やコンサート会場といった屋外』。2位は『道路』。最も多いのは『住居』です。家の中でも、換気をしながらエアコンを上手に使うなど、注意が必要です。
その一方で、いま外出自粛で“巣ごもり”が続き、なるべく家にいることが増えています。
日本体育大学大学院 救急医学 横田裕行教授「ずっと家の中にいると、体が暑さに慣れていない。急に暑くなったときに、熱中症になりやすいため、買い物などで外に出ると、熱中症になるリスクが高まる。健康な人でも注意が必要で、今年はなおさら注意してほしい」
■“新型コロナ”対策と“熱中症”対策
横田先生は『マスクに関しては、本当にずっとしないといけないか、考えるべき』といいます。そこで『1人で部屋にいるときはしなくていい』『外に出ても人がいない、しゃべらない時は短時間でもマスクを外す』などして、涼しくするよう呼び掛けています。
また、以下の予防策を提案しています。
1)首回りなどがあいた、放熱しやすい服を着る
2)冷たいペットボトルを、体の表面の太い血管が通っている場所に当てる
→首の周り、わきの下、太ももの付け根
3)こまめに水分、塩分補給
→塩あめ、スポーツドリンク、経口補水液
さらに、横田先生がとても心配しているが、医療の問題です。
例えば、高熱の人が救急に運ばれてきたとき、その人が「新型コロナ感染」か「熱中症」か、その場で分かりません。検査のスピードを上げようとしていますが、夏場に間に合うかも分かりません。
「新型コロナ感染」でないと分かるまで、熱があったら個室に隔離して治療する必要があります。そうなるとベッドが埋まり、医療崩壊の引き金にもなるといいます。
横田先生によると『熱中症は100%予防できる』といいます。新型コロナは目に見えず、100%の予防は難しいですが、熱中症は個人、周りの人が心がけて注意すれば防げるとのこと。
いまの時期、熱中症にならないようにすることも、医療従事者を救うことにつながります。
2020年5月12日放送 news every.『ナゼナニっ?』より